表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき魔術師の一生  作者: きゅえる
【3章】
84/106

【87】過去の邂逅(2)

「爆発?」

「ええ、そうです」


 ヴァスマイヤ村長の顔に、不安げな気配がよぎる。


「モニカ様の事情はわかっております。私たちは決して、貴女様を見捨てません。同胞の血にかけて」

「ええ、ありがとうございます」


 村人たちの想いはありがたい。が、隠居のような生活をするのは好きではない。だから実際に、手駒をあちこちに忍ばせ、復帰を狙っている。

 しかし、その事が村長にバレたら、良い顔はされないはずだ。村長は、このままモニカがここにいる事を願っている節がある。

 モニカは考えや感情を見せないよう、薄く笑みを浮かべ、話の続きを聞いた。


「ですが、今回の爆発は恐らく我らに手に負えないのです。ですから、貴女様のお力をお借りしたく思います」


 そう言われては、拒絶できるわけもなかった。それに、ヴァスマイヤ村の人々には、食べ物やマキなどの生活必需品をもらっている。礼を返すにはちょうどいい話だ。


「わかりました。そ……」


 モニカはハタと止まる。

 部下は全員出払っているし、残る一人の侍女も、休暇を与えたばかりだ。人手がない。つまり、モニカ一人で立ち向かわなければならない。

 困った。


「どうかしましたか?」

「いえ、な、何でもないです。……とにかく請負いましょう」


 モニカは、薄笑いを顔に貼り付けて、なんとか誤魔化した。背中に冷や汗が走るのを感じた。

 何か、言い訳を考えなければなるまい。


「ありがとうございます」

「いえ、助けていただいているのですから当然のことです」

「そう言っていただけると助かります」


 ふと、村長の背後を見る。

 雪が本格的に降り始めていた。辺りの大地に薄っすらと雪が覆いかぶさろうとしている。

 玄関から冷気が漂ってきている。モニカは少し身震いした。


「ひとまず、中に入ってください。雪が本格的に降ってきましたよ」


 村長は背後をちらと見てから、言った。


「ああ、申し訳ありません。気がつきませんで。しかし、連れの者を待たせているので、少々お待ちいただけますか?」

「ええ、お連れの者も、屋敷の中にどうぞ」

「では、失礼して」


【3】


 モニカは、村長が一度玄関から出て行った様子を確認した。それから急いで客間に行き、部屋の中央にある暖炉に火をつけ、受け入れる準備を整えた。そして、すぐに玄関を戻り、何人かの供を連れた村長を招き入れた。

 村長達は、暖炉を挟む形でモニカと相対する。部屋は〈火の精霊〉の頑張りによって、急速に温まりつつあった。

 モニカは早速、質問を投げかける。


「それでその爆発が、どうして手に負えないと思ったのですか?」


 村長と連れの男が一瞬、目をかわした。そして、村長が口を開く。


「爆発をちょうど目撃したのは、彼です。少々、失礼なところをありますが、彼の話を聞いてやっていただけますか?」


 モニカは、軽く頷き、男に視線を移した。彼がフードを脱ぐと、頭がモジャモジャだった。酷い癖毛で、若干赤みがかかっている。

 やや神経質そうな顔つきの若者だ。


「お、おいらは、山に木を切りに行こうと、お、斧を担いで、でかけただよ。少しばかり、マキが足りないって、お隣さんに頼まれてな。んで、いつもの山に向かって、歩いていたんだども。も、もう少しで山の中腹に、着くってところで。ふと、空から、ピューって、何かが降ってくるのが見えただよ。は、初めは、鳥かな、と、と思っただども、どうも、様子が変だと。そしたらば、落ちたところでドカーンと大きな音が、響いてきて。おいら、びっくりしちまっただよ。そんで、おいらは、この村の一員で。魔法の有無は見えるんだけども。その爆発に、色んな色の魔法が確かに見えただよ。その後も何度か、爆発が起きたんで、間違いない、は、はずだよ」


 モニカは辛抱強く、最後まで話を聞いた。

 話をまとめると、山に何かが降ってきて、その着地地点で魔法による爆発が断続的に起きたという事らしい。敵か味方かは分からないが、確かに随分と危険な存在に感じる。

 あれこれと考えていると、横から、村長が話を補足してきた。


「その爆発は、村の方でも聞こえました。話を聞いた限りでは、もし敵ならば、我々には叶わないと判断しました」

「なるほど」


 モニカは、納得した。この屋敷まで聞こえなかったのは、村の郊外だからだろうか。


「そうですね、わかりました。私でないと対応できないかもしれません。私が直接調査に行きましょう」


 村長が驚くような素振りを見せた。


「え、モニカ様が?」

「ええ。話を聞く限り、私の部下では手に負えないような気がします。いえ、間違いなく手に負えないでしょう! 私が先頭に立つ必要があると感じました! 部下に任せてられません!」


 村長はモニカの勢いに押され、肩が震えはじめた。


「そ、そんなに……危険なんですか」

「ええ、とても!」


 えーい、こうなりゃヤケだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ