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呪いのビデオ、その末路

作者: 南師

私は真子(さなこ)


テレビを通じて人を呪う怨霊。


私は怨む、生きてる人間を。


私は妬む、生きてる人間を。


私は殺す、生きてる人間を。


昔は私も沢山殺した。


一つのビデオに乗り移り、ダビングされたビデオを次々に呪い増殖し、老若男女様々な人間を呪い殺した。


私は有名だった。


私の存在はあらゆる人間に知れ渡り、そして戦慄させた。


そう、私はあの時、あらゆる怨霊妖怪魑魅魍魎の頂点に君臨していた!!


でも、それも過去の話。


「あー、真子ちゃん。君、今日付けでクビね」


「……え?」


今は私のブームも去りゆき、とうとうこの私が所属する閻魔三界調節株式会社の一室にて、リストラの宣告を受けてしまった。


「な、なんでですか!?そんないきなり……」


「……君、先月の業績言ってみなさい?」


この会社は、現世から人間の魂を集め、輪廻に連れ戻すという仕事をやっている。


最近は現世があまりに居心地がよすぎて、輪廻に戻る魂が激減しているからである。


一応私もその会社の一員で、老若男女様々な魂を現世からこちら冥界に運び、輪廻に戻す作業をしている。


かつては、私はこの業界No.1の実績を持ってた私だが、今は落ちぶれに落ちぶれて


「……3つ、です」


ちなみに全盛期の私なら、3桁はいっていた。


「……はぁ。わかっているだろ?最近の現世は、君には合わない」


そう、最近の現世は私には合わないのだ。


私はビデオを通じて呪いを増殖し、仕事をする。


正確には、私本体が一つのビデオに乗りうつり、呪いだけをダビングされたビデオに移す。


しかし最近は、DVDなるものが横行しビデオを見る者が少ない。


頑張りに頑張ってDVDに対応しかけた矢先、こんどはブルーレイなるものが登場した。


だが、それでもまだビデオを見る家庭はある。


あるにはあるが、それを補って余りある欠点がビデオにはあるのだ。


……最近私の呪いが込められたビデオが、老朽化してうまく映らないのだ。


あるものはテープが伸び、あるものは歪んで映る。


確かに、その方が見た目なお呪い殺されそうなくらい怖いが、あいにく呪いは逆に弱くなってしまうのだ。


さらに、最近は地デジ化が進み、私の呪いがテレビから出られない。


ならばと本体である私が自ら乗り込み、久々にビデオを見たお兄さんを呪おうとした所、テレビが薄型で体重に負けてポッキリ。


床に顔を激突させ、呪いに失敗。


その次の日、おんなじお兄さんがもう一度ビデオを見出したので再び赴くと、出た瞬間壁に激突。


そのようすを『ぎゃっはっはっは!ま、マジで壁に当たりやがった!ば、バカス!やっべ!呪い超ウケる!!』とか酔っ払った声で笑われた時はもう死にたいって思った。


もう死んでるけど。


「もう君も十分働いただろう。死んでからえっと……「85年です」85年か。もう次の人生歩んでいいんではないかな?」


そう、私は元々現世で人間をやっていた。


だが、85年前に死に、輪廻に戻る時に会社にスカウトされたのだ。


この会社に給料はない。


ただ、業績によっては次の人生において多大なボーナスが入るのだ。


とはいえ、所詮命を扱う会社である。


得られる事が“自らの死に方”と“寿命”、そして“次の人生でその立場に当たる者の死に方とそのタイミング”くらいである。


でもまぁ、それだけで十分だ。


ちなみに次の人生でその立場に当たる者の死に方とそのタイミングとは、例えば“母、事故死、18歳”としたら次の人生の私が18歳の時に母親が事故死する。


「そう……ですね」


私がそう言うと、目の前の上司は嬉しそうにニンマリわらった。


……そんなに私にいなくなって欲しいのか。


「そうかそうか……では、今までの分のボーナスはどうする?一応これだけ君は溜まっているよ?」


上司はそう言いながら一つの紙を取り出すと、私に見せた。


……なかなか、溜まっている。


これはなかなか心踊る。


「……では、私の死に方は“老衰”。寿命は伴侶と同じで、伴侶も“老衰”。で……他は私の人生で子供になる者も“老衰”になるように」


前の人生はなかなかに悲惨な死に方だったから、せめて次の人生くらいは安らかに死にたい。


「……ん。わかった。いやぁ……心配だったんだよ僕も。普通は長くても10年くらいでやめる所を、君は85年も!ぶっちゃけそろそろ肉体に入れなきゃ魂が崩壊しかねなかったからね。でもまぁ今ならボーナス使えるし、正しい判断だよ」


そうなのか……。


なにげに危なかったな、私。


「じゃあっと……はい、これを輪廻課に持ってってそこの指示に従って。じゃあ、長い間お疲れ様っと……言い忘れてた」


こちらこそお疲れ様でした、といおうとした矢先、上司はそう言葉を遮った。


「君のボーナスの余った分は、一応規定通り次死んだ時にも使えるからね。今まで余した人がいなかったから誰も知らないかもだけど、それは君の魂が稼いだ正当な報酬だ。だからまた死んだらこちらに来るといい」


それは嬉しい。


寝耳に水だが、嬉しい情報だ。


「ま、そん時までまた。達者でな」


「はい!今までありがとうございました!!」


私は、今までにないくらいいい笑顔をして意気揚々と輪廻課に行った。


そもそも、私は85年もただただ負の感情だけで人間を呪っていた。


だが、今から私は違う!


新たな人生を私は、幸せな人生を歩んでいくんだ!!










「……で、どういう事ですか?」


それから1時間後、私は再びあの部屋にいた。


輪廻課で手続きを終え、私はそのままとある女性の中に受胎した。


優しい揺りかごのような中にいたのもつかの間、気づいたら再び会社の前に。


「……君の寿命が問題だったらしいね」


「は!?」


「今、閻魔様(しゃちょう)に問いただした所……君、あの人生で結婚できない運命にあったらしい。……つまり伴侶がいないのに寿命が伴侶とおんなじなら……」


……寿命がない、と。


「ふざけんなぁぁぁぁ!!」


ただボーナス無駄に消費しただけじゃあないか!!


「ど、どうする?もう一度ボーナスを使って……「必要ありません」……え?」


もう、決めた。


「あれでも一度は肉体に還ったんだから、また85年、働けますよね!?」


「ま、まぁ一応……」


「だったら!!」


私はもう、仕事に生きる!!


「また85年!私を会社に雇ってください!現世を恐怖に陥れてやります!!」


見せてやろう!


蘇った真子の力を!!









「……ちなみに、これからどうやって仕事するの?」


「ふふははははは!今の私ならブルーレイも地デジも敵じゃあありません!仕事に生きる!蘇った真子の仕事ぶりをご覧ください!!」


「……ちなみに、君死んだからここにいるからね?蘇るの失敗して。そしてそれならあんまかわんないきが……」


うるさい!


……でも確かに、マンネリになる。


……よし!!


「これからは呪いのゲームソフトを開発しよう!!」


「……もう、好きにしなさい」


これから再び真子の名前が現世に轟くのは、もっと後の話である。



…………多分。

そしてナナシノゲェムが開発されたのである(笑)


都市伝説?

心霊写真?

オーパーツ?

UFO?

UMA?


オカルト大好物ですがなにか?


ちなみに最近のマイブームはヴォイニッチ写本(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] そして貞子は3Dの映画に再び降臨するのだった。 ……まさかこれを予想してましたか? 南師さん。
[一言] 面白い設定だなww
2011/05/05 18:57 退会済み
管理
[一言] 会話だけでテンポよく話が進む なかなかに面白いし読みやすかったです 独創性もGJ
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