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第27話 プロローグ

今回から第2章です。

2章は主に過去回になります。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

二人が出会ったのは、どれくらい前だろうか。それは運命ではなく、ただの偶然だった。


もし、二人が出会っていなければ、世界は変わらず流れ続けたのかもしれないーーー


「おい、早くこい」

「……」


魔王城の廊下を二つの影が歩いていた。


「お前は、魔王様にご奉仕することが役目だ。言葉遣いには気をつけろよ」

「……」


連れられた少女は返事をしない。

魔物はそれを咎めるでもなく、足早に進んで行った。


やがて二人は、魔王の部屋に到着した。

魔物は少し息をのみ、手を震わせながら扉をノックする。


「魔王様、宜しいでしょうか?女を連れて参りました」


扉の向こうから、気怠げな声が返ってきた。


「入れ」

「はい、失礼します」


重厚な扉を開けると、そこにはかつての魔王の姿があった。今よりも、幾分若々しく物憂げな表情をしていた。


「魔王様、本日のお相手を連れて参りました」


「……わかった。ご苦労」

「……それでは失礼致します」

魔物はそそくさと退出した。


扉が閉まり、部屋に沈黙が落ちる。

数秒。だが…永遠のように重い。


その沈黙を嫌うように、先に口を開いたのは魔王だった。


「……娘よ、お前はなぜここに連れてこられたか分かっておるか?」


「……貴方の、慰みものになるため」


その声は、強い覚悟と、今にも消え入りそうな繊細さをはらんでいた。


「お主、名をなんと申す?」

「……セイラよ」

「いい名だな…」

「……『光栄です』…って言えばいいのかしら?」

「……皮肉か?」


二人の視線だけが、ぶつかったままだった。


「怖くないのか?わしは、魔王だぞ」

「……怖いわ……怖くないわけないじゃない」

「……はっきり、言うのだな」

「当たり前よ……」

「そうか……」


魔王はポツリと呟いたのち、セイラに告げた。


「娘……セイラ、ここから立ち去れ」


予想外の言葉だった。セイラは困惑を隠さず魔王に問い質した。


「なんで…意味が分からない」

「……分からなくてもよい…帰りたいのだろ?」

「帰りたい……けど、私は今日あなたに…」

「抱かれてるはずだった…か?下らぬよ。お主も、望んでおらぬだろ?」

「……そうだけど」


セイラは一瞬考えたのち答えた。


「…ねぇ、ちょっとお話、しない?」

「何も話すことはない」

「別にいいじゃない」

「帰りたいんじゃないのか?どういう心変わりだ?」

「母性本能を、くすぐられたのかしら」

「魔王にか?」

「駄目なの?」


魔王は呆れたように、ため息をもらした。


「……何から話すのだ?」

「じゃあ……私の好きな食べ物から」


とりとめのない話だった。しかし、常に戦いの中にあった魔王にとっては、一時の安らぎを感じるには十分だった。


「……変わった、女だな」

「ふふ、よく言われるわ」


セイラはいたずらな笑みでおどけた。

その笑みに、魔王の口元がわずかに歪む。

息が漏れ、笑いになった。魔王自身、その音に驚いた。


「……いつ以来だろうか。笑ったのは」


その笑いは、世界が変わる小さな合図だったのかもしれない。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


次回も、引き続き過去回です。


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