1/106
【00】プロローグ★
不老不死。
それは、過去のいかなる英雄も暴君も、成し遂げられなかった野望。
そして、暗い感情に取り憑かれた老魔術師が、また一人、地の底で呟く。
力を望む。
——我を裏切りし者へ復讐を。
地位を望む。
——我を裏切らぬ確固たる僕を。
名誉を望む。
——我を守る権力の盾を。
女を望む。
——我にもう一度、安らぎを。
不老不死を望む。
——我に事を為す時間を。
だが、未だ不老不死の理を見いだせぬ。
逃げ道はある。
——若返りの魔法。
——延命の魔法。
この理を得るために、幾人もの血が流れた。
されど、永遠の命はまだ遥か高みにある。
人の身にて二百年。
もはや肉体は限界に近づく。
これでは目的を達せられぬ。
されど今や動くこともまま為らぬ。
たとえ今、我が身が不老不死になったとしても何の意味があろうか。永遠に出られぬ、肉体の檻に閉じ込められるだろう。
ならば、我は一つの決断を下すべき。
——我が身を捨てる。