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恋月桜花 ~巫女と花嫁と大和撫子~  作者: 南条仁
恋月桜花2 ~月と桜と花の記憶~
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第48章:好きゆえに

【SIDE:椎名和歌】


 お姉様は私の前世を紫姫様だと言った。

 恋月桜花のお話は大好きだけども、到底、信じられる話ではない。

 前世がこの世にあるのだとしても、都合がよすぎるじゃない。

 私が大好きな紫姫様が自分なんて……。

 でも、お姉様を否定するつもりなんてなかった。

 お姉様は特別な人で、不思議な力を持っている。

 彼女を尊敬してるし、実姉のように慕ってもいる。

 私とお姉様がこんな形で亀裂が入ってしまうなんて。

 悪いのは私だ、強い言葉でお姉様を拒絶してしまった。

 私は気まずくてお姉様からも、元雪様からも逃げていた。

 

「あれぇ、和歌お姉ちゃんだぁ」

 

 学校からの帰り道、私は美羽ちゃんと日羽ちゃん出会った。

 唯羽お姉様の妹さんで、仲が良いからいつも一緒にいる事が多い。

 ふたりとも、私にとっては従妹にあたる。

 

「美羽ちゃん、日羽ちゃん。こんにちは、久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、和歌さん。うちの姉がいつもお世話になってます」

 

「ねぇ、和歌お姉ちゃん。唯羽お姉ちゃんは学校に行ってるの?」

 

「行ってるよ。何とか登校してくれているわ」

 

 ふたりとも、引きこもってしまっていた姉の唯羽お姉様の事を心配していた。

 お姉様はそれを嫌われていると誤解しているみたい。

 そんなことないのに、ふたりとも可愛らしい妹さん達だ。

 

「そうだ。唯羽お姉ちゃん、不良さんになっちゃったんだよね?この前、家に帰ってきたら茶髪だったもん。うぅ、怖いよぉ」

 

「ふ、不良……?そういうつもりで染めたわけじゃないと思う」

 

「日羽は髪を染めてる人が苦手なんです。あの姉が不良ぶるわけがないんですけど。私も髪を染めてくるのは意外でした。引きこもりを脱出したのは良い傾向だと思います。そう言えば、男の人と付き合い始めたみたいだからその影響かも?」

 

「お姉様が交際を?」

 

 そんなのは初耳、誰か恋人を作ったなんて話は聞いていない。

 驚く私に美羽ちゃんは説明してくれる。

 

「はい。先日、唯羽姉さんが男の人と一緒に歩いていたのを見ました。結構、カッコいい人でしたよ。お名前は確か……柊元雪さん、だったかな。和歌さんも知っている人ですか」

 

「――も、元雪様!?」

 

 思わぬ名前に私はビクッとしてしまう。

 元雪様がお姉様と付き合っているなんてありえない。

 私は慌てて否定する。

 

「ち、違うよ。元雪様は私の恋人なんだから!」

 

「あれ?あの人……和歌さんの恋人なんですか?」

 

「えー、違うの?てっきり、唯羽お姉ちゃんと付き合ってるんだって思ってた」

 

「私もそうです。姉さんも珍しく他人に心を許していたようだったので」

 

 元雪様にお姉様は心を許している。

 それは間違いないけども、彼は私の恋人だもの。

 

「お姉様にとって元雪様は特別な方ではあるけどね」

 

「そっか。お兄ちゃんは和歌お姉ちゃんの恋人だったんだねぇ」

 

「それはそれで驚きです。和歌さん、男の人と付き合い始めたんですか?」

 

「うん。お見合いしてね。将来は私の神社を継いでくれる人なんだ」

 

 私がそう言うとふたりとも「おめでとう」と祝福してくれる。

 

「そっかぁ。お姉ちゃんは恋人ができたんだ。すごーい」

 

「優しそうな人だったから和歌さんに合いそうですね」

 

「元雪様は優しい人よ。本当に優しい人なの。優しすぎるくらいにね……」

 

 彼は優しいけども、誰にでも優しい。

 唯羽お姉様に対しても……。

 だから、時々、不安になってしまうんだ。

 その優しさを私だけに向けてくれればいいのに。

 小さな嫉妬の気持ちを抱いていた。

 

 

 

 

 神社の前まで来ると自転車置き場に元雪様とお姉様の自転車が置いてある。

 お姉様もすでに帰ってきているみたい。

 

「……おふたりとも帰ってきてるんだ」

 

 私は会わす顔がなくて、顔を俯かせる。

 お姉様を傷つけたことを謝るべきだよね。

 彼女からヒメではなく和歌と呼ばれた事がショックだった。

 自分でも思っている以上に自然に受け止めていたからかな。

 

「あら、和歌。おかえりなさい」

 

「ただいま。お母様……そ、その、元雪様達は来てますか?」

 

「元雪君?そう言えば、さっき唯羽と一緒に出ていったわよ」

 

「お姉様とですか?」

 

 おふたりでどこに出かけてしまったんだろう?

 

「最近の唯羽はずいぶんと明るくなったわよね。元雪君のおかげかしら」

 

「……お姉様は彼に心を許してます。大切なお友達だって言ってました」

 

 私の目には友達以上の関係に見えてしまう。

 お姉様の心が分からないのも不安のひとつだ。

 もしも、元雪様に想いがあるのなら……。

 

「和歌?おーい?」

 

「……あっ。すみません、お母様」

 

「ボーっとしちゃってどうしたの?ふたりなら神社の方に行くって言っていたわよ」

 

「神社に?分かりました、そちらに行ってみます」

 

 不安を抱えていてもしょうがない。

 今は2人にあって話をしないといけない。

 私は自分の部屋に着替えに向かおうとすると、お母様が去り際に、

 

「恋のライバル登場かしら?」

 

「ち、違います!」

 

「ふふっ。頑張りなさいよ、和歌。あの子に大事な人を取られないようにね」

 

「取られませんっ!変な事を言わないでください」

 

 私はお母様にからかわれて頬を膨らます。

 自分の部屋に戻りながら、私は考えてしまう。

 唯羽お姉様と元雪様。

 特別な何かをお二人に感じてしまう。

 

「……それこそ、前世に繋がりでもあったんじゃ」

 

 そこまで呟いてハッとする。

 私が自分で否定したことなのに。

 前世なんてない、お姉様に否定した。

 もしも、本当に私が紫姫様の生まれ変わりだとしたら?

 冷静に考えてみれば、それは素敵な事でもある。

 

「……でも、好きだから信じられるってわけでもないんだよね」

 

 恋月桜花の夢を見続けているということ。

 それが私自身にも引っかかる事でもあるんだ。

 

「もう一度、お姉様とお話をしてみよう」

 

 私に何が起きているのか、お姉様なら知っているはず。

 とりあえず今は……彼女と仲なおりしたい。

 ずっと慕っている人だもの。

 お姉様を嫌いになんてなりたくないし、私を嫌ってほしくもない。

 

「お姉様、元雪様。私は……」

 

 私は制服から私服に着替えると覚悟を決めて、部屋を出る。

 お姉様達に会うために、神社の方に向かう事にした。

 そして、私は“運命”を“自覚”する――。

 

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