第29話 違和感
今回は、セイラ回です。
ゆるく読んで頂けると嬉しいです
魔王とセイラが出会ってから数日が過ぎていた。セイラが魔王軍で過ごす中で、ある違和感を感じていた。
最初は、歩くたびに視線が刺さる気がして落ち着かなかった。
魔王城の雰囲気は重厚で重い。通る魔物たちは人間の怖れを形どったそのものだ。
なのに――。
「セイラが来てくれて、助かるよ。」
「セイラちゃん美人だな!今度デートしてよ」
「何か困ったことがあったら、教えてくれよ」
そんな言葉ばかりが、当たり前みたいに飛んでくる。
セイラは、廊下や食堂でかけられたその数々の言葉を頭の中で反芻していた。
「うーん……うん!意外に怖くない!」
違和感を、ようやく言葉にできた気がして、セイラはそう呟いた。
「どうしたんですかセイラさん。難しい顔して」
後ろから声をかけてきたのは悪魔魔道士だった。いつも通り、書類の束を抱えている。城の廊下なのに、どこか役所の人みたいだった。
「悪魔魔道士さん……意外に……怖くないの」
「何がですか?」
「魔王軍が」
悪魔魔道士は一瞬目を瞬かせた。
「あなたは、魔王様にもズカズカと話しにいく人ですからね。それは、そうでしょう」
セイラは言葉を探すように目を泳がせた。
「違うの……そうじゃなくて、みんな優しいし…なんだか普通だなって思って……悪魔魔道士さんは、私の友達だし」
「友達!?」
「そうよ」
「まぁ、悪い気はしませんが……セイラさんはやっぱり変わってますね」
セイラはなんのことかわかっていないようにおどけながら聞いた。
「そうかしら?」
「私が言うのも変なんですが……あなたは攫われてきたんですよ……そんな相手に『優しい』とか、『友達』なんて普通言わないですよ……」
悪魔魔道士は一瞬言葉に詰まった。そして一呼吸置いたのち続けた。
「ともあれ、セイラさんの疑問の答えが見付かるといいですね」
「ふふ、悪魔魔道士さん、やっぱり優しいね」
「そうですか?……魔物失格ですね」
「そんなことないよ!……って私が言うのも変か」
「はは、お互い変ですね」
「ふふ、同じだね。魔物も…人間も」
セイラは悪魔魔道士とのやり取りの中で、違和感の正体がおぼろげながらわかってきた気がした。
その夜、セイラは魔王の部屋を訪れていた。初めて、魔王と出会ったあの日から習慣となっていた。
「セイラ、お主はわしが怖くないのか?……皆のように」
「んー……寧ろ安らぐかな」
「……何なんだお主は」
「悪魔魔道士さんも『魔王様は優しい』って言ってたよ。私もあなたのこと好きよ」
「……」
魔王はセイラから顔を背けた。
「あっ、ひょっとして照れてる?」
「照れてなどおらぬ!」
「ふふ、そういうことにしてあげる」
魔王は呆れたように溜め息をつき、視線を上げ虚空をみつめた。
「人間も色々だな……わしを殺そうとする者……お主のように懐いて来る者」
「魔物も同じだわ……気が荒い魔物……悪魔魔道士さんみたいに優しい魔物…それに」
「それに?」
「あなたみたいに、哀しそうな魔物…」
「……」
「争うって、寂しいね……みんないなくなっちゃうかもしれないから」
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