第11話 大カタツムリ久しぶりに出社する
今回は、大カタツムリが久しぶりの出社です。
モヤモヤする感じで、書きました。
ゆるく読んで頂けると嬉しいです
魔王の怒りを買った大カタツムリは、傷が癒え、久しぶりに出社することになったーーー
大カタツムリ
(ふぅ、久しぶりの出社だ。みんな私に会えるのは嬉しいだろうな。今日はキメて行かねばな)
大カタツムリは、新調した殻を身にまとい、意気揚々と出社したーーー
大カタツムリ
「ん?君は…新人君かな?初めて見る顔だが」
オーク君
「は、はい。オークと言いまっす。失礼っすが、どちら様ですかっす?」
大カタツムリ
「おっと失礼。私は大カタツムリという者だ」
オーク
「あっ、あのっ…」
大カタツムリ
「私を知っているのかね?」
オーク
「噂はかねがねっす…」
大カタツムリ
「私は魔王軍の中心として、欠かせぬ人材だからね。知っていて当然だろう。まぁ私ぐらいになると、一声で10万の兵が…」
大カタツムリは味がないガムのような、中身のない話をひたすらに続けた。その時間は永遠にも感じ、オークは殺意すら感じたという
大カタツムリ
「それで私は、言ってやったんだ…」
オーク
「…………っす」
スッ
大カタツムリ
「ん?オーク君どこへ行く!?まだ話の途中だ…全く、最近の若い魔物は…あっ、あれは悪魔魔道士さんじゃないか!」
悪魔魔道士
「大カタツムリ君、お久しぶりです。」
大カタツムリ
「お久しぶりです。実は、昨日退院しまして…」
悪魔魔道士
「そうですか。あっすみませんが私忙しいので」
サササっ
大カタツムリ
「悪魔魔道士さん…久しぶりなのに、何だというのだ…妙に余所余所しいし…」
妙な、違和感を感じるカタツムリの前に、会話をしながら進んでくる、スライムとドラゴンが目に入った
大カタツムリ
「スライム君!ドラゴン君!お久しぶりです!」
スライム
「久しぶりっす」
ドラゴン
「久しぶりです」
大カタツムリ
「実は、わた…」
サササっ
次の言葉を発しようとした大カタツムリをよそ目に、何事もなかったように二人は過ぎ去っていった
大カタツムリ
「…」
大カタツムリは二人の冷たい対応に、打ちひしがれる。大カタツムリは一呼吸の間を置いた後、何かを我慢してとぼとぼと歩き始めた。そんな、大カタツムリの潤んだ瞳に、サキュバスが映り込んだ
カタツムリ
「あれは、サキュバスちゃん。サキュバスちゃーん」
ササササっ
サキュバスは大カタツムリの声を聞くなり、見たことがない早さで走り去って行った
大カタツムリ
「み…んな…みんな…酷いじゃないかー!久しぶりに会ったのに…………なんだこんな殻!!」
脱ぎ捨てた殻が転がっていく。今日の為に新調したド派手な殻が転がっていく様は、痛く滑稽に見え、大カタツムリの虚しさをより引き立たせた
会議室前ーーー
大カタツムリは、脱ぎ捨てた殻を引きずるように拾い上げ、重たい足取りで会議室の扉の前に立った
大カタツムリ
「……憂鬱だ」
ガチャ
大カタツムリが会議室の扉を開けた、その瞬間だった
パァンパァン
大カタツムリ
「ひっ」
一同
「退院おめでとうー!」
大カタツムリ
「み、皆さん?」
魔王
「みんな、お主のこと待っておったぞ」
大カタツムリ
「みんな…」
魔王
「わしも、皆に誕生日サプライズをやってもらって嬉しかったからな。お主にもやってやろうと思っての」
大カタツムリ
「魔王様……」
ワンパターンだった。だが、その不器用な優しさは会議室全体に広がっていた…
大カタツムリ
(私は…私は……皆から好かれているのだなぁ)
ヌメ
一滴のヌメリとした涙が、糸を引きながら床に垂れた。
魔王
「なんじゃ!?泣くほどのことではなかろう?……というかそれは本当に涙か?」
大カタツムリ
「これは…嬉し粘液です!」
魔王
「うーむ、キモいのぉ」
ーーーこうして大カタツムリの久しぶりの出社は、幸せのうちに幕を閉じた
……かに見えた。大カタツムリは気が付いているのだろうか……サキュバスちゃんがその場にいないことに……サキュバスちゃんが大カタツムリを本気で嫌っていたことを…生理的に……
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
モヤモヤして頂けたでしょうか。
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