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第五章開始 色付きの花束と透明な花  作者: 絢奈
第二章 友情
32/157

初デート

 





「お、お待たせしましたイオリさん」


「あ、リーチェ…」


「…?どうしました?な、何か変ですか…?」



 白と黒のワンピースに傷一つない真っ白のヒール、小さめのバッグを肩にかけたリーチェはいつもストレートにしているオレンジの髪を巻いたり三つ編みをリボンで括ったりととても可愛らしい格好をしていた。



「い、いや…いつもと雰囲気が違って…服も髪形もすっごく似合ってるよ?」


「っ…そ、そうですか?そういうイオリさんもいつも制服姿なので凄く新鮮で似合ってて…かっこいいと思います…」


「そう…かな?アリア先生にもらった服なんだけどね…」



 ゆったりとした袖の長い黒い羽織に黒のシャツ、ぴったりとした黒のズボン、黒い手袋、黒いブーツといういつも通りの黒ずくめだったが長い髪も毛先で括り胸の前に持ってくるという事もあって雰囲気はいつもと違っていた。



「とりあえず…そろそろ行く?」


「そ、そうですね!行きましょうか!」



 コツコツと唯織は足音を鳴らしカツカツと足音を鳴らしながらリーチェは王都巡りのデートを始める…。



「…メイリリーナ様、シャルロット様、決してお二人の邪魔をしてはいけませんよ?」


「わ、わかってますわよ!」


「う、うん…」



 そしてメイリリーナとシャルロットの尾行も始まった…。





 ■





「ここは人が多いね?」


「ええ、ここは所謂商店街…飲食店から服飾等色んな物が売っている場所ですからね」


「へぇ~」



 出店から威勢のいい声が響く道、それに惹かれた人達が色んな場所で物を買っていく商店街は流れる水の様な動きで人が蠢いていた。



「あ、リーチェ?はぐれると大変だから手でも繋ぐ?」


「っ!?…え、ええ…はぐれると大変ですしね…はぐれると大変ですから…」



 突然の提案に不意打ちを食らったリーチェは何度も仕方ないと自分に言い聞かせるように呟いて手袋をつけている唯織の手を握り返す。



「あ…意外とごつごつしてるんですね?」


「え?ああ…うん。ほら…僕が育った場所ってあんな森でしょ?それに剣とかも使うから…」


「そうなんですね…顔は可愛らしくて綺麗でもこういう所は男らしいんですね?」


「あはは…」



(初めて異性の手を触りましたがこんな感じなんでしょうか…手袋越しだからよくわかりませんが…意外とイオリさんの手って大きい…安心感ありますね…テッタさんも同じ感じなんですかね…指も長くて細い…)



「り、リーチェ?どうしたの?さっきから僕の手を揉んで…」


「っ!?な、何でもないです!!」


「そ、そう?…少し人が多くなってきたからもう少しこっちに」


「あっ…」



 顔を真っ赤にしたリーチェに首を傾げた唯織は時間が過ぎて人通りが多くなった道ではぐれない様リーチェを寄せると声を漏らして唯織の腕を抱きしめる。



「これならはぐれないと思うけど歩きにくくない?」


「大丈夫…です…はぃ…」


「そっか。じゃあ人ごみにいる間はしばらくこうしてて」


「はぃ…」



 唯織の何気ない行為にだんだん声を小さくしていくリーチェに…



「そこのお二人さん!串焼きどうだい!」


「串焼きですか…では一本お願いします」


「あいよ!毎度あり!」


「リーチェ?ほら、あーん」


「っ!?…あ、あむ…」


「どう?美味しい?」


「はぃぃ……」



 止めを刺すのだった…。





 ■





「…何なんですのあのイチャイチャっぷり…」


「う、うん…めっちゃ腕組んでる…」


「っ!?あ、あれ!!伝説のあーんですわ!!」


「っ!!い、イオリ君意外と大胆…でもいいな…」


「確かにあれは羨ましいですわ…」


「今度私もイオリ君とデート…」


「つ、次は私ですわよ!」


「ええ…?」





 ■





「あ、投げナイフ屋だ。やってみる?」


「投げナイフですか…私やった事ないですね…」


「教えてあげるからどう?」


「そう…ですね、ちょっとやってみます」



 円が何重にも描かれた大きな板が吊るされている出店を見つけ二人で近づくと小さい子供達が親と一緒にナイフを投げ、当たれば一緒になって喜び外れれば一緒に落ち込んでいた。



「すみません、投げナイフをやりたいんですが二人分いいですか?」


「おう、二人分だな?一人ナイフ三本で三投だ。中心に近ければ景品もあっから頑張って当てな。だが…かなり難しいぞ?彼女に見っとも無い所を見せちまうかもしんねーぞ?」


「ご忠告ありがとうございます。こう見えてナイフの扱いは結構慣れているので」


「そうかいそうかい。んじゃお手並み拝見と行くか」


「あはは…」



 筋骨隆々の如何にもな店主の怖い笑みに苦笑を返した唯織は渡された六本のナイフを観察して状態の良さそうな三本をリーチェに手渡す。



「はい、これがリーチェの分だよ」


「…ナイフなのに結構ずっしりしてるんですね?イオリさんが持ってるナイフとは大違い…」


「このナイフは多分だけど折れた剣とかをそのままナイフの形にしたり、色んな端材を集めて作られてるんだと思うよ?やっぱり投げナイフは消耗品だからいちいちちゃんとしたナイフを用意してたら大赤字だし」


「なるほど…」


「へぇ?このナイフを見てそこまで言い当てるとは恐れ入ったぜ。その通りだぜぼう…ず?でいいのか?」


「え、ええ…じゃあリーチェ?持ち方なんだけど…」


「は、はい…」



 にやにやしながら見てくる店主を無視して後ろから抱きしめる様にしてリーチェにナイフの持ち方を教え始める唯織…



(えっ!?ち、ちか…!手!手!!い、イオリさんの声が耳元で…!!な、何なんですかこれ…!!というよりさっきから店主は何にやにやしてるんですか…!!!)



「…チェ?リーチェ?大丈夫?」


「へ!?あ!はい!大丈夫です…」


「そう?投げ方は色々あるんだけど…一応簡単な方法は親指、中指だけで摘まむ様に…人差し指は持ち手とナイフの刃に添わせる様に伸ばして…」


「こ、こうですか?」


「そうそう。それで力を抜いて肘を的に突き出す様に…最後に肘から肩を動かさない様にして肘から手先だけを使ってナイフの重みで投げるんだよ」


「なるほど…すぅ…はぁ………いきます…!」



 しっかりとレクチャーを受けたリーチェは深呼吸してナイフを差し出す様に投げると中心から少し離れた場所にスコンという軽快な音を立てて突き刺さる。



「うん!いい感じだよ!」


「おぉ~嬢ちゃんなかなかやるじゃねぇか」


「あ、ありがとうございます…」


「じゃあ次は投げた後人差し指と中指を伸ばすと思うんだけど、人差し指で中心を指差す様に投げてみて?」


「はい…人差し指で中心を指差すよう…にっ!」



 もう一度唯織のアドバイス通りにリーチェがナイフを投げると軽い風切り音と板の中心に突き刺さる音が響きそれを見ていた人達は感嘆の声が上がる。



「どう?真ん中に当たると気持ちいいでしょ?」


「ええ…!これはもっと練習したくなりますね…!」



 そして最後の一本も淀みなく投げると真ん中に突き刺さったナイフの隣に突き刺さり拍手が送られた。



「嬢ちゃんすげぇな!三本中二本ど真ん中だからこれが景品だ!」


「ぬ、ぬいぐるみですか?」



 抱える程の大きさの犬のぬいぐるみを渡されたリーチェは少し恥ずかしそうに受け取ると店主はニカッと笑う。



「まぁこのナイフ投げは子供用だからな!上級者用に的が小さい難しいのがあんだが…これに当てられるか?嬢ちゃん」


「う…この小さい的は流石に…」



 拳一握りの小さな的を親指でクイクイと指す店主は意地の悪そうな笑みを浮かべて唯織を見つめる。



「…で?坊主は子供用と上級者用…どっちやるんだ?」


「そうですね…上級者用の景品ってどんな物なんですか?」


「お?やる気だなぁ…上級者用はこの小さな的に三本全部刺せばこいつだ」



 唯織の問いに店主は懐から一枚の細長い紙を取り出しひらひらと見せつける。



「…?その紙は?」


「これはレストランのペアコース券だ。貴族様御用達のな?」


「食事券ですか」


「そう言うと一気にしょぼく聞こえんだろ?レストランのペアコース券だペアコース券」


「あ、あはは…確かにお腹も空く頃合いだし…リーチェどうする?」


「え?…確かにそうですね…でも取れるんですか?」


「うん、任せて」


「ほぉ?随分な自信じゃねぇか?」


「ええ、まぁ…」



 リーチェや店主だけじゃなく周りで遊んでいた子供、その親達も拳程の小さな的に挑戦する唯織を期待するような眼差しを向けるが唯織は気にせず小さな三本のナイフを曲芸師顔負けの手つきでくるくると回して指の間に片手で三本まとめて握り込む。



「…おいおい、流石にそれはかっこつけすぎだぜ坊主。彼女の手前かっこいい所見せたいのはわかるがよぉ…外したら恥ずかしいぜ?」


「まぁ見ててください。いきますよ」



 そう言うと唯織は的に背を向けて自分から遠ざかりある程度離れると…



「…それっ!!!」


「「「「「「っ!?!?!?」」」」」」



 後ろ向きから半身で腕を縦に一振りすると三本全てが中心…更には刺さった一本の柄に立て続けに残りの二本も突き刺さり三本のナイフが一本の線に変わると悲鳴にも似た声と拍手が鳴り響く。



「す、すごい!!イオリさんどうやったんですか!?」


「どうやったも何も薬指と中指で挟んだナイフを投げてそこから中指と人差し指、人差し指と親指で挟んだナイフを順番で投げただけだよ?」


「そんな簡単そうに言いますがこれはそんな簡単な事じゃないですよ!?」


「あはは…」


「坊主マジか…お前さん何者だ?」


「ただの学生ですよ。…三本全部的には当たってないですけどこれでもペアのコース券もらえますか?」


「あ、ああ…ちくしょう…もってけ泥棒!!」


「泥棒って…では遠慮なく楽しんできますね」



 泣き真似しながら差し出された券をもらった唯織はリーチェを連れて自分達に向けられた声と拍手を受けながらそそくさとその場を離れていく。



「イオリさんは本当に何でも出来るんですね…?」


「え?いや…僕にも出来ない事はいっぱいあるよ?」


「そうなんですか?例えば何が出来ないんですか?」


「そうだなぁ…鍛冶とか?」


「家事?掃除とかですか?」


「そっちの家事じゃなくて剣を作ったりの方の鍛冶だよ。服とかも一応縫えるけどお店で売ってる様な物は全然無理だし…」


「…それは当たり前では?」


「あはは…どうする?もうご飯食べに行く?」


「…せっかくですしもう少しお店を見てからにしませんか?」


「そうだね。リーチェは何処に行きたいの?」


「お洋服とか見に行きたいんですが…イオリさんはお腹空いてますか?」


「全然大丈夫だよ。じゃあお店を案内してもらっていいかな?」


「は、はい!こっちです!」



 そして自然とリーチェから唯織の手を握り二人は人ごみの中へと消えていく…。





 ■





「…なんかすごくいい雰囲気ですわね…」


「うん…リーチェから手を繋いだよね…?」


「…お、おい嬢ちゃん達…ナイフ投げやるのか?やらないんだったら他の客の邪魔になっからどいてくれねぇか…?」





 ■





「ど、どうですか?このドレス似合いますか?」



 白黒のワンピースから髪色と同じオレンジ色のドレスに着替えたリーチェはその場でくるりと回るとドレスのスカートがふわりと舞う。



「うん、凄い似合ってるよ。流石って感じだね」


「そうですか…でもこっちの白いドレスも捨てがたいです…」


「僕は白よりそのオレンジのドレスの方がいいと思うよ?リーチェにすごく似合ってるから」


「…ならこれにします。買ってくるので少し待っててもらっていいですか?」


「うん、わかった」



 そう言うとリーチェは試着室へと戻り白黒のワンピースに着替えると大量の服を抱えて店の奥へと消えていく。



「…やっぱり女の子の服選びって大変なんだなぁ…服…かぁ……ん?…あれ…?」



 服飾店に来てから約3時間…リーチェの色んな姿を見た唯織は小さく呟きながら煌びやかな服を見ていると何処か見たことある様な二人が服を選んでいる姿が目につく。



「リーナとシャル…だよね?」


「「っ!?」」



 目が合うと驚きながら顔を逸らして試着室に二人で入っていくのを見届けた唯織はどうしようか首を傾げていると軽快な足音が後ろから聞こえてくる。



「お待たせしましたイオリさん。…イオリさん?どうしたんですか?」


「…ううん、何でもないよ。おかえり、そろそろご飯食べにいこっか?」


「そうですね…あ…ごめんなさいイオリさん…私夢中になってたみたいで…」



 時間を忘れて楽しんでいたリーチェが申し訳なさそうに俯くと唯織は笑みを浮かべて少し大きな声で話し始める。



「大丈夫だよリーチェ。僕も楽しかったし…じゃあ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「え…?さっきのお店に『しーっ。僕に合わせて』…?ええ、そうですね」


「じゃあいこっか」



 小首を傾げつつも自然に唯織と手を繋いだリーチェは導かれるようにして外に出ると空はオレンジ色に変わっていた。



「もうこんな暗くなってたんですね…」


「そうだね…僕も楽しくて時間を忘れてたよ。…あ、リーチェこっち」


「え?そっちは路地裏ですよね?」


「いいからいいから」



 後ろからついてくる二人を感じながらリーチェを路地裏へと連れて行くと…



「ごめんリーチェ、少し我慢してくれる?」


「え?ちょあ!?い、いきなりどうしたんですか!?」



 リーチェをお姫様抱っこして唯織は背の高い建物の屋根へと次々跳躍していく。



「実はリーナとシャルがさっきのお店に居たみたいでさ…」


「っ!?も、もしかして見られてたんですか!?」


「多分ね…あのまま気付かずにいたらきっと同じお店までご飯食べに来てたと思うからさ」


「そ、そうでしたか…」


「…ごめんね?みんなには内緒にって言ってたのに一緒に居る所見られちゃって…」


「い、いえ!別に私はイオリ君と一緒に居る所を他の人に見られたくなかったわけではなく…ただ恥ずかしかっただけで…」


「そっか…あ、見えてきたよリーチェ。あのお店だ。今降りるからしっかり掴まっててくれる?」


「わ、わかりました」



 顔を真っ赤にしながらも唯織の首に手を回して抱き着くと一瞬の浮遊感を感じ…音も無く人のいない路地へと着地する。



「着いたよリーチェ」


「あ、ありがとうございます…」



 少し名残惜しそうに唯織から離れると自然とまた手を繋ぎ…



「すみません、この券が使えるお店はここで合ってますか?」


「少々お待ちください…はい、間違いありません。ではご案内します」


「ありがとうございます。行こうリーチェ」


「はい…」



 そのまま二人は店員に連れられお店へ入り、今度こそ邪魔の入らない二人だけの食事を楽しむ…。





 ■





「…くっ!巻かれましたわ!!」


「流石にお店の中まで入ったらバレるよ…もう諦めよ?私もお腹すいちゃったし」


「ぐぬぬ…!帰ってきたら根掘り葉掘り聞いてやりますわ…!!」


「お帰りなさいませメイリリーナ様、シャルロット様。お食事は既に御用意出来ております」





 ■





「ふぅ…流石貴族御用達のお店…何だか食べるのがもったいないって思える程豪華だったね?」


「確かにそうですね…でもやっぱり豪華なのと味は関係ないんだと思いました…」


「あ、あはは…僕達は完全にアリア先生に胃袋掴まれちゃったもんね…」



 すっかり暗くなった空、人通りがすっかり亡くなった道を照らす月明かりと街灯…寮へと戻る道を二人きりで歩く唯織は徐に空間収納から一つの箱を取り出す。



「リーチェ?これ、受け取ってくれるかな?」


「…?開けても?」


「うん」


「…で、では…」



 生唾を飲み込みながら小さな箱を開くと箱の中にはリーチェのオレンジ色の髪に似合いそうな黒いリボンが納められていた。



「わぁ…これ、可愛いですね」


「今日を思い出せる思い出の品として用意したんだけどリーチェに似合うかなって思って…」


「ありがとうございます…あのよかったら結んでくれますか?」


「うん。今の髪形を崩しちゃうけどいい?」


「ええ、お願いします」



 綺麗に結われたリーチェの髪を優しく解いた唯織は黒いリボンを手に取り器用に形を作り頭の横で結び…



「…出来た。どう?」


「…!ありがとうございます!!」



 空間収納から取り出した手鏡を渡すとリーチェの顔に満面の笑みが浮かぶ。



「喜んでもらえてよかった。後は三つ編みをする時にリボンと一緒に編み込んだりするとまた印象が変わるから色々試してみて?」


「わかりました…!ありがとうございます!」



 唯織に結んでもらったリボンを嬉しそうに撫で年相応の笑みを浮かべたリーチェは途端に顔を赤くして小さく呟く。



「あ…あの…」


「…?どうしたの?」


「…これからはイオリさんの事を…()()()…って呼んでもいい…ですか…?」


「ゆ、ユイ君…?…ああ、由比ヶ浜だからユイ君か…別に大丈夫だよ?」


「っ!じゃ、じゃあこれからはユイ君って呼びますね!」


「わ、わかった…でもどうしてユイなの?」


「…他の人とは違う呼び方…私だけの呼び方にしたくて…」


「そ、そっか。僕も何か呼び方変えたほうがいい?例えばリーちゃんとか?」


「っ!?だ、大丈夫です…今まで通りリーチェで…」


「そ、そう?わかった…じゃあ帰ろうリーチェ」


「そうですねユイ君!」



 笑みを浮かべる唯織、顔を真っ赤にしながら微笑むリーチェはその後も他愛のない会話をしつつ明かりのついた特待生寮まで辿り着くと五人の人影が寮の前に待機しておりそのうちの一人がゆっくりと近づいてくる。



「お帰りなさいませイオリ様、リーチェ様」


「ただいま戻りました。…どうしてみんな待ち構えてるんですか…?」


「それが…」



 唯織の耳に顔を近づけて話そうとするとメイリリーナとシャルロットが興奮気味に近づき…



「さぁリーチェ!?全部洗いざらい話してもらいますわよ!?」


「え、ええっ!?」


「あ!!何そのリボン!!もしかしてイオリ君からもらったの!?」


「そ、それは…まぁ、はい…」


「これは詳しく聞かないといけないみたいですわね!?行きますわよ!!」


「あ、ゆ、ユイ君また明日ね?」


「「ゆ、ユイ君!?!?」」


「あ、うん…リーチェ頑張ってね?」



 二人に腕を引っ張られながら連れていかれるリーチェを見送ると残りの二人も唯織に近づき…



「イオリ!!何で僕を誘ってくれなかったの!?僕もイオリと遊びたかったよ!?」


「ご、ごめんテッタ…リーチェからみんなには内緒だって言われてたから…」


「内緒…二人っきり…ま、まさかリーチェとデートしてきたの!?!?」


「そうだけど…」


「そ、そっか…ま、まさかリーチェとデートする程親密になってるとは思わなかった…」


「…テッタ、多分イオリはデートの意味わかってない」


「え…?嘘でしょシルヴィ…さ、流石にイオリでも意味ぐらい分かってるよね?」


「えっと…セルジュさんも二人っきりで遊ぶのはデートだって言ってたし…二人で遊ぶのがデートなんだよね?テッタも今度二人っきりでデートする?」


「…ほら」


「…う、嘘…あ、あのねイオリ…デートって言うのは男の子と女の子がより親密になる為のもので…いわゆる恋人同士で出掛けるのがデートって言うんだよ…?」


「こっ!?…せ、セルジュさん!?そうなんですか!?」


「テッタ様の仰る通りです。…まさかわたくしもイオリ様がデートというものを知らないとは分からず…申し訳ございません…」


「そ、そうだったんだ…」


「…楽しかった?」


「え?ああうん…楽しかったけど…」


「…ふーん。…ふーーーーん。…ふーーーーーーーーん」


「ちょ、シルヴィ!?み、耳引っ張らないで!?い、痛い痛い!!」


「…おこ」


「ちょ!?せ、セルジュさん!テッタ!!助けて!?」


「…ごめんイオリ…頑張って…」


「ではわたくしも仕事に戻りますので失礼します」


「そ、そんな!?」


「…おこだから」


「ごめんシルヴィ!!…お願いだから離してええええ!!!」



 唯織とリーチェの初デートはこうして幕を閉じるのだった…。

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