第30話 魔饅頭
今回は、魔王軍名物魔饅頭誕生の話です。
ゆるく読んで頂けると嬉しいです。
「オーガさん!何かやれることはないかしら?」
セイラは会議終わりのオーガを捕まえてそう訊ねた。
「やぶから棒だね。どうしたんだい?」
「うん……私、魔王軍に来てから、結構経つでしょ?」
「3ヶ月ぐらいだったかな?」
「うん。それでみんな良くしてくれるから何か恩返ししたいの」
オーガは少し考えてセイラに聞いた。
「……みんなに、何がしてあげたいかな?」
「うーん…私、人間だから、みんな何が喜ぶかわからないの」
「そんな難しいことじゃないさ。君が何かしてくれるだけで嬉しいんじゃないかな?……特に魔王様は」
「なんで、あの人が?」
「まっまぁ、そういうものだよ」
「そうなのね」
セイラは首をかしげたままふと真顔になった。
「結局…何がいいのかしら」
「そうだな……私の故郷では、気になる…いや、世話になってる相手に菓子を渡す風習がある。どうだろう、菓子を作って渡してみては?」
「……オーガさん……ナイスアイデア!」
「気に入ってくれたようだね。それでは、私はここで」
セイラは、踵を返しその場を立ち去ろうとするオーガを強引に引きとめた。
「ちょっと待って……オーガさんも手伝って」
「何故、私が……」
オーガは眉をひそめた。逃げ道を探すように廊下の先へ目をやる。
「私…お菓子作り苦手なの」
「何故私が作れると思うんだ?」
「…なんとなく…勘…」
セイラはそう言うと目を潤ませながら、オーガをみつめた。オーガはたまらずたじろぎながら答えた。
「はぁ…仕方ない、手伝うよ」
「やったー!」
セイラの強引なお願いに、屈したオーガはお菓子作りを手伝うことになった。
厨房に向かう二人の姿は楽しげだった。
「……さてと、何を作ろうかな」
「何か得意な、ものはあるかい?」
「……そうね……あるとも言えるし、ないとも言えるわ」
「わかった、ないんだな」
セイラには得意なものはなかった。
「うーん……なにがいいか……そうだ、私の故郷にまんじゅうというものがある。それなら作り方はわかるのだが……」
「まんじゅう?」
「ま、まんじゅうだ」
オーガは噛んだ。キャラに合わず喋り過ぎたせいだ。
「魔饅頭?」
「まんじゅ……そうだ、魔饅頭だ」
オーガは噛んでしまった気恥ずかしさから魔饅頭で通すことにした。
「では早速つくるとしよう」
「材料は?」
「……薄力粉と……ベーキングパウダー、砂糖、塩……それとぬるま湯に…油と…あとは大事なあん……以上だ」
「詳しいわね?あとなんで材料が魔王城に揃ってるの?」
「……まぁ、まぁ……つ、続けるぞ。ボールに粉、砂糖、塩を入れて混ぜる」
「オーガさん手際がいいわね」
「……そ、そうか?」
実はオーガはお菓子作りを密かに楽しみにしていた。図らずも、その事実をセイラの当てずっぽうな勘により看破されていたのだった。
「……よし、混ぜ合わさったら、ぬるま湯を入れてこうする………はっ!!!!」
「えっ!?すごいわ!オーガさんが『はっ!!!』ってやったらなんか出来たわ」
「そうだ、そしてなんか出来たやつであんを包んで…………はっ!!!!」
「凄い!!!!出来た!!!ちょっと雑な気もするけど!!」
魔饅頭が完成した。
「……さてと、食べてみようか」
「うん」
パクッ
「美味しい!」
「うん、これならみんな喜んでくれるだろう」
「そうね!!……オーガさん…ありがとう…人間の私にこんな親切にしてくれて」
「全然構わないよ。日頃から君が頑張ってくれている事を知っているからね…それに私は魔物だとか、人間だとかそんなことは気にしない。大事なのは個人だと思っているよ」
「…………」
セイラはオーガの優しさに触れ、胸の奥に押し隠していた感情が漏れそうになった。
「さっ、魔饅頭をみんなに渡すんだろ?まずは、魔王様に持って行くといい」
「うん。本当にありがとう」
そう言うと、セイラは魔饅頭をお皿一杯に乗せて、慎重に、こぼれ落ちないように、運んでいった。
「…世界もこうあればいいのだがな」
オーガは少し寂しそうに呟いたーー
コンコン。
「入ってもいいかな?」
「セイラか?はいっ…」
「入るね」
ガチャ
「なんだ、お主は…いつも急だな」
「ごめんなさい……でも、見て!作ったの!魔饅頭!」
「魔饅頭?確か以前饅頭という菓子をオーガが振る舞っておったが……」
「そうなの!オーガさんに手伝ってもらって……あっ」
お皿に盛られた魔饅頭がこぼれ落ちそうになる。しかし、魔饅頭が地面に落ちる寸前で魔王が受け止めた。
「まったく、わしにこんなことさせるのはお主だけだぞ」
「……気をつけます」
「魔饅頭…頂くとするよ」
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