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『ポンコツ魔王軍の世界征服は今日も進まない。』  作者: mikamikan
第一章 魔王と魔王軍の日常
32/41

第26話 魔王スナックへ行く ーその4ー

今回は、スナックで、世界の命運について話す回です。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

ここは大人の社交場《スナック 魔女っ娘倶楽部》。


さっきまでの笑い声が、嘘みたいに落ち着いていた。

グラスの氷が溶ける音だけが、やけに大きく聞こえる。


魔女ママは、カウンター越しに二人を見比べながら、何事もなかったように言った。


魔女ママ

「……で? 次はなに飲むんだい」


サイトー

「え?……あぁ……何飲もう……」


魔王

「う……うむ」


短い返事が、妙に重なった。


サイトーは、飲み干したグラスを見つめながら、

真剣な顔をしていた。


魔王

「バレちゃったの……そうじゃ、わしは魔王じゃ……驚かせてはいかんと、内緒にしていたがな…………おぬし、人間じゃもんな……」


サイトー

「……そうだよ……人間で……

しかも、勇者の師匠……なんだ……」


グラスの水滴が、つう、と落ちた。


魔王

「なに!!!!?……ということは、おぬし……サイトーではなく……」


サイトー

「……あぁ……サイキョーン……だ……」


魔王

「なんと!!……たまげたのぉ……」


サイトー

「……でもさ……実のところ、気が付いていたんだろ?

俺も、まっちゃんが魔王だって気が付いていたしな」


魔王

「……え? そうじゃよ(そうなのか?)……お主は、いつから気が付いておった?」


サイトー

「そうだな……最初だね。まっちゃんが酒に酔って寝てる時に、寝言で『わしが魔王じゃ』って言ってたしな……

それだけなら、《夜の魔王》ってことかなって思ったんだが……『お漏らししちゃった』って言いながら、とてつもない魔力を漏らしてたから思ったんだ……あれ、まっちゃん……魔王じゃね?って」


魔王

「なるほどのぉ……全部、わしのせいじゃな?」


すべて、魔王のせいだった。


サイトー

「まっちゃんは、いつ俺がサイキョーンだって気が付いたんだ?」


魔王

「……わしも最初じゃ」


嘘をついたのだった。


サイトー

「じゃあ、お互い気が付いていたわけだな。

……なぜ、殺そうとしなかった?」


魔王

「不毛じゃよ……そんなことは」


魔王は、気が付いていないだけだった。


魔王

「お主こそ……わしを殺しに来たのではないのか?」


サイトー

「まぁ、偵察だな。いきなり、そんな大それたことはしない」


魔王

「……そうか」


サイトー

「魔領域の町を見たよ……平和そうだった。

聞いていた話とは違ったよ……それで、ひとしきり偵察を終えて、人間領に戻ろうとした時に見つけちまったんだ……この《スナック 魔女っ娘倶楽部》を……入るだろう、普通さ」


魔王

「場末のスナックの魔力じゃな」


魔女ママ

「ある意味、魔法だね」


サイトー

「抗えなかった」


魔王

「そして、今に至るわけじゃな」


サイトー

「あぁ……しかし……お互いの正体を知ってしまった……今から、やるかい……殺し合いってやつを」


サイトーはその言葉と同時に、強烈な殺気を放ち、手元にあるグラスに亀裂が生じた。


しかし、魔王の一言によって、その殺気は霧散していった。


魔王

「不毛だと、言っておろう。酒の前で、そんな話は」


その答えに、サイトーの口角は少し緩んだ。


サイトー

「だよな」


魔王

「うむ……ママ、もう一杯じゃ。

野暮ったい話はなしじゃ。飲み直すぞ」


サイトー

「そうだな。ママ、俺も同じもの。

あと、ごめん……グラス、変えてもらってもいいかな?」


魔女ママ

「あいよ」


数分後――――


魔王

「……しかし……わしは、勇者にアドバイスを……」


サイトー

「知ってたんじゃないのか?俺の弟子が、勇者だって」


魔王

「も、もちろんじゃ!」


魔王は一つ息を飲んでから、

サイトーに一つの質問をぶつけた。


魔王

「お主は……お主の弟子……勇者に…どうなってもらいたいんじゃ?」


サイトー

「前にも言ったろ。奴は、まじめすぎる。

だから、他人の期待を背負い込みすぎるのさ……自分を押し殺してな。

だから……自分の選択ができる奴になってもらいたかった……ただ、それだけさ」


魔王

「どんな選択をしようとも、か?」


サイトー

「ああ……今は、まっちゃんを滅ぼそうと、

やっきになってるがな」


魔王

「わしに言うことか!」


サイトー

「ははっ、悪い悪い。《英利九酒~えりくさー~》を、また持ってきてやるから許してくれよ」


魔王

「……しかたないのう。飲み仲間の弟子が、わしを滅ぼしに来る……それもまた、粋な話じゃ。だが、なにが起きても、恨みっこなしじゃからな」


サイトー

「……ああ」


少し緩んだ空気が、再び強張った。


サイトー

「まっちゃん……ひとつ、聞いていいかい?」


魔王

「なんじゃ」


サイトー

「魔領域は平和だった……それに、ここ最近、人間と魔物の争いは減ってきている。

当然、魔王のまっちゃんが関係しているんだろ……なぜだ?」


魔王

「うむ……それは……」


サイトー

「人間の俺には、言えないか?敵だからな……」


魔王

「そういうわけでは……プライベートなことなのでのぉ」


思いもしない答えに、

サイトーは少し笑いそうになってしまった。


サイトー

「ふっ……プライベートなこと、ね」


魔王

「まぁ……お主には話してもいいかの……」


サイトー

「いいのかい?」


魔王

「うまい酒の前では、饒舌になってしまうのでな……」


魔王は、

少し寂しそうで、

だが少し嬉しそうで、

慈愛に満ちた表情で話し始めた。


魔王

「まずは……セイラとの出会いじゃ……」


こうして魔王は、世界征服より先に、プライベートを語り始めた。


話は長くなり、

魔王とサイトーの二人は、

魔女ママに店から叩き出されたという。


――――――――――

第一部 完

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ここまでが第一部です。


次は、過去の話になります。


よろしければ、ブクマや評価で応援していただけると励みになります。

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