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第13話 スライム君とピンクスライムちゃん

今回は、スライム君の恋の話です。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

その日は冬に似つかわしくない、暖かい日だった。スライム君はたまの休日を使って、近所の森を散歩していたのだがーーー


スライム

「ちっ迷ったぜ」

スライムは迷っていた。

そして、ひとしきり歩いたスライムは、見覚えのない泉にたどり着いた


スライム

「こんなところに泉なんかあったんだ…てゆーかどうやってきたんだ…」


????

「あなた…」


スライム

「ん?」


振り返ると、そこにはピンク色のスライムが佇んでいた。スライムはピンク色のスライムを瞳に捉えた瞬間、体の色が紫に染まった


????

「きゃ、大丈夫?」


スライム

「えっ?な、何が?」


????

「青い体が急に紫色に…」


スライム

「あっ大丈夫!大丈夫!気にしないで!!…それより君は?」


ピンクスライム

「私?私はピンクスライムっていうの。あなたは?」


スライム

「僕はスライムっていうんだ」


ピンクスライム

「スライム君は何をしてたの?」


スライム

「散歩してたんだけど…迷っちゃって…」


ピンクスライム

「そうなのね…実は…私も…」


スライム

「そうなんだー…じゃあ一緒だね!」


ピンクスライム

「一緒?」


スライム

「あっ、ここにたどり着いた理由がさっ…

二人とも迷ったんだなぁって!」


ピンクスライム

「ふふ」


スライム

「えっ?どうしたの?」


ピンクスライム

「スライム君が何だか楽しそうに話すスライムだなって思って」


スライム

「ははは、そうかな?」


ピンクスライム

「うん。私、不安がどこか行っちゃった」


スライム

「よ、よかった。ところで、ピンクスライムちゃんは何をしてたの?」


ピンクスライム

「私は、お花を摘みにきたの」


スライム

「そうなんだ?飾るため?」


ピンクスライム

「ううん。食べるため」


スライム

「えっ!?食べる?」


ピンクスライム

「うん!美味しいの!揚げ物にすると」


スライム

「そ、そうなんだ…ははは」


何気ない会話が心地よかった。そんなスライムの体はほのかに紫がかっていた


スライム

「それにしても、ここどこなんだろう」


ピンクスライム

「そうね、家からそんなに遠くない筈なんだけど…」


スライム

「そうだ、この泉来たことある?」


ピンクスライム

「ううん………そういえば…」


スライム

「心当たりある?」


ピンクスライム

「うん…おばあちゃんから聞いたんだけど…《魔っ池んぐ》っていう名前の泉があって…その泉には結ばれる二人だけが辿り着けるって…」


ピンクスライムは、体をさらにピンクに染め上げながら言った


スライム

「…そ、それだよ!」


ピンクスライム

「で、でも…」


スライム

「でも?」


ピンクスライム

「おばぁちゃんボケちゃってるから…」


スライム

「…そうなんだ」


ピンクスライム

「うん…………」


スライム

「…………」


二人の間に、心地よい気まずさが流れていた


スライム

「…そ、それよりさ!よく見たら凄い綺麗な泉だよ」


ピンクスライム

「…本当ね、不思議と心が奪われちゃうわ」

そう言って二人が泉を覗き込むと、泉がほのかな紫に光りはじめた


ピンクスライム

「何だろう…ふふ、さっきのスライム君みたい」


スライム

「えっ?こんな色だった?」


ピンクスライム

「うん。こんな色だった」


スライム

「照れると、あんな色になるかもね…」


ピンクスライム

「…なんで、照れてたの?」


スライム

「うん…まぁ…実は、ピンクスライムちゃんを初めて見た…」


スライムがそう言いかけると、《魔っ池んぐ》が、激しく光り始めた


スライム

「わっ!」


ピンクスライム

「きゃ」


激しい光は、二人を包み込んだ


スライム

「…ん、あれ?ここは?あっピンクスライムちゃん大丈夫?」


ピンクスライム

「う、うん、大丈夫だよ。あれ?泉がなくなってる」


二人が気が付くと、よく見知った丘にいた


スライム

「さっきの泉は何だったんだろう…」


ピンクスライム

「ふふ、本当に《魔っ池んぐ》かも」


スライム

「えっ?そんな」


ピンクスライム

「あっ、スライム君照れてる?体が紫だよ」


スライム

「て、照れてないよ!体の青色と夕焼けの赤が混じっだけだよ!」


ピンクスライム

「ふふ…そういうことにしておくね」


紫色に染まったスライムを見て、ピンクスライムはいたずらに笑った


スライム

「ピンクスライムちゃん…また…会えるかな?」


ピンクスライム

「うん!また、お散歩しましょ」


スライム

「約束だからね!」


ピンクスライム

「ふふ、約束ね…それにしても」


スライム

「どうしたの?」


ピンクスライム

「《魔っ池んぐ》って泉のネーミングだけど…《魔っ池》はマッチだから、ギリギリ許せるんだけど、《んぐ》って何だろうね?マッチングに語呂合わせたい為のむりやり感がすごいね」


スライム

「そもそも、池じゃなくて泉だしね。命名した人センスないよね」


ピンクスライム

「ふふふ」


スライム

「ははは」


ピンクスライムの食用花が咲く丘に、二人の笑い声がこだました


魔王城執務室ーーー


悪魔魔道士

「魔王様、魔王様」


魔王

「何じゃ?」


悪魔魔道士

「あの、幻の泉あるじゃないですか?あれ名付けたの、魔王様なんですか?」


魔王

「そうじゃよ。わしが初めて行った時につけたんじゃ」


悪魔魔道士

「へー、そうなんですね。ところで《んぐ》ってなんですか?」


魔王はセンスがなかった


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今日はクリスマスです。僕には全く無関係ですが。


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