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二十六話 鹿眠る、闇の花園で 参

【聖樹海】に来るのは十年来であったため、彼女の心は最初であればとてもわくわくしていた。成長した姿に驚くのではないか、これからのことを話さなければ...

しかし、そんな期待はとうに無くなった。目の前にいるのは記憶の中とは違うただの魔物同然の姿であった。


鹿王は七王が一人である。七王はこの地、イニティウム大陸の七つの場所を守る王であり、神の使いとされている。

そして、鹿王は森を司る王であった。住まうは【聖樹海ザンクトシーザ】だが、すべての森を統べている存在である。


私が五歳にも満たない頃でしょう、父に連れられこの山へ入りました。当時は魔王はまだ生まれておらず、魔物すら活発どころか出会うことも珍しい程だった。そのためか、今よりも安全で危険度なんて物はありませんし、世の中は大いに繁栄をしていました。


森と言うには大きすぎる山と同等の場所で鹿王様が住むのは、この森でも下から見た方が早いほど山下にありました。鹿王様が住み始めてもう千年以上経っているので、この森は聖なる力を溜め込んでいました。鹿王様は穏便で、いつも動物たちに囲まれていたのを思い出します。鹿王様はいつもこの世が平和になるためにと話していました。


父と話している姿はとても美しく、これが王なのだと人間としての本能で感じていました。鹿王様がよくいたのは樹齢五万年程の大きな大きな大樹でした。枝もどれもが太く、いつも多様な鳥たちが唄い、憩いの場としていました。


「やぁ、来たのかい?聖王」

「久しいな。ステラ!やはりこの場所にいたのか」

父は屈託なく笑い、旧知の仲のように話した。

「当たり前だよ、聖王。私はこの場所が好きなのだから。ところで君はすっかり老けたね」


鹿王様は敬語を使わない事に対してなにも思うことはなく不躾な事を言う。


「その子が君の娘かい?可愛らしい少女じゃないか。目が君にそっくりだね。僕が七王だよ〜!まぁ、見えないか……」

「鹿さんが七王様なの?」


少女はキョトンと純粋な瞳で見つめる。


「そうだよ〜、君の父親の師匠的そんざい……」

「!?」


大の大人が目をかっぴらいて驚愕している姿は滑稽であろう。人と言うより鹿だが。

口をアワアワとさせ、二人は互いを見つめあった。


「聖なる子!!」

二人は声を合わせて喜んだ。

物心ついたばかり少女からしたら、子供のようにはしゃぐ大人1名と鹿を見て奇妙な気持ちだろう。


「聖王、君の血筋が無事受け継がれたな」

「あぁ、まさか受け継いでくれるとは……」

父は感動のあまり、涙を流していた。

「だが、君がここに来たということは…魔王か?」


魔王…その単語を出した直後、父の涙が引っ込んだ。それもそのはず、魔王は聖王の宿敵であり、世界の滅亡の象徴であった。今までに魔王に負けた事は無いが多くの人が悲しみ、絶望したという。


「予言が出ました。十年内に聖魔戦争です…多くの者が無くなるでしょう」

「そうであったか…」


二人は先程まで喜びを分かちあっていた事すら忘れるように真剣な顔をしていた。

鹿王は目を瞑ると途端に光だす。緑の優しい光に包まれた後、鹿王の姿は美しい男へと変わっていた。

まつ毛が長くかなり中性的な顔立ちで、肉付きはあまりなく、これが人の世に降りてしまえば途端に老若男女を魅了してしまうほどに。


「この姿をするのも、三十年ぶりと言ったとこかな」

そう言いながら、大樹に触れ、微笑んだ。

その笑顔は平和の象徴であろう。


「ステラ…私はもしかしたら…」

「分かっているよ。その時はこの子を聖王に育てよう」

「感謝する。ステラ」


悲しげな顔をする父を見て、幼いながら私は察してしまった。

きっと死んでしまうかもしれないのだろうと。

「リリス…これをお守りにしなさい。きっと君の旅を助けてくれるはずだ。無くさず持っておくんだよ」


そう言い、父はひし形の淡い水色の精巧な作りで、中には黄色に光る灯火がある首飾りを掛けてきた。



「…様。…め様!姫さま!!」

「!?」


気を失っていたようだ、体が痛む。花の香りが鼻腔を突き抜ける、横たわっている体を起こすと、シャーリャがボロボロの姿で未だ戦っていた。


ラクさんに頼み事をした後、見送っている隙で私は飛ばされ気を失っていたのだろう。

彼は戻ってこない…そう思いつつも、心の片隅できっと間に合い助けに来てくれると。父、国を失い、挙句の果てには守ると誓ってくれていた鹿王までもが私に牙を剥く。


これほどの喪失感はないだろう。これまでの旅路は鹿王の存在が大きかった。昔の記憶を心に握りしめ、きっと守ってくださるという期待を込めてここまで頑張ってきたというのに。


そう思ってしまうのも仕方が無かった。彼女はまだ15になったばかりの少女なのである。誰かに守られたいと思う年頃であった。彼女は魔王を打ち倒すのは聖王か勇者であるため、聖王が死んだ今勇者に頼むしか方法が無かった。


私は聖王になれないのだ…父は偉大であった。国の民に慕われ、魔王軍の襲撃にも前線を張り、国を守ってきた。しかし、私はどうだろうか城でビクビク震え、父の帰りを待つのみ。これが聖王と言えるのだろうか。

否、聖王には素質が必要であった。


まずは、七王が見えることが大前提であり、私は見ることができた。

しかし、聖魔法が使えなかった。聖王であるための、魔王に打ち勝つ為の、聖魔法が使えないのだ…


使えるようになるまで、何度も何度も試した。しかし、待っていた現実はなにも起こらない現状であった。だが、父はそれでも責めも、怒りもしなかった。


「仕方ない。まだその時じゃないんだ…諦めては行けないよ。きっと使える日が必ず来る」

そう言い、私は14の誕生日を迎えた。しかし、一度も使えた試しがない。父はそれでも失望すらしなかった。


父を誇りに思う分、私の無力さに嫌気が差し、何度も何度も己を悔やんだ。そのため、いつしか頑張ることをやめた。もう、なにも出来ない自分が嫌いになるのが怖かったのだ。その頃から、誰かに守ってもらいたいと願うようになった明確な理由はなくとも憧れていた。私には出来ない、やってのけないような事をする彼らに憧れていた。


そして、国を無くし、勇者を探しにやってきて出会ったのは明らかにも弱そうな少年であった。顔は平凡で、特にこれといった特徴もなかった。

それに、臆病で弱かったのだ。

私よりも


勇者ではなかったが、彼は異世界から来たもののようで、元の世界に帰りたいと願っていた。

勇者は異世界から来たものがなる傾向が高かった。幾度となく魔王を打ち破った彼らは称えられ、必ず旅をする。


運命なのか必然なのか、必ず皆この大陸を抜ける。そして、帰ることは無かった。

彼もそうなるのかと不安であった。しかし、私は闇ギルドの人達に追われていた。

その時、彼が颯爽と私を助けた。


その後、ギルドに保護され一息できるかと思ったが、闇ギルドに攫われたようだ。私は闇ギルドの仕事や残虐さは聞いたことがあった、金のためなら何でもする。

あぁ、死ぬんだな…それとも、私の貞操を奪われるのか…どの道死ぬ事になるのだろう。

そこで私の意識は事切れた。


次に目を覚ました時、私は病室にいた。シャーリャは号泣し、宥めるのに苦労したものだった。それから、私を助けてくれたと聞いた少年に会いに行くと、助けてくたのは彼だったのだ。


私は彼が起きるのを待っていた。

「んぅん?」

と言い目を開けた、彼は起きた直後とても驚いていた。その後、雑談をしているとおかしな点があった。

彼はこの件の記憶が無いようだ。シャーリャがその時の情景を説明しても、何一つ覚えてないようだ。


思い出そうと彼がした途端、かくんと首を傾げた。どうしてしまったのだろうかと思った時、雰囲気が変わった。彼の穏やかな雰囲気が今、とてつもない殺気へと変化した。


彼は確かに同じ少年であるが、何もかもが違った。彼の中の何かは二重人格と言った。無理やりに思えても、なにも言えなかった。確証がない云々ではなく、指摘すれば殺される勢いだったからだ…私たちは渋々了承し、ようやく消え、目を覚ました時には先程までとは嘘のように穏やかに弱々しくなっていた。


それから、彼とはもう会うことは無いはずだったが。聖魔戦争の現状、父の死を伝えに行ったところ彼とまた再開した。運命のように感じた。


それから、話は終わり、彼が私たちの旅について行くことになった。正直、どちらでも良かった。私はただ、鹿王様に助けを求めに行くだけだったのだ。だが、彼が入れば旅が楽になるだろうと思っていた、シャーリャ曰く、彼はとてつもないほど強いと言っていたからだ。しかし、蓋を開けてみれば弱すぎた。


期待を裏切られた気分だった。しかし、私が勝手に期待をしただけというのに…なんとも身勝手な女だろう。心配であったが彼と過ごしているとなんだか心が救われていた…濁っていた心が浄化されたのだ。彼に助けられたのだ。こうして今も諦めずに鹿王様と戦おうとしているのは彼との日々があったからだろう。


出会って、それも一月も経っていないのに救われた。だから、彼には生きて欲しかった。この人こそ勇者に違いないと思っていたからだ。だから、私は彼に逃げる為に、いや、少しの期待も込めて彼に頼み事をした。どちらにせよ、私は彼との出会いは本当に幸せだった。


こう話している間にも鹿王は、暴れ続け、それに私たちも応戦した。


「【炎祭・乱舞】!!」

剣に纏った炎を振り回し、鹿の体に攻撃を繰り返す。

しかし、ついたのはかすり傷程度だった。


「【聖光】!」

神聖魔法を打ち込む、しかし、聖魔法よりも神聖魔法は回復に特価スキルであるため、攻撃性は皆無だった。しかし、瘴気や呪いには効果があるためやむおえず打つ。鹿王様には並大抵の技は効かない。


「シャーリャ!10分は確実に耐えて!」

私は必死に叫ぶ。少し、遠くで戦っている彼女はもう既に多くの傷を負い、避けることすら厳しい状態だった。しかし、彼女はこちらを向き言う。


「分かりました。姫さまは後衛支援を」

「わかったわ!【汝、天に使えし子よ、かの者に癒しの光を与え給え。簡易回復(イージヒール)】!」


シャーリャの体は淡い緑で包まれる。神聖魔法、然り、回復魔法はとてつもないほど高難易度であった。魔法陣を展開し、特定の他者に向けて打つ。誰彼構わず打つのであれば難易度は下がるだろう。それでも、回復魔法の魔法陣はただの魔法とは違い神の恩恵を受けなければならない。神の恩恵を感じることが前提であり、詠唱が必ず必要だった。


簡易的な回復魔法であれば、少しの詠唱と短期的な圧倒的集中力があればかけることは容易い。しかし、効力は切り傷や疲労の回復程度の効力しか無かった。


「ありがとうございます。【聖流・園】!」

間合いに入り、体を一回転し、円状に攻撃を与える。これにより、死角からの攻撃も防いだ。しかし、鹿王の攻撃は止むことはなく、更に蹄の召喚速度が増した。


「【顕現せよ、火を司る精霊よ、我に焼き尽くす一筋の矢を。火弓】!シャーリャ!!」

詠唱を唱えると、本から炎でできた弓が現れる。しかし、触っても熱くはなく、火傷もしない。それを、鹿王へ向け、弓を引く。彼女に当たらぬよう、合図する。彼女は颯爽と後ろへバックする。


放った弓は鹿王へと一直線へ進み、命中した。火が一点を焼き尽くすまで燃える。しかし、徐々に炎が薄れ消えた。


「やはり、普通の攻撃魔法じゃ効果は無いですか…」

「姫さま…やはり、ここは一度撤退を…!」

「ここで、やらねば誰がやるのですか!シャーリャ…鹿王様に気を取り戻して貰わねばこの大陸は終わります!!」


声を荒らげる。久々に荒らげたため、息切れが起きる。彼を信じず、私に何が残る。私は焦っていた…


こうして戦い続け、10分が過ぎた。やはり、無理だったのだ…彼には。

私は酷く落胆した。王子様などいなかったのだ、ただの物語の空想で、そんなものどこにもないのだ。そんなことは分かっていた。


勇者は私の元へは現れない…

聖王は勇者と同じ立ち位置だ。彼がいない今、可能性がある私がやるしかない…瘴気がある今、ラクさんとシャーリャは見ることができている。実際に見れるのは私だけなのだろう。これが定めなのだから。


しかし、そんか思いがあっても父のように強くは無い。強くなるために励んだことがないのに、どうやって父の師匠を倒せと言うのだ…


私たちは力尽きた。捌ききれない程の蹄…私たちは幾度となく吹き飛ばされ、体はもう立ち上がることすら不可能だった。鹿王が近づいてくる。

あぁ、死ぬのか…父の意思も継げず、私の願いすらも叶わず死ぬ。


だが、彼が生きてくれるのであればそれで良い。私の最後の出会いが彼でよかったと心の底から思った。

こんな世の中、クソ喰らえですね…


「姫さま!!」

声が聞こえた。シャーリャじゃない声が。それは、男性的な声であった。力を振り絞り、声のする方を向く。

ラクさんだ…!


自然と涙が出る。しかし、今のままでは彼も死んでしまう。だから、最後の力を振り絞り、逃げるよう促す。しかし、彼は以前の彼ではなかった。


臆病な彼では無かった。手には浮き袋を握り、僕がやりますと強く言う。あぁ、魔王を倒す勇者じゃなくても、彼が私の勇者なのだ。


彼に浮き袋の使い方を教え、彼は回復に専念するように伝えた。彼ならやってくれる…一度叶った期待をもう一度だけ期待する。


お願いします、ラクさん。鹿王様を救ってください…

そう心で願い、彼を見送った。


「【――聖なる御座より降りし慈光よ。

 命の名を記す神よ。

 汝の息吹をここに、折れし魂に注ぎたまえ。

 痛みを封じ、傷を閉じ、血潮を澄ませ――治癒(サルヴァーレ)

詠唱を唱えると、魔法陣が私たちに現れ、朝日の光にも負けないほど黄色く輝く光に覆われる。腕や足についた抉られた傷や中で酷く損傷した骨が治されていき、動くことすら出来なかった疲れも段々取れていく。しかし、それでも鹿王との戦いで受けたダメージが大きすぎ、回復までにまだ時間がかかる。


その間、彼の無事と成功を祈るしか無かった。

昨日に投稿したかったのですが、予定が忙しすぎてこんな時間になってしまいました。ラノベを漁り読み、今文書の構成を学んでいます。良いラノベ作品があれば教えて下さい┏○ペコッ

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