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第五章開始 色付きの花束と透明な花  作者: 絢奈
第三章 新しい風
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イメチェンの刑

 





「皆さん、おはようございますわ」


「おはようみんな」


「おはよう!」



 ようやく目的地である自分達の教室に辿り着き扉を開き中に入ると…



「お、おはようっ…ご、ござい、ます!」


「「「…」」」



 驚きながら挨拶を返してくれるすっかり雰囲気が変わったティリアとリーナと同じく雰囲気が全く違うシルヴィア達がじっとりとした視線を向けて出迎える。



「「え、えっと…」」


「昨日イオリさんとテッタさんが寮に帰って来なかったから怒ってるんですのよ。ちゃんと事情を説明した方がいいですわ」


「そ、そうだね…」



 肩にかかる髪を払い優雅に自分の席に着くリーナに小さく感謝しながらそっぽを向くシルヴィア達に近づく唯織とテッタ…。



「じ、実は昨日みんなが出掛けた後、リーチェのご両親に食事に誘われてニルヴァーナ家にテッタと一緒に行ってたんだ…」


「それでね…?リーチェのご両親が学園の事とかイオリの実力が知りたいってなって…朝まで話したり試合してたんだよね…」


「…はぁ、私の父と母ならあり得ますね…すみません、変に勘繰りました」


「そういう事ならまぁ…納得するけど…」


「でもいおりん?朝帰りするんだったら連絡の一つぐらいするべきじゃない?いおりんならいくら苦手な転移魔法でも寮に来て戻るぐらい出来たよね?」


「ご、ごめん…」


「テッタもだよ?あんな事があった後なんだから何かに巻き込まれてるかも知れないって思うでしょ?」


「ご、ごめんなさい…」



 まるで母の様に叱るシルヴィアに頭を二人して下げるとわざとらしい咳払いがシルヴィア達から聞こえる。



「…で?他に私達に対して言う事があるんじゃない?」


「確かに…気付いていても声に出すべきですね」


「気付かないとかありえないよね?」


「え、えっと、えっと…」


「「…」」



 頻りに髪を触り意味深な視線を送ってくる三人と顔を赤らめ短くなった前髪を手で隠すティリアに気圧されながらも変わった部分を口に出していく。



「し、シルヴィは髪が綺麗になったね?僕が手入れするより綺麗になってるよ」


「う、うんうん!キラキラしてる!」


「ふふーん!いおりんの手入れもばっちりだけどやっぱり専門の人にしてもらうと違うよね~!」



 唯織の努力の賜物で元から痛みが無かったシルヴィアの髪は太陽の光が反射する程の艶を持ちまるで絹の様な髪へと変わっていた。



「シャルはいつもストレートだったけどツインテールにしたんだね?髪も綺麗になってるしよく似合ってるよ」


「うん!すっごくいいと思う!」


「自分的にはちょっと子供っぽいかなって思ってたんだけど?まぁ、一日ぐらい雰囲気変えるのもいいかなって?まぁ、うん?」



 唯織とテッタの言葉に機嫌良くしたシャルロットは自分の艶があるピンクゴールドの髪を指に絡めながら悦に浸った表情を浮かべる。



「リーチェは随分短くしたね?長い髪も似合ってたけど短い方がリーチェらしくていいと思うよ」


「その三つ編みもすごくいい!」


「あ、ありがとうございます…」



 長かったオレンジの髪を肩の長さまでバッサリ切り、サイドにアクセントになる様三つ編みをしたリーチェは本音を明かした唯織にリーチェらしいと言われ顔を赤らめる。



「ティリアさんも随分バッサリ前髪切ったね?すごく似合ってるよ」


「うん!それにティリアちゃんの目、紫色で凄い綺麗だね!」


「あ、あああ、ありがとっ…ございま…しゅ…」



 口元がかろうじて見える程長かった前髪は眼鏡をかけた魅惑の魔眼が見えるまで短くなり伸びっぱなしだった後ろ髪も綺麗に整えられ肩に乗せる様小さくおさげになっていた。



「本当は服もみんなで買ってイメチェンした姿を夜二人に見てもらおうと思ったのになー?帰って来ないからなー?」


「「うっ…」」


「という事で…罰…じゃなくてみんながイメチェンしてるのにいつも通りのいおりんとテッタは可哀想だから…」


「「…え?」」


「はい、これがいおりんのでテッタのはこれね」



 ニヤニヤとした笑みを浮かべながらシルヴィアが空間収納から取り出した袋を唯織とテッタに渡すとティリア以外の皆もニヤニヤとした笑みを浮かべ…



「アリア先生が来るまでに着替えてきてね?」


「早くしないとアリア先生が来ますわよ」


「そうそう!早くしないと!」


「楽しみにしてますね?」


「「…」」


「が、がんばってくだ…さい…!」



 唯織とテッタは教室の外へと追い出された…。





 ■





「やっと見えてきたわね…万全じゃないけれど神眼を使わなきゃ問題なさそうね」



 目に巻いた包帯を外し万全とはいかなくてもようやく物を見れる様になったアリアは空間収納に包帯を仕舞い黒表紙を取り出すと教室から聞こえてくる賑やかな声に笑みを浮かべながら扉を開き…



「はいはい、出席取るから全員席に着いてちょう…やっぱりまだ不調なのかしら?」


「「……」」



 自分と瓜二つな唯織の姿とテッタの女の子らしい姿に自分の目を疑った。



「あれ?アリア先生見える様になったん?」


「本調子じゃないけれどね。…あなた達、随分雰囲気変わってるじゃない。昨日は楽しめた様ね?」


「まぁね~」


「で…これはどういう状況なのかしら?」


「昨日いおりんとテッタはリーチェの実家から朝帰りしてきたからその罰!」


「なるほどねぇ…ちょっとテッタ立ちなさい」


「は、はい…」



 恥ずかしそうに俯く唯織とテッタ…楽しそうに笑うシルヴィア達という状況を眺めながらテッタの元まで来たアリアは徐にテッタの尻尾を掴み上げる。



「うぇっ!?な、何するんですか!?」


「下着は男物なのね?スカートの下に尻尾を入れると尻尾でスカートが捲れて下着が見えるわよ?尻尾穴を開けた方がいいわね。尻尾穴を開けないで下にずらすとローライズでお尻が見えるからやるならちゃんとしなさい」


「は、はい…」



 女装に対してダメ出しされたテッタは顔を真っ赤にしてスカートを押さえ、白黒の狼もどきになっている唯織の元へ向かい肩を抱き寄せ意地の悪い笑みを浮かべる。



「へぇ?随分と女装が様になって来てるわね唯織ちゃん?髪の色も耳も尻尾もお揃いじゃない?可愛いわよ?」


「うう…」


「まぁ…シルヴィ達が唯織とテッタが帰って来ないって心配していたから今日一日は甘んじてその罰を受けなさい。いいわね?」


「はい…」


「よし」



 ぽんぽんと頭を撫でシルヴィア達が心配していた事を小声で伝えるとアリアは教卓に黒表紙を置き今日の授業について話していく。



「全員遅刻せず出席してるから出欠確認を省くわ。一年生の間は基礎体力や身体の使い方、近接戦闘を主に教えてきたけれど二年生からは魔法について学んでいくわよ。毎日頭が沸騰するんじゃないかって思う程に頭を使うから頑張りなさい」


「ついに魔法を学ぶんですのね…」


「そうよ。多分身体を動かしていた方がましだったって思う程きついわよ?」


「アリア先生のきついはきついじゃなくて地獄な気がする…」


「ならシャルのお望み通り地獄にしてあげようかしら?」


「ご、ごめんなさい…」


「私は既に身体を動かしていた方がいいと思っていますよ…」


「リーチェは魔法に苦手意識が強いだけでしょう?剣技に活かせる魔法もあるから頑張りなさい」


「僕は茶の魔色しかないから色んな魔法が使えるみんなが羨ましい…」


「何言ってんのよテッタ。あなたが今回の授業で一番伸びしろがあるのよ?」


「そ、そうなんですか?」


「逆に多くの魔法が使えるからこそ複数を上手く扱う事に目が向いて一つを極める事をしない…多芸は誰が見てもすごく見えるけれど誰も真似が出来ない程完成され極まった一芸には勝てないものよ」


「なるほど…!!」


「んで、今回唯織はみんなの発想を糧に自分の発想力を高めなさい。あなたは自由度が高すぎる故に明確なイメージを持たないと意味がないからね?」


「わかりました」


「シルヴィも今まで使ってきた魔法を更に昇華させるか新しい魔法を考えておきなさい」


「シルヴィアちゃんかしこまりー」



 必要な事を喋り終えたアリアは黒表紙に何かを書き込みパタンと閉じると笑みを浮かべ…



「んじゃ、魔法の授業の前にこの一年で何処まであなた達が成長したのか確認するから実力テストしに闘技場へ行くわよ。唯織達の()()()()()()()()()()()


「が、がんば…り、ますっ!」


「「「「「「ええっ!?」」」」」」



 驚く唯織達を無視して小さく両手で拳を握るティリアと一緒に教室を出て行く…。

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