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第五章開始 色付きの花束と透明な花  作者: 絢奈
第四章 運命の奴隷
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ルマ対テッタ

 





「ターレア…知っていたのか?ティアがティリアの姉だという事を…」


「いや…初めて顔を見るまでは知らなかった…顔を見た時、あまりにも似すぎてる容姿と()()()()()()()そうなんじゃないかとは思ったが…これも()()()()()


「そうか…」



 幸せそうに眠るティアとティリアを見つめるターレアとアーヴェントは興奮しきっているクルエラに視線を移した。



「何よあのティリアちゃんの魔法…!!早く起きて…!!起きたら根掘り葉掘り聞くわ…!!」


「…アーヴェント、あの魔法について何か知ってたりは?」


「…するわけないだろう…」


「そうだよな……とんでもない人達に敵対心を持たれてしまったな……」


「…試合が終わった後、一緒に謝るから今はルマの応援をしよう」


「ああ…」



 ………



「…先程私の仲間達がテッタ達に相応しくない言動をした事を謝罪する。申し訳ない…」


「……僕達は我慢してました。先に仕掛けたのも先に酷い事を言ったのもそっちです。ユリ先生がルマさんの仲間を悪く言った事については僕は謝りません。それだけ怒っていますから」


「…ああ。その怒りを少しでも静められる様に胸を貸すつもりでいる。…ただ、先に仕掛けたとはいえこちらも少し思う所がある。タダで胸を貸すつもりはない」


「わかってます。ただ、僕はルマさんの様に心が広くないし、最初からルマさんの思う所を解消させるつもりもありません。ルマさんが悪いわけじゃないですが僕の親友を貶した以上…覚悟してください」


「ああ。…ただ全力でお互いの意地を通すのみだ」



 お互い絶対に譲らないと決めて視線を切り、開始位置についたテッタはフェイナからもらったガントレットを付けたまま()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()曲芸師顔負けの手つきでアンドロメダを華麗に抜き放つとルマは一纏めにしていた髪を解き…



「我が血に宿りし獣よ!!我が呼びかけに答え我に気高き誇り高い力、獣神メギラの加護を与えたまえ!!我が名はルマ!!百獣の王の化身なり!!」



 赤い制服を脱ぎ去り叫ぶと鍛え抜かれたルマの身体は一回り、二回り…テッタの倍以上、優に2m、もう少しで3mに達するのではないかという体躯と四肢と顔付きが獅子のそれに変わり、ギラギラとした歯を打ち鳴らし威嚇するがテッタは臆する事無く一歩前に出てアンドロメダをルマに向け睨みつける。



「ガルルルルル…テッタ…お前もビーストならそんな物を捨てて早く変われ…!」


「…悪いけど僕はもうそんな見てくれだけに怯えないし、どんな強敵だろうが決して折れたりしないよ。それに僕の血統魔法は種族由来の獣化じゃない。このまま戦わせてもらうよ」


「グルル…まさかハーフか…?」


「ハーフだったら何?純血のビーストみたいに五感も身体能力も劣る、第六感すら持ちえない雑種、劣等種だって貶したくなった?」


「グルルルル…」


「何も言わないって事はそういう事だよね()()。結局は君も口では高潔で潔白を謳うけど純血かそうじゃないかっていうちっぽけな事に囚われてる。心の何処かで純血の俺が僕よりも優れてる、まだ自分達の仲間の方が優れてる、ティリアの勝ちはまぐれだ、ティアさんが負けたのは何かの間違いだとか思ってるんでしょ?」


「ガルルルルッ!!貴様…!!!」


「感情を剥き出しにすれば僕が謝るとでも思った?…()()()()()()…!()()!!親友達を貶したあいつを!あの女達を絶対に許さない!!!そしてお前もだルマ!!!気高く誇り高いと自惚れてる純血のお前を誰にも望まれず生まれ!!地べたに這い蹲って醜く生き恥を晒し続け這い上がった…引っ張り上げられた劣等種の力でお前を倒す!!!!」


「ガルルッ!!!イイダロウ!カカッテコイ劣等種!!!」



 今までのテッタからは考えもつかない怒気を孕んだ声とルマの咆哮が交った時、



「第二試合、ルマ対テッタ…試合開始よ!!」


「っ!!グルアアアァァァ!!!!」



 クルエラの声を皮切りにルマは四肢で地面を踏みしめ一息でテッタへ瞬発し、闘技場の床がルマの振るった拳で砕けた…。



 ………



「…カッコよくなったじゃないテッタ。あんなに想われてるのよ?親友君?」


「…はい。恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちでいっぱいです」


「ふふ…ねぇ唯織?テッタって何の獣人だと思うかしら?」


「え?…猫じゃないんですか…?」


「私もさっきの気持ちのいい啖呵の切り方と気迫を見るまでは猫だと思ってたのだけれど…あの()()っぷり、文字通り()()かも知れないわ」


「黒豹ですか…?」


「ええ。…しっかり見ておきなさい唯織。テッタはこの試合で見違える程に化けるわ」


「…はい」



 ………



「グルアァ…威勢だけとは興ざめダ…!!」



 地面と一緒にテッタを砕いたと確信したルマは不機嫌そうに喉を鳴らすが…



「ルマ、お前の目は節穴か?」


「グルアァ!?」



 地面を割り砕き足を埋めながらもしっかりとフェイナからもらったガントレットでルマの一撃を受け止めたテッタはそのままルマの拳を斬りつけ痛みに手を反射的に引いたルマに笑みを浮かべた。



「そんな拳じゃ僕は折れないし膝もつかないぞ。純血の底力を見せてみろよルマ」


「ッ!!!!ガアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!」



 テッタの足が地面に埋まっている事をいい事にテッタの挑発で頭に血が上ったルマは一撃一撃が金属を巨大な槌で殴りつけた様な音を生み出す拳を一心不乱に打ち付けていくが…



「…これが()()()()()()だ。…ルマは緑と茶の魔色…獣人族が最も使いやすい色…想定通り…」


「ガアアアアアアアアッッッッ!!!」



 ルマの破城槌の様な拳を涼しい顔で受け止め魔力を吸い続けているアンドロメダの伸びをした猫の模様が緑と茶色に変わり、頭の上に花も咲いてる事を確認すると受けるだけではなく拳にアンドロメダを突き立てていく。



「どうしたんだルマ?お前の気高き誇り高い攻撃はこんなものなのか?本気を出さないと自慢の拳がズタズタになるぞ?」


「ッ!?ガルウウウウウウウ!!!!!!」



 完全に礼儀正しかったルマは獣化の利点である五感強化、第六感発現を全く活かせずにテッタの挑発に怒り狂い拳と蹴りの乱打をお見舞いするが何故かテッタには通用せず、徐々にズタズタになっていく手足を庇う為に大口を開けてテッタに嚙みついた瞬間、



「…悪いけど冷静さを失った時点で勝負ありだ。本気を出すまでもなかったな。獣化しない方が強そうだったよルマ」


「アガッ!?」



 鋭く尖った牙を掴み、鉄を噛んでいるのではないかと錯覚する程の力強さをテッタの細腕でどうやって出しているのかすらわからずルマは強化された五感で()()()()()()()()()のを感じ吐き出す為にテッタと距離を取るが…



「もう手遅れだルマ。お前の敗因は獣化で獣に近づいた事による短絡的思考で魔法も使わず拳を振るい、弱者だと決めつけた驕り…何より大切なモノを守りたいっていう気迫が俺よりも弱かった事だ」


「っ!?ガアアアアアアァァァァァァァァァァ!?!?」



 冷めた声色でアンドロメダを鞘に納めると突然ルマが苦しみ出して喉を搔きむしり…



「死にはしないけどしばらく苦しいからご自慢の気高く誇り高い精神で耐えてくれ。…天まで伸ばせ、『臆病者の求める手(ラーシュ・ア・テッタ)』」



 アリアの様にテッタが指を鳴らすとルマの巨大な口から顎が外れんばかりの()()()()()()がルマの身体という闇から外という光を求めて這い出てきた…。



 ………



「…えげつないし更にカッコよくなったわね…」


「植物の蔓…テッタの血統魔法…そうか!植物の種に土の魔法と血統魔法で生命を与えて成長を促して意のままに操ってるのか…!」


「スイカの種とか飲み込んだらやばいじゃない…」


「…か、感想がそれですか…?」


「でも実際えげつないわよ?ご飯とか食べてて種を混ぜられてるのわからずに食べたら終わりよ?」


「ま、まぁ…そうですけど…」


「じゃあ唯織?細身のテッタが何であんな強烈な攻撃を食らって何とも無かったのかわかるかしら?」


「…確かに不思議です。ダメージが無くても体格で吹き飛んでもおかしくないですし、脚が埋まってるので衝撃も逃がせないと思うんですが…」


「私はあの植物のおかげだと思うわ」


「植物ですか?」


「テッタの制服が少し盛り上がってるでしょう?多分制服の下に植物を隠してると思うわ」


「制服…」



 しぶとくもがき苦しむルマを冷めた目で見つめるテッタの制服を見つめると確かにテッタの後ろ側が何かが入っている様に不自然に盛り上がっていた。



「…本当だ。よく気付きましたね…?」


「私はあなた達の先生よ?…多分唯織が推察した通り種に血統魔法を使って成長させて土の魔法で性質を変化させてるはずだわ。とんでもない硬度と強度の植物製外骨格…しかも意のままに操れるからどんな硬さでも身体の動きは一切阻害しない…なかなかいいセンスしてるじゃない」


「すごいよテッタ…でも、僕はテッタのあの使い方が正しいとは思えないんですよね…テッタの速さを活かして腕力の補助を植物の外骨格で戦う方が凶悪な気がするんですが…」


「それはテッタも重々承知してるはずよ。多分フェイナとの訓練が印象が強すぎるのと、フェイナからもらったあのガントレットを試したかった…何より自分はもう折れないって事を証明したかったんでしょう」


「なるほど…テッタの憧れですもんね」


「そうね。きっとテッタはあなた達を守る最強の盾、守護神になるわ。ガンガン頼ってあげなさい?」


「はい…」



 見違える程別人の様に頼りがいのある男になったテッタに小さく拍手を送る唯織…そして、



「…第二試合、ルマ対テッタの試合はテッタの勝利よ!」



 ズンッと地面を揺らす揺れと共にクルエラの勝利宣言が響きアリアと唯織はテッタの元へと飛んだ。



「テッタやるじゃない?凄くカッコよかったわよ?」


「テッタお疲れ様。凄くカッコよかったよ?」


「…え?そう?…ふふ~ん!()カッコよく成長した?でもとっておきがまだまだいっぱいあるんだよね!」


「へぇ?ならそのとっておきが見れるのを楽しみにしてるわ。…そろそろルマの治療をしたいから口からにょろにょろ出てるのを何とかして欲しいのだけれど?」


「あっ!?」



 ルマの口から蠢く植物の蔦をすっかり忘れていたテッタが指を鳴らすと蔦は徐々に萎み…ルマの口元には小さな一粒の種が転がった。



「…ねぇテッタ?その種って何の種なの?」


「え?今日の朝食にデザートで出たスイカの種だよ?」


「…ほらね?危ないでしょう?」


「危ないですね…」



 そんな事を言いつつルマ対テッタの試合は危なげなくテッタが勝利を納めルマは気絶したままアリアの治療を受けるのだった…。



「何あの植物の魔法…!!知りたい…!!!」



 そしてクルエラは魔法オタクの血を更に滾らせていた…。

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