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名もなき魔術師の一生  作者: きゅえる
【1章】
18/106

【21】23歳モニカ、二度目の昇級試験を受ける(1)

【1】


 季節は〈双子の月(ジェミニ)〉。その花開く春の彩りから、夏の青々とした木々に移り変わる頃。

 いつも見慣れた冒険者組合(ベンチャーズギルド)東支部。そして、顔馴染みの組合業務員(ギルドスタッフ)。モニカ達は組合(ギルド)から呼び出しを受けていた。


 顔を合わせるなり、組合業務員(ギルドスタッフ)は喜びの顔を浮かべながら、モニカ達に語りかける。

「よう、君たちが来てからもうすぐ4年だ。若者の成長具合を見るのはいつだって楽しいもんだな。」

「おっちゃん……もう引退するの?」

 壁に寄って腕を組んでいたエリーはニヤニヤしながら、軽い冗談を言い放った。

「バカ言え。エリー、からかうな。俺だってまだまだ現役だ。」

「にししししし。」

 組合業務員(ギルドスタッフ)が抗議している様子を見ながら、エリーは笑った。

「まあ、冗談はここまでにしてだな。モニカ。……ついに組合(ギルド)から昇級試験の知らせが来た。」

 途端に全員の表情が引き締まった。(ようや)くこの日が来たのだ。

「モニカお姉様。」

「コルちゃん。」

 モニカとコルは、お互いに視線を交えて頷く。

 コルの夢は、住民権を得てこの街で〈治癒師(ヒーラー)〉になる事。この試験に合格すれば住民権を得る。夢へ大きい一歩を踏み出せるのだ。


「これからランクDへの昇級試験の説明を行う。傾注(けいちゅう)せよ。」

 組合業務員(ギルドスタッフ)は真剣な面持ちでその責務を果たす。モニカ達一同をゆっくり見渡した。

「今回は銀行からの依頼をもって試験とする。内容は、ランクCの護衛3人、ランクEの受験者10名の計13名で王都への現金輸送車を護衛。」

 エリーの口から感嘆の声が漏れる。モニカも驚いた。その人数もさることながら、試験の可否に大金がかかっているのだ。

「なお、進路の途中、盗賊が多発する地帯を通る。これを討伐、場合によっては捕縛しろ。」

 動揺とどよめきが起こる。これは初めての対人戦。

「その盗賊とやらが、出てこない可能性はー?」

 エリーがいつものノンビリした口調で質問した。確かに、盗賊が出なければこれほど楽な試験はあるまい。

「残念な事に、間違いなく出現すると思っていい。」

 エリーはたいして驚いた風も見せずに、ただ「そう」とだけ言って沈黙した。

「そう簡単な話でもなさそうね……。」

「お姉様……。」

 『間違いなく出現する』という確信的な表現から、わざと情報を漏らすか何かして確実に襲撃を受けるように挑発をしているのだろう。つまりこれは護衛ではない。現金輸送車を餌にした盗賊討伐だ。

 いやはやこれは手厳しい。街に受け入れられるには、人を殺せというのか。

「集合時刻は明後日の早朝第6刻。場所は銀行本店前だ。各々充分に準備を行った上での場に望め。」

 モニカ達は重苦しい空気からにげるかのように、宿に戻った。


【2】


 宿。

 もはや寝る時間となったベッドの上で、モニカ、エリー、コルが頭を向き合わせて雑談をしていた。


「試験合格したらまず、まず家が欲しいなー。」

「うん、モニカっちの調合はあまりの異臭に苦情が出るもんねー。」

「……暫くエリーだけ薬なしで頑張ってね。」

 モニカの表情は薄っすら笑っていたが、言っている声色は本気だった。

「ちょまっ、そんなに怒らなくていいじゃん。」

「エリーは今までの信用と実績の積み重ねがあるからね。……もちろん褒めてないよ?」

「ひっでえー。」

 クスクスと笑うばかりだったコル。しかし、やがてはたと感慨深そうに呟いた。

「私も早くお店を開きたいです……。」

「……そうだ、一階をコルちゃんの治癒施設に。二階で私が治療薬を調合して、お客さんを両方の面から治療するの。どうかしら。」

「モニカお姉様、素敵!」

「そうなったら、冒険者として危ない橋を渡る必要なくなって引退できるわ。穏やかに暮らせるわよ。……きっと。」

「ええ。お姉様。……きっと。」

 将来設計に目を輝かせていた二人の横でエリーが不満そうに口を尖らせた。

「あたしはー?」

「知らないわよ。いつものようにグータラしてヒモ生活でもしてたら?」

「それはそれで……じゃなくて、ひでーよ。モニカっち。」

「一瞬、同意しかけておいて、ひでーとかはないんじゃない?」

 エリーが頭の後ろに腕を組んで、ブーブーといじけている。これで24歳だというのだから信じられない。

「最近、モニカっちが棘々しいの。コルっち、助けてー!」

 そう言いながら、エリーはベッドの縁に座っていたコルを押し倒した。

 いつもの事なので、モニカもコルも無反応だ。コルはエリーを見上げる形で擁護した。

「……エリーお姉様は道場なんて開いてみてはいかがでしょう。麗しい乙女が道場開いていたら殿方たちの大人気になりますよ?」

 コルは今年で17歳。出会った頃の幼女っぽさは鳴りを潜め、美しい乙女へと育った。ただ、エリーのせいでガールズラブの世界に堕ちてしまっている。

 無反応なコルにバツが悪くなったのか、エリーはコルを起こして、元の位置に戻った。

「うーん。あたしはモニカっち、コルっちとずっと一緒にいたいなー。家に居させてよー。」

 エリーの何気ない言葉にモニカは不意打ちされた。何故か胸がドキドキしている。誤魔化す為に慌てて声を張り上げた。

「バッ、バッカじゃないのッ? 働きなさいよ。働き口見つけるまで、養ってあげるぐらいはできるわよ!」

「えー、あたしに戦闘以外で特技なんてないよー。無理ー。」

「くっ、何か考えときなさいよ。裁縫とか!」

「無理ー。」

 エリーは楽しそうに笑っていた。


【3】


 〈三日月の魔法光クレセントマジックライト〉の店。そこは〈魔法具(マジックアイテム)〉の売る店……だった。閉店中の看板が掛けられていた。

 その店主であるイルムヒルデ=デマンティウス、通称イル先生は今年で69歳。最近体調も良くなかったそうだ。連絡を受けてモニカ達が来るとベッドに横になっていた。


 モニカは眉を(ひそ)めてイル先生に質問した。

「イル先生、どうしたんですか。閉店の看板がかけられていましたが。」

 しかし、イル先生はその質問には直接答えず、いつもの微笑みでモニカ達を祝った。

「モニカちゃん達、まずは昇級試験の受験資格獲得おめでとう。」

「はい、有難うございます……。じゃなくて、先生どうされたんですか?」

「ほほ、いえね、調子を崩してしまったんですの。」

「大丈夫ですか……。そうだ、コル、治療を。」

 モニカに促されたコルは慌ててイル先生の手を取ってみる。

「無駄です!」

 コルが手を取るや否や、その手を振り払い、普段のイル先生に似合わない鋭い声で制止した。

「先生?」

 少し、違和感のある感覚を感じながらもモニカはイル先生に問いかけてみた。先ほどの気配はなんだったかと思う程に鳴りを潜めていた。


「これは寿命ですから、コルちゃんにできることはありませんよ。それより。」


 横になっていたイル先生がベッドから身体を起こしてモニカ達を見渡した。モニカが記憶していたイル先生より凄く痩せ細っていて、吹けば飛ぶ、枯れた柳のようだ。


「この店にある〈魔法具(マジックアイテム)〉は欲しい物があれば持っていってもらって構いません。効果がわからなければ私に聞きなさい。」


 モニカは開いた口が塞がらなくなるほど驚愕(きょうがく)した。商売の売り物を譲り渡すということは、店を完全に辞めるという事に他ならない。

「先生、それはダメです。」

 モニカは自分が何を言いたいのかさえわからずに、否定した。

「モニカちゃん。よく聞きなさい。」

 イル先生のよく響く声を聞き入れて、次の言葉を待った。

「時は流れるもの。人はやがて老い、死んでいくの。その摂理に逆らう者はやがて痛いしっぺ返しをもらうの。」

 その言葉を発した後、しばらくは何も喋らずに、じっとモニカ達を見つめた。初めはモニカを、次にコルを、最後にエリーに視線を合わせた。それからとても小さな独り言を呟いた。モニカには何と言っているのかは聞こえなかった。

「だからね、そろそろ私は夫のところに行きたいの。モニカちゃん、コルちゃん、エリーちゃんはそれぞれの道を生きなさい。」

 モニカは気づかない内に涙を流していた。

「はい……。」

「結局、約束の〈付与魔法(エンチャント)〉は基礎しか教えられなかったわね。それだけは心残りだけどごめんなさい。」

「はい……。」

「後、今日でココに来るのは最後。もう来てはいけません。」

「えっ。」

 モニカはイル先生がそんな事を言うなんて信じられなかった。地獄のような量の依頼(クエスト)を報告するたびにここに来ているのだ。自分の知っている場所が一つ消えるのは辛い。

「先生……それは嫌です。」

「モニカちゃん。今日は、お別れを言う為に来てもらったの。その後、私はどんな顔して貴女とお話すればいいのかしら。流石に恥ずかしくてそれだけで死んでしまいそうだわ。」

「……はい。」

 モニカの最後の「はい」は泣き笑いだった。


【4】


 〈三日月の魔法光クレセントマジックライト〉の店に置かれていた〈魔法具(マジックアイテム)〉は素晴らしいものばかりだった。しかし、イル先生が気になってしまい、手に取りながらも本当に取っていっていいのかどうか躊躇(ちゅうちょ)した。

 モニカは色々な物を物色しながらも、何物も手を付けずに先ほどからじっと黙っているコルが、気になって話しかけてみた。

「コルちゃん、先生どうだったの……?」

「モニカお姉様……。」

 コルの顔には恐怖の影が浮かんでいる。一体何があったのだろう。

「イル先生の中に居た〈生命の精霊(セフィロト)〉が怒ってました。」

「怒ってた?」

「はい、精霊が怒るということは、イル先生は自分自身で自分の生命活動の何かを否定し続けている、という事です。」

 モニカは唖然(あぜん)とした。つまり、自分で自分の命を縮めているのだ。

「え……。」

 訳がわからない。思わずモニカはコルに強く問いただしてしまった。

「コルちゃん、どういう意味?」

 コルはうなだれて、ただ首を横に振った。

「……私にもわかりません。」

 モニカは顔を上げた。上げた顔には決意が現れていた。

「私、先生に聞いてみる。」

 手に持っていた〈魔法具(マジックアイテム)〉を置いて、イル先生のベッドに向かった。

「あら、もう持っていくものは決まったのかしら?」

 飄々としたイル先生に内心イライラとしながらも、モニカは冷めた声で詰問(きつもん)した。

「先生、自分の命を否定するというのはどういう事ですか。」

 その質問に答えない。

「イルせん――」

 モニカが口を開こうとした時、イル先生はポツリと確認した。

「コルちゃんに聞いたのね。」

「……はい。」

 イル先生は溜め息をつく。一度目を瞑り、そして目を開けた。そして上半身を起こし、モニカの方に体を向ける。

「別に大したことじゃないのよ。人の体は変異するの。」

「変異?」

「〈新生物(ネオプラズム)〉という現象で、私の体の一部が別の物になって他の部分を食い破っていくの。それを抑えるために精霊さんには悪いことをしてもらってるだけよ。」

「では、どうにかならないんですか?」

「最初に言ったわ。どうにもならないって。」

「イル先生……。」

 モニカは、せめてイル先生の最後を忘れないようにこの光景を目に刻みつけた。


【5】


 早朝。

 夜のうちにできた夜露が街路樹を濡らしている。


 モニカ達は約束通り銀行前に集合した。

 エリーの寝坊助(ねぼすけ)も流石に今日は、鳴りを潜めている。そして全員が揃った。見知った顔も見知らぬ顔もいる。

 驚いた事に、今まで散々冒険者組合の施設でお世話になっている組合業務員(ギルドスタッフ)もいた。


 一人の男が前に出てきた。パリッとした貴族然とした服装をしている。

「皆さん、おはようございます。私は銀行の総支配人をさせていただいてますバルドゥル=フルスベルグです。」

 冒険者たちは誰も喋らずに黙って聞いている。そんな様子が当たり前だというように言葉を続けた。

「前もって連絡はさせて頂いてはおりますが、今回、皆さんには現金輸送車の護衛をしていただきます。行き先は王立銀行。輸送車が奪われると我が街に多大な被害を蒙ります。絶対に奪われてはなりません。」

 バルドゥルと名乗る銀行の総支配人の話が終った。間もなく現金輸送車が出発する。

 現金輸送車は鉄板で補強された籠馬車で、馬も軍馬のように重厚な鎧を着ている。護衛は馬で来たものは馬で、徒歩の者はさらに別の馬車に乗って出発した。

 やがて、一団は西の正門を抜け、街道に出た。

 門を出て間もなく、組合業務員(ギルドスタッフ)がここにいる理由が気になってモニカは話しかけてみた。

「ギルドスタッフさん、どうしてここに。」

「俺だってクラスCの人間だからさ。」

 そこにエリーがスルリと割り込んできた。

「おっちゃん、やっぱり引退を気にしてたんだなー。」

「気にしてねーよ! ただの偶然だ。」

 彼は振り返って、ムキになって反論した。エリーは新しい獲物を見つけたと言わんばかりにニヤニヤしている。絶好調だ。

 その様子を見ながらモニカは思う。最初にイル先生にあった時もそうだけど、どうしてエリーはこう年上の相手に敬意を払わないんだろうか。勘弁して欲しい。

 彼は言葉を続けた。

「どーしても、一人分の枠が足りないっていうからなー。俺らにお鉢が回ってきたんだよ。それで俺らの仲間でな、くじ引きして負けた。あーついてねえ。」

「そーかーそーかー。おっちゃん、頼りにしてるよ!」

 エリーが彼の背後に回ってバンバン叩く。


 だから止めろっての。


 モニカは冷たい視線でエリーを睨みつけたが、一向に気がついてくれないのでやがて諦めた。こんなエリーでも、やがて先生と言い直すようになったイル先生はひょっとして偉大な人だったんじゃないかと思い直した。


【6】


 詳しい話の中で王都までの道のりは凡そ12日間という。ただ、前回の山登りと違って街道が整備され、途中に宿泊施設もある。

 そういった交通の要にあって、特に宿泊施設に特化した村の事を〈(ステーション)〉と言うのだそうだ。自然と、一日に馬が歩く(しゃく)の間隔で〈駅〉が作られる事になる。


 モニカ達は、一つ目の〈駅〉に泊まった。

 エリーがモニカに向かってやや陰りのある顔で囁いてきた。コルは既に寝ている。


「モニカっち、今回の依頼……というか試験どう思う?」

 モニカは腕を組んで人差し指を噛みながら、今日一日の事を回想した。やがて考えて纏めた事を喋った。


「護衛同士の繋がりが薄いよう感じがした。作戦会議なんてなかったし。」

「見た限り、6チームに別れているね。私たちの党、クラスEで5人の党、そして残りの2人。クラスCの方はというと2人、そしておっちゃん。」


 エリーの心配している事が漠然と理解できた。モニカも囁き返す。

「戦闘になった時に連携取れるのかな……。他の人たちの技能も知らないのよ?」

「……それは指揮官がいないとね。クラスCが一人なら少しは話も違ったかも。」

 変だ。何かが変だ。モニカは違和感を感じた。

「妙ね。」

「何が?」

 エリーが不思議そうな顔でモニカの顔を見つめた。ええい、そんなに見つめるな。

「こんな杜撰な前準備で、本当に護衛する気があるのかどうか。」

 その言葉を発した途端、エリーは声を噛み殺しながらククククと笑い始めた。


「モニカっちが特別なんだよ。あたしはさ、モニカっち以外でも何人か他の冒険者を組んだ事があるの知ってるだろ。皆こんな感じだったよ。その代わり、その場その場の機転は凄かったけどね。だから気にするようなことじゃない。」


 モニカは半ば気圧されるようにたじろいだ。

「そ、そうなの?」

「うん。」

 何かわだかまりが溶けていくのを感じる。

「ま、明日も早いしさ、もう寝ようか。」

「そうね。」


 モニカは目を瞑った状態で考えていた。 あれ、じゃあどうしてエリーは話しかけてきたのだろうか。初めに疑問を投げかけたのはエリーなのに、本人が結論を出していた。彼女が言いたかったのはもっと別の事なんじゃないか……? ひょっとして……何か勘違いしていた……?

 色々考えているうちに瞼が重くなり、モニカは何時の間にか寝息を立てていた。


【7】


 6日目の昼。

 いつものように、騎兵隊が先頭、中央に現金輸送車、後方に護衛馬車という隊列を組んで街道を進んでいた。


 ふと空を見上げた組合業務員が呟いた。

「空が曇ってるな。一雨来るかもしれん。」

 エリーも空を見上げる。

「そうだね。多分、来る。」

 モニカも釣られて空を見上げる。……ちっとも分からん。


 護衛馬車の行列は山岳地帯に入り、山を登り始めた。一行の進行速度が遅くなり、辺りは岩と針葉樹林の様相を呈してきている。


 組合業務員は唾を吐いて、苦々しく吐き捨てた。

「この山で雨に降られると厄介だな。」


 モニカは彼の心配の呟きを払拭しようと平静な面持ちで言った。

「防水のマントありますよ。それとも、服に水を弾くように〈水の精霊(ウンディーネ)〉の属性付与しましょうか。」


「いやいい。問題はもっと別だ。」

「というと……。」

「視界と臭いが通りにくくなる。今ですら湿っぽさで臭いが通りにくい。」

「えっ……。」

 それでは索敵能力が落ちるのではないか。心配になってきた。

「〈水の精霊(ウンディーネ)〉は準備はしておけ。雨の日にアレは強い。」

 モニカは言われるまでもなく知っていたが、黙って首を縦に振った。


【7】


 しばらく一見は何事もなく、歩みを進め、ようやく山頂近くまでたどり着いた。

 今までの経験からすれば、山を降りる頃には駅があるのだろう。今日一日の折り返し地点はもうすぐそこだ。


 先ほどから、エリーと組合業務員は一言も喋らない。何か感じるものがあるのだろうか。二人は辺りを警戒し続けている。

 それを見ているモニカとコルも黙って緊張していた。


 そんな中、顔と目の動きを変えないまま、彼がやっと口を開く。

「今回の盗賊は神出鬼没でな。奇襲が得意。掴みどころがなく、とこぞの村に匿われているという推測もあるが、証拠は挙がっーー」


 丁度その時、悲鳴と怒号の声が聞こえた。


「後ろだ!」


 全員、急いで馬の向きを変えて現金輸送車に向かおうとした。

 と、その時一人の男が走ってきた。確か、クラスCの男だ。


「後ろの護衛馬車が襲われた! 助けに来てくれ!」


息を飲んだ。


「わかった!」


 手綱を操って、全力で最後方の護衛馬車に向かう。

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