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恋月桜花 ~巫女と花嫁と大和撫子~  作者: 南条仁
恋月桜花4 ~恋は戦い~
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第99章:時を超えて《後編》

【SIDE:柊元雪】


 湯けむりと温泉の香り。

 俺は肩まで湯につかりながら一息をつく。

 兄貴達は未だに宴会の最中、盛り上がっているので俺一人で温泉にきた。

 誰もいない大浴場の露天風呂を満喫する。

 

「ふぅ、良い湯じゃないか」

 

 のんびり温泉って言うのは本当に幸せなものだ。

 今日は満月、いい感じに露天風呂を照らしてくれる。

 

「……あれはなんだったんだろうな」

 

 昼間に体験した、妙な感覚。

 これまでの俺は特別な事件に巻き込まれてはきた。

 だが、自分自身の前世、影綱の影響はほとんど受けていない。

 明日、城跡を訪れて、俺にもっと変化が起きるのだろうか?

 前世の記憶。

 和歌が紫姫の影響を受けた時のことを思い出す。

 あんな事が俺にも起きるのだとしたら、少し怖くもある。

 

「赤木影綱、俺の前世にして、この呪いの大いなる原因か」

 

 椿姫を裏切り、紫姫を愛した男。

 彼がどんな人間だったのか、俺は知らない。

 なにかしらの事情でもあったというのか。

 ただ単に可愛い女の子にデレっとして浮気しただけなら、前世のツケを現世で払わされている俺が許せんぞ。

 

「はぁ……やめやめ。難しい事は考えてもしょうがない」

 

 どうせ、何かが起きるのか、何も起きないのかなんてのは明日になってみれば分かる。

 その結果が俺達にどんな影響を与えてしまうのかも、想像できる事ではない。

 俺は考えるのをやめて、温泉につかりながらリラックスしていた。

 

「……あっ、元雪発見。お待たせ~」

 

「ん?この声は唯羽か……って、ちょっと待て!?」

 

 慌てて振り返った俺の視界に飛び込んできたのは唯羽だった。

 タオルを巻いた無防備な状態。

 思いもしない唯羽が来たので、俺はびっくりする。

 

「ふふふっ。ついに来たよ、元雪と一緒にお風呂~っ」

 

 楽しそうに笑いながら、お湯に入ってこちらに近付く。

 

「ま、待て。これはまずいんじゃないか?」

 

「何が?何をそんなに慌ててるの?」

 

「ほ、ほら、唯羽。いくら誰もいないからって混浴はダメだろう?」

 

「それこそ意味が分からないよ。大浴場は混浴って書いてたよ?」

 

 マジッすか!?

 言われて気付くと、確かに看板みたいなものに混浴と書かれていた。

 内湯と外湯は別、外の露天風呂の方は男女混浴となっていたらしい。

 

「ホントに混浴だったんだ……冗談じゃなくて?」

 

 喜び半分、戸惑い半分と言う感じだ。

 唯羽はにんまりと笑みを見せる。

 

「元雪は私と一緒じゃ嫌なの?それともタオルが邪魔だと」

 

「お願いだから、タオルに手をかけるな」

 

 さすがに理性と戦う事になるのは困る、非常に困る。

 無邪気な天使は悪戯好きです。

 

「私は自分の全てを元雪に見て欲しいのに。私は元雪ならいいんだよ?」

 

「冗談も本気にするぞ。唯羽、本当に襲いそうになりそうな俺の気持ち、分かってる?」

 

「……え?」

 

 俺を誘惑する唯羽の肩にそっと手を触れる。

 いつもの冗談なんだろうが、俺も男なのだ。

 

「唯羽……好きな女の子に誘惑されて自制できるなんて思うなよ?」

 

「……あ、え、あれ?」

 

 逆に頬を紅潮させる唯羽。

 俺も俺で止まれずに彼女の頬に唇を触れさせる。

 のぼせてるのかもな、俺。

 でも、今さら自分を止められやしない。

 

「……ぅっ」

 

 照れる唯羽、次は唇に、と思った所で――、

 

「――そこのふたり、妙な雰囲気を作らないでください」

 

 湯気の向こうから聞こえた低い少女の声に俺は心底ドキッとした。

 ……ま、まさか、この声は?

 

「和歌……?」

 

「そうですよ、元雪様。ずいぶん、のぼせてる様子ですね」

 

 湯けむりと共に笑顔で怒る和歌、登場。

 白い肌に綺麗な身体のライン、タオルを巻いていても、色っぽい身体に見惚れる。

 だが、状況は恋人の身体つきに見惚れてる場合ではないのだ。

 少しのぼせ気味だった頭がサッとさめた。

 やばい、やばい、超やばい……。

 

「こらぁ、変な所で邪魔しないでよ。ヒメちゃん。いつもそうだよね?邪魔するのを狙ってるのかな?」

 

「……邪魔して当然ですよ、お姉様。人が準備してる間に元雪様を誘惑しないでください。油断も隙もないですね。こうなると思って、恥ずかしいのを我慢してついてきて正解です」

 

 和歌は恥じらいながら、湯船につかる。

 そのまま俺に近付いてくる。

 や、やられる――!?

 俺がびくっとしていると、彼女は俺に背中をくっつけた。

 

「……お姉様だけずるいです」

 

「あのな、和歌。その、えっと」

 

「は、恥ずかしいからこちらは見ないでください」

 

「はい、ごめんなさい」

 

 なんとかセーフ、怒りではなく拗ねてるだけらしい。

 とりあえず、ほっと安堵する。

 和歌の機嫌だけは損ねないようにしなければ、普段、大人しいだけに怖すぎる。

 

「元雪様の背中は大きいですね」

 

「そうかな」

 

「はい……男の人の身体って感じがします」

 

 背中越しに和歌の肌の感触が伝わる。

 タオル一枚の美少女が2人。

 両手に花の混浴なんて人生初めての経験です。

 

「……良いお湯ですね。景色も綺麗ですし、素敵な温泉です。温泉の質もいいと評判らしいですよ」

 

「お肌すべすべになるかも。元雪、あとで触って確認してみる?って、いひゃい。ヒメちゃん、何をするの!?」

 

「すみません、つい足が当たってしまいました」

 

「嘘だぁ。今のわざとだよ」

 

 どうやら俺の背後で和歌が何かしらの攻撃をしてるらしい。

 ……見えない事って怖いですね。

 俺は振り返る勇気がなくて、そのままお湯につかる。

 

「3人でお風呂なんて初めての経験だね」

 

「たまにはこういうのもいいですよ。節度のある行動の範囲内であれば」

 

「何事も節度は大事だと俺も思う」

 

「ですよね?あれはのぼせてただけですよね?」

 

 和歌の鋭いトゲのある言葉に俺は素直に頷くしかなかった。

 最近、和歌に対しての立場が低くなってきた俺です。

 彼女はそっと俺の耳元に甘い声で囁く。

 

「……私相手にはああいうこと、してくれないんですか?」

 

「それは、またの機会と言う事で」

 

「ふふっ。その時を楽しみにしてますよ、元雪様」

 

 月の光が照らす温泉のお湯につかる3人。

 少しの気まずさとドキドキ感に包まれながら、俺達は混浴を楽しむのだった。

 

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