第七章 十五年の時を経て
「お兄ちゃん、起きてる?」
梨沙の声は震えていたが、そこには迷いはなかった。
ドアを開けた誠は、パジャマ姿の梨沙の、濡れた瞳に宿る強い決意の光を見た。
「…梨沙。どうしたんだ?」
梨沙は、言葉ではなく、行動で応えた。
一歩部屋に入ると、誠の胸に、迷いなく飛び込んだ。
「お願い…私を、抱いて。お兄ちゃんのものにして」
それは、懇願だった。誠は、その小さな体を抱きしめ、深く呼吸をした。
「梨沙…後悔しないか。俺はもう、引き返すつもりはないぞ」
「しない。もう、怖いものなんてない。私を壊したのは、お兄ちゃんの強さだったけど、私を救ってくれたのも、お兄ちゃんの優しさだから…」
梨沙は、誠の顔を見上げ、自ら背伸びをして、彼の唇に、自分のそれを重ねた。
それは、これまでのものとは違う、愛情と欲求に満ちた、情熱的なキスだった。
誠は、もうためらわなかった。
愛する梨沙を、壊れ物を扱うように優しく抱き上げ、ベッドへと運んだ。
「ありがとう、梨沙。許してくれて、ありがとう」
誠の言葉は、愛の告白であり、長年の贖罪が成就した安堵の言葉でもあった。
部屋の明かりは、微かな間接照明だけ。
その薄明かりの中で、誠は梨沙のパジャマを、丁寧に、時間をかけて脱がせていった。
指先が肌に触れるたびに、梨沙の体は陶酔に身をよじらせる。
「…んっ、お兄、ちゃん…」
誠は、露わになった彼女の、雪のように白い肌に、一つ一つ、愛の証を刻んでいった。
首筋、鎖骨、胸元…。
熱い舌が触れる場所すべてに、甘い吐息と、かすれた悦びの声が漏れる。
「梨沙は、本当に綺麗だ。昔から、ずっと…」
誠の囁きが、梨沙の耳元で熱を帯びる。
その手は、決して急ぐことなく、しかし確実に、梨沙の体の秘められた場所へと向かっていった。
梨沙は、自らの手で、誠のTシャツを剥ぎ取った。
鍛え抜かれた背中、熱を帯びた肌が、彼女の腕の中に飛び込んでくる。
「私も…お兄ちゃんを感じたい…」
二人の肌が、完全に触れ合った瞬間、全身に電流が走った。
汗ばんだ肌が、互いの体温を貪るように求め合う。
誠は、梨沙の潤んだ瞳を見つめ、もう一度、彼女の唇を塞いだ。
深く、長く、魂を交わすような口づけ。
そして、すべてが一つに結ばれた瞬間。
梨沙の体は、喜びと快感のあまり、大きく弓なりにしなった。
「あ…っ!…お兄、ちゃん…っ!」
それは、十五年前の恐怖の記憶を、完全に洗い流すほどの、絶対的な歓喜だった。
誠の力強い動きと、彼から注ぎ込まれる熱と愛が、梨沙の心の傷を、内側から修復していく。
梨沙は、過去の罪を抱えたままの彼ではなく、今、この瞬間、全身全霊で自分を愛してくれる、一人の男性を受け入れた。
梨沙の目から、涙が静かに溢れた。
しかし、それは悲しみでも後悔でもなく、長年の呪縛から解き放たれ、心から愛する人に受け入れられた、歓喜と感謝の涙だった。
二人は、夜明けまで互いを求め続けた。
言葉はもう必要なかった。
互いの肌、吐息、そして絡み合う指先が、永遠の愛と、新たな人生の始まりを、何度も何度も語り合った。
長かった十五年の夜が明け、二人の罪と贖罪を超えた、真実の愛が、ようやく結実した瞬間だった。




