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1.

突然タイトルが降って来て、がーっと書き終えました。


やっぱりふわふわしてると思いますが、よろしくお願いいたします。


「こ、ここまで、来れば……」


 見も知らぬ町の煤けた停車場で、私は漸く一息ついた。埃まみれで皺の寄ったオーバースカートをばんばん払って、何とか少しでも体裁を整える。

 

 行き当りばったりの乗り合い馬車を、多分、三回は乗り換えた。御者のおっちゃんに悪いと思いつつ、篭脱けもやった。踏んづけちゃったどっかのお婆ちゃんが目を剥いて何か叫んでたけど、ごめんして振り返りもせずに反対側の扉から転げ出て、行先も見ないで飛び込んだ馬車に揺られること数刻。どうも疲れ果てて寝ていたようで、いつの間にか凭れ掛かってしまってたおばちゃんにどつかれて起きたついでに、折よく止まった停車場で飛び降りた。おかげで、いまや自分でもここが何処だか判らない。


 停車場の片屋根の下から出て、知らない町をぐるりと見まわす。

 あまり高い建物が無い町だ。空が広くて、夕焼けが目に染みる。ああ疲れた。


 思い切り伸びたら腰と背骨がボキボキいって、次いでお腹がきゅうと鳴った。そりゃそうだ。前の食事が何時(いつ)だったか覚えてもいない。命からがら、着の身着のまま、取るものも取り合えず遁走してきたのだから。


 あの途方もない託宣の後、全財産を突っ込んだマジックバッグを準備していて本当に良かった。生業柄、野営も出来なくはないけれど、出来れば清潔な宿で安心して熟睡したいし、とにかく何か胃に入れて、目減りした体力を取り戻さねば。


 いつ、あの熊が追い付いてくるか判らない。


 ……想像したら身が震えた。いやいやいやいや、いくら奴が軍人でも、獣人でも、……執念深くて嗅覚に優れるだろう熊だっても、これだけ逃げれば多少は時間が稼げただろう。


 ―――稼げた筈だと思いたい。


 鳥肌の立つ腕を摩りながら、私は今宵の宿と食事を求めて、寂れた町に足を踏み入れた。



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