第34話 封印
今回は、2章最終話です。
ゆるく読んで頂けると嬉しいです
「封印だと?」
魔王の問い掛けに、悪魔魔道士は少し震えながら答えた。
「……はい……魔王様の力の一部を封印すれば或いは……」
悪魔魔道士の口ぶりから、それが絶対的な方法ではないことは、察せられた。
「……説明してくれ」
「……はい。今セイラさんは魔王様の闇に侵食されています。…であれば、魔王様の闇を、封印すればいい…」
悪魔魔道士は言葉を選びながら続けた。
「人間領より接収した《オーブ》を使います。…この《オーブ》に魔王様の闇を封印すれば、セイラに侵食された闇も抑えることが出来るはずです…しかし」
魔王は徐々に弱まる、セイラの命の灯火を感じ苛立ちを隠せなかった。
「『しかし』なんだ!?早く言え!」
「闇は魔王様の力の根源…魔王様の力が弱まれば……人間との均衡が崩れます…それに、魔王様の力を封印なんて……正直、何が起きるか分かりません……」
悪魔魔道士の言葉は、魔王に流れる血液を凍てつかせた。
「……他に、方法はないのだな?」
「はい、ありません」
「分かった……少し考えさせてくれ……セイラと二人にして欲しい」
「分かりました……」
悪魔魔道士が部屋を後にすると、魔王はセイラに語りかけた。
「……セイラ……あの日お主に会ってから...ただただ楽しい毎日だった。殺伐とした日々から…わしを救ってくれた…魔饅頭……美味かった……実は、毎晩お主が部屋に遊びに来ることが楽しみだった……泉でお主を抱きしめた時……愛おしかった…」
紡がれた言葉にセイラの顔は少し安らいで見えた。
「だが…すまぬ…わしは魔王なのだ」
魔王はそう言い残すと、部屋を後にした。
魔王が部屋を出ると、心配そうな表情の悪魔魔道士と、腕を組み考え事をしているオーガが待ち構えていた。
「魔王さま…ご決断は…」
悪魔魔道士は息を飲んだ。
「わしは…魔領域を守らねばならん…」
「…本当にそれでいいんですか?」
オーガの問いは魔王の言葉を遮った。
「……貴様?何が言いたい?」
「あなたは、いつもそうだ……全て背負おうとする……お辛そうですよ」
「……」
オーガの言葉に魔王は応えることが出来なかった。
「もっと、仲間達を信じてください。守りますよ、私たちが……それに…またセイラさんと作りたいんです……魔饅頭をね」
オーガは笑いながら告げた。
「そうですよ……それに、私もセイラさんともっと話したいです」
それは、悪魔魔道士にとって初めての反抗だった。
「お主ら……しかし」
「……魔王様」
その声に、振り返ると城中の魔物達の姿があった。
「俺たち大丈夫です」
「いつも、魔王様が守ってくれていた。今度は俺たちの番です」
魔物達の震えた声には、強い意思がやどっていた。
「お主ら……皮肉じゃな、部下が…仲間がわしの弱体化を望むというのは……」
そういうと、魔王は少し笑った。
「みんな、それだけセイラさんを助けたいんです……」
「……悪魔魔道士」
「それに、みんな魔王様の苦しみを知っています。」
悪魔魔道士は静かに頭を下げた。
「……魔王様ご決断を」
「……」
そこにいる魔物達の顔を見回したのち、魔王は言った。
「悪魔魔道士、封印の儀を行う。セイラを救うぞ」
数ヶ月後ーー
魔王城の廊下を二つの影が歩いていた。
やがて二人は、魔王の部屋に到着した。
コンコン。
「魔王様。連れて参りました」
「うむ、入れ」
「はい、失礼します」
扉を開けると、そこに魔王の姿があった。封印の影響で、幾分やつれている。反面その表情は精力に溢れていた。
「……魔王様、お取引頂けるとのことでありがとうございます」
魔王の部屋にやってきたのは、人間の商人だった。
「うむ……見積もりを見せて貰おう」
「はい」
「うむ、なるほどいいだろう」
魔王の後ろから、書面をのぞき見する気配があった。
「高い!商人さんもっと安くならないかしら?」
その声はセイラだった。
「しかし、セイラ。『あんこ』は魔領域にはないものだし……妥当ではないか?」
「ふふ、商売はシビアにいかないとね。魔王軍世界征服新プロジェクト第一弾なんだしね」
「……なんなんだ全く」
「……ははは」
魔王と商人は、苦笑いするしかなかった。
「ありがとうございました」
「失礼します」
「商人さんありがとう」
商人が部屋を出て、魔王とセイラは話を続けた。
「セイラ……お主張り切りすぎだ」
「ふふ、魔饅頭を名物化して、資金を集める。まずは食で世界征服……張り切らない訳にはいかないわ」
「まだ、病み上がりだというのに……」
「……病み上がり、ならぬ闇上がりね……暗闇の闇ね。病みとかけてるの、分かるかしら」
「しょうもないダジャレだ」
「ふふ……私はみんなに…貴方に助けてもらった…少しでも力になりたいから」
「そうか。わしらは闘うことしか知らぬからな、ご指導頼むよ」
「任されたわ……みんな戦うこと以外はポンコツだからね」
セイラは、イタズラな表情で笑った。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次話は2章のエピローグです。
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