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二十一話 強さの始まり

「楽よ、起きよ。起きぬか」


そんな声が聞こえ、もう朝かと思い、目を開けると人影があった。


それに、先程までの豪華な部屋はなく何も無い真っ黒な空間が広がっていたが、暗いという訳では無い。

あ、夢かと思い。もう一度眠りにつこうとすると。


バッコーン!!と頬を殴られた。


「いったぁぁぁぁーーい!!」

「ようやく目が覚めたか楽」

「殴ることないでしょう!?」


頬の激痛から目を覚まし、殴ったのは誰かと見やると知らない男が立っていた。

誰だこいつ?ここはどこだ?どっかで聞いた覚えのある声......


「お、お前は!あのとき、黒い影に包まれていた!俺を叩き起した人型!」

「人型というより、人間だがな」

「二回も暴力で起こしやがって」

「目覚め、いいだろ」


これが一番いいと言わんばかりのドヤ顔であった。

腹立たしいのはそれを悪気なしで語っているところである。こちらも殴り返そうかと考えたがやめた。


俺は、なぜこんな所に、、、

この空間に来てから疑問に思い続けていることを問いかける。


「誰なんだお前は。そしてここはどこなんだ」


「俺はお前のもうひとつの魂と言えばいいのか。そこら辺は曖昧なんだすまない。ここは虚空、魂が存在する空間?とでも思っててくれ」


「た、魂?」


謝罪の意を込め、下を向いた。曖昧と言われるが1番気になるがそこを問い詰めても何もならないため。俺はこれ以上聞かなかった。


この虚空と呼ばれる場所には、二人以外誰もいなければ物すらない。

無限に続く地平線。

それに、ここは暗いと言えば嘘だと言えるし光があるかと言われれば違う。ここは考えるほど意味がわからない空間だ。


「で、要件はなんです?」


「お前は弱い!!」


「へ?」


急な罵倒に俺は腑抜けた声がでる。

最近、弱いと言われてばかりな気がする。

仁王立ちで腕を組む、この男に拳をあげたい気持ちでいっぱいだった。


「だから、俺はお前を鍛えることにする」

「え?」

「職業選ぶなら剣士になれ。」

「魔法使いたい、、、」

「はっ!今の弱さで魔法士を選ぶのは阿呆だぞ?」


男は鼻で笑う、理由を尋ねてみると。


異世界に来たら魔法を使いたいと感じる人は多いだろう。

しかし、魔法は才能が無ければ強くなることは難しい役職だった。この世界では剣は努力、魔法は才能と言われるほど魔法には才能が重要視される。


しかし、そう言われるのは縦型社会の上に立つ貴族や王族で言われていることだ。


実際、魔法の才能はなくともある程度努力すれば強くなれる。しかし、限界があった。才能なきものがたどり着ける高みはCランク冒険者までと言ったものだろう。


「魔法は現状強くなりにくい。知ってるか?お前のユニークキャリア【無職】はどの職業もどこまでも扱える。」

「それは存じてますよ。たしか、職業を変更すると レベルがリセットされたはず」


「そうだな。職業を変更するときは、レベル1からやり直しとなるが、ある程度ステータスが引き継がれる。魔力量が少ない今、魔法で強くなるのは無理だ」


「なるほど、剣士だと強くなれるってことですか?」

「魔力と腕力の上がり方は腕力値のほうが増えやすい。それに俺は剣士であるから強くなる方法を知っている」


強くなるのは早い方がいいと自分でもそう思う。俺は意を決する。


「本当に強くなれるなら、俺は剣士になります!俺を強くしてください!!師匠!!」

「いい心構えだ、では早速。ほら剣だ」


何も無い空間から木刀を取り出す。

刀?どこから、、、?と不思議に思うがこれ以上ややこしくするのは辞めておこう。

木刀を受け取り、構える。


「なぜ構える?お前はそこまで行けるほど強くないだろう?」

「え、、、構えることすらダメなんです?」


「今から俺の流派を扱うからな。応用に入るなど許さん。まずは説明からしようかね。流派はどの剣士もがひとつはもつものだ。アンタの騎士も使ってただろう?流派の名前は知らないがな」


「そういえばそうですね」


「最終的にそれを使えるようになるのが目標だな」


あのかっこいい技を使えるようになるという、男なら誰しも憧れる技。やる気がすこぶる出てくる。


「まず、座禅からやな」

「え?す、素振りは、、、?」

「早い!」


剣を扱うのに集中力が大切なのだとか、長くなりそうだ。

足を組み、心を無にする。

───────そうい


「てい!」

「いってーーー!」


ふと思ったことを考えたら、すぐさま肩にどこから取り出したか分からない木の板を叩きつけられる。

肩がヒリヒリする。


「な、なんでわかった?」

「感覚共有。お前とは魂で繋がってる。第六感まで分かるぞ。考えてることは分からんがね」


「お、俺も出来るってことっすか?その感覚共有ってのは」

「座禅が出来ればな、感覚共有を出来るようになってもらうためにしてるんだこれは。教えるのが楽になるからな」


楽するためにしてるのか、、、めんどくさいと思ったが、仕方ないと腹を括る。

それから、俺は雑念が出る度に叩かれた。あれから、数時間はたっただろうか。


「待ってください。そろそろ、朝かも!俺、教会に行かないと、、、」

「あ?逃げようとしてるだろ」

「いや──違いますよぉぉ」


数時間かけても何も成果がでないため逃げようとしていたが、バレたみたいだ。

いつの間にかお坊さんみたいな格好になっていた。服的に仏教なのだろう。

そういや、こいつ日本すぎない?てか、魂っていつからあったんや?あー、ややこしい!

考えるのをやめた。


「何か言いたげな顔をしているが、まぁ気にしないでおこう。しかし、残念なことに虚空の外は今やっと一時間経った頃だな」


「は?一時間!?な、何故に?」


「魂の空間と外界の時間は全く違う。魂世界で一時間経ったなら外界は五分ぐらいだろう」

「つまり、十二時間も座禅してると?」


そういうことになるなと言い、頷いた。


「じゃあ、俺十二時間も集中してたんか!すげーな」

「なかなかポジティブな心持ちだな」


長時間の修行なのは彼の想定通りなのか特に何も感じていなかった。

空間が違えば時間軸も違うのは知ってる人もいるだろう。


実際、俺も知ってはいたが自分がその体験をするとは思ってもみなかった事だった。


「まぁ、時間はたっぷりある。できれば、朝になる前には出来るようにはなって欲しいところだ」

「起きたら気疲れしそう」


「言うのを忘れてたが魂と脳は全然違うからな。ここでの記憶は起きたない。多少起きた時に違和感があるだけでな」


「え?じゃあ、座禅とか修行の意味はないんじゃ?」

「魂に記憶されるから、虚空に入ってくれば思い出すぞ」


魂と脳の容量はかなり違い、記憶の入りは脳から魂への一方通行らしく魂で記憶されたものは脳へは映らないらしく、虚空で起きたことは何一つ覚えていないのだとか。


しかし、感覚共有が出来るようになればここで染み付いた感覚は目を覚ましても習慣のように違和感を感じることも無かった。


「さぁ、感覚共有が出来るようになるまで座禅だ」

「感覚共有をできるって言うのはどの時に分かるんです?」

「そうだな、、、目を瞑っているのに視界がクリアになった時だな」


まぁ、なんとなく言いたいことは分かった。

それから、目をまた瞑り、連日連夜(れんじつれんや)も精神を統一をし続けた。

これは一種の拷問に近──この拷問は非常に苦痛である。結跏趺坐(けっかふざ)により足は痛み、背後からの圧と暴力に耐えるという、ここは地獄であった。


こんなことが続いた、こんな事で本当に感覚共有は目覚めるのだろうかと疑いの目もで始めた頃。


その時は来た──


閉眼によって、暗闇に包まれていた眼前は、瞬間、眩い光に覆われ、目の前には黒髪があった。


俺の目の前に人?俺は地面に座っているはず、、、

座っているはずなのに、目線は立っている。目線は自分でないことは確かであり、そうなると答えは決まっている。


「見えました。」


ただ、その一言で十分だった。

背後から、ようやくかと言う声が聞こえた。感覚共有ができるようになったのだ。


「ようやく、基礎の基盤ができたか。これから、基礎に入るとしようではないか」

「基礎の基盤、、、?」

「あぁ!」


この途方もない時間で手に入れたものは基礎の基盤という現実に戸惑う。基礎の一部と認識していたため絶望はより大きい。


立ち上がっていいぞと言う声が聞こえたが、あまりの衝撃に数秒立てずにいた。

心を落ち着かせ、立ち上がる。


「おっと、、、立ちくらみが」

「ずっと座っていたからだろうな。まぁ、時間は有限だ。基礎と行こうか!」

「は、はい!」


さっそくか!と思い、剣を構えようとした瞬間に俺の手から木刀が砂になって消えた。

消えたんだが、、、?


「剣は使わん。俺の流派では剣は道具では無い、花だ。丁重に使えるようにならねばならぬ。そうやすやすと剣を振れると思うなよ。青二才」


「マジかよ──」


「マジだ。さて、俺の流派は使えるようになるまでの特訓を花を育てる過程で例えているでな?基礎は土壌作り、次に種を植え、大事に育てる。この過程を超えて花咲くという訳だ。これからするのは土壌作りだ」

「土壌作り?というと基礎固めですかね?」


コクリと頷いた。その後、彼が無から取り出したのは一輪の花凜の花。

それを、俺に手渡すと彼もまたその花を手に取る。


その花を両手で優しく握り、目を瞑った。

その際、閉じていた花は美しく開花した。

綺麗だ、、、

蕾だった花は、見たこともない美しい花は姿を現し、一瞬で心を虜にした。


「これを咲かせてもらう」

「は」

「そんな顔をするな、この花が咲いた時お前は十分な強さを手に入れられる」

「どのくらいです?」

「現冒険者ランク相応の強さだな」


そんなもんなのかと変に入れていた力が抜ける。

でも、それならまだ足を引っ張らずに済むか、、、

俺は見せてもらった通りに、優しく握る。しかし、綺麗に咲くと思っていた花は咲かないどころかみるみる萎んで、やがて枯れた。


「想定内だな。とりあえず、朝が来るまでには枯れない時間を三分にすることだな」

「この花ってどうしたら咲くんです?」

「気を送る。よくあるだろう?少林寺とか拳法とかで気というものがね」


魂が持つ力、【気】、内なるパワーとも言われるそれは己を強くするのに必須な力である。

と言うが、気というものがよく分からない。内なるパワーと言われても、ピンとくるものなどない。

そんな感じたこともないものをどうしろと不満に思っていると、俺の前にいる男は右手を握ると、静かに手に集中する。


すると、男の手はオレンジ色に輝く。

「これが気だ」

それだけ言い、目線でとりあえずやれと言われているような気がしたため、なんとなく集中してみることにした。

そんな説明で感覚どころかましてやコツなんて掴めるはずもなく、ただ時間だけが散った。


手に取った花は枯れた。美しい蕾は一瞬にして灰色へと変化した。


こんなループを繰り返し、外界は朝を迎えた。途方もない時間もついに終わりを告げた。何の成果も得られるずに、、、


「次に会うのは、夜という草原に一輪の月の花が咲く時。強さはそう簡単に手に入るものでは無い」

「わかってますよーだ!そんな洒落た言葉で言わなくともね。」


虚空は徐々に黒から白へと色が移り変わり始めた。

空間は外界とリンクしており、夜が明けると分かるほどにこの空間は明るさを取り戻していく。

それと同時に意識も徐々に遠のいていく。


絶対に強くなるんだ.....!!そして、俺は家に帰る!!


そう思いを強固にしたところで意識は切れた。

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