枷と鎖、記念と企み
「…イオリ帰ろ」
「あ、うん」
「あ!イオリ一緒に帰ろう!」
「わ、わかった。一緒に帰ろうテッタ」
「…泥棒猫」
「え…?シルヴィアさん何か言った?」
「…何でもない」
アリアが伝えたい事を伝えて姿を消した放課後…唯織はシルヴィアとテッタに挟まれながら廊下を歩き始めると…
「イオリさん?わたくし達もご一緒に帰ってもよろしいですか?」
「あ、私もいいですか?」
「なら私もご一緒します」
「え…あ、全然大丈夫ですが…僕と一緒に帰るとその…」
「私全然大丈夫です。他の貴族からも目を付けられてますし…」
「私もそうですね。同性に嫌われるのも慣れてますから」
「全然気にしませんわ。…わたくしも…いえ、何でもありませんわ」
「…?はい、でしたら是非…」
シャルロット、リーチェ、メイリリーナも加わり特待生クラスから寮へと帰宅していく。
「特待生クラスの奴らだ…」
「…あれ?無色がいなくないか…?」
「ほんとだ…って言うかあの美少女誰だ…?」
「黒い制服を着てるから特待生…?まさか既に無色と入れ替わったのか…?」
「いや決闘は三ヶ月後だろ…?」
「じゃああの美少女は誰だよ…?」
「っ!?誰あの女!?私のテッタ君と手を繋いでるあの女は誰よ!?」
………
「あ、あれ?なんかいつもと違うような…?」
「確かに…何でだろ…?」
さりげなく手を繋ぎながら寮までの道を歩いている唯織とテッタはいつもと周りの反応が違う事に戸惑っていたが…
「イオリさん?気付いてないんですの?」
「え…?何がですか?」
「…素で気付いてないんですのね…その制服ですわよ」
「……っ!?!?」
まだ女子制服を着ている事を完全に忘れていた唯織はスカートを押さえてその場に座り込んでしまう。
「…仕草まで女子ですわね」
「うん…なんかこっちまで照れる感じする…」
「女子より女子らしいってどうなんですか…?」
「…イオリ可愛い」
「イオリ?ほら大丈夫だって…みんなイオリだって気付いてないよ?」
「~~~~!!!ご、ごめんなさい!!!さ、先に帰らせて頂きますっ!!!」
「あ!イオリ待って!!」
女子より女子らしい唯織にみんなが思い思いの言葉を投げかけると唯織は顔を真っ赤にしてスカートを押さえながら建物の屋根へと一瞬で飛び乗り、テッタも唯織を追いかけそのまま屋根伝いに姿を消してしまった…。
「流石の身体能力ですわね…わたくしも早く魔力を起こし続けれる様になりたいですわ」
「私もなりたいけどすごく難しいよね…」
「ええ…走りながら魔力を起こすと身体は確かに思う様に動きますが疲労感が桁外れですからね…」
苦笑しながらメイリリーナ達はまた寮へと歩きだすが絶対に唯織の事を追いかけるはずのシルヴィアはその場に残りポツリと呟く。
「…ねぇ、イオリの事、どう思ってるの」
「え…?いきなりどうしたんですの?」
「…いいから答えて」
「「「……」」」
この場の空気が重く、冷たくなっていく感覚を感じながらシャルロットは呟く。
「私は…お友達になってみたいと思ってます」
するとメイリリーナもリーチェもシャルロットに続く。
「そうですわね…私もお友達になりたいですわ」
「ええ…私もです」
「…何で?」
「な、何でって…そんな理由が必要なんですの?」
そう問い返すとシルヴィアは三人の顔を無表情で睨みつけながら言う。
「…必要。イオリにはもっと枷と鎖が必要だから」
「か、枷と鎖…?どういう事ですか…?」
「…テッタは枷。シャル、リーナ、リーチェが鎖。私は枷にも鎖にもなれないしならない。アリア先生もシオリもテッタの様に枷にも鎖にもなれないしならない。なれるのはあなた達だけだから」
「…その枷とか鎖っていう意味がわからないんですが…」
「…イオリと友達になるなら覚悟した方がいい。必ず決別の日が来る。自分が可愛いなら、自分が大切ならイオリに近づかない方がいい」
「あっ…ちょ、シルヴィアさん!?」
伝えるべき事を伝えたシルヴィアはシャルロットの制止も聞かずに唯織達と同じ様に屋根へ飛び乗るとそのまま姿を消してしまう。
「…え?私達が鎖…?どういう事…?」
「鎖…簡単に考えるなら縛り付けるという事ですかね…?」
「必ず決別の日が来る…この言葉からしてそうですわね。そしてテッタさんが枷…決別の日…いつか別れが来る…自分が可愛いなら、自分が大切なら近づかない方がいい…壮絶な決別になるということですわね…」
「壮絶な決別…死に別れるとか…?」
「もしそうならイオリさんが死ぬのではなく私達の誰かが死ぬ…の方が可能性はありますね。勇者様を師匠にするイオリさんとシルヴィアさんを殺せる人はこの世界にいないでしょうしそれこそ勇者様かアリア先生ぐらいしか…」
「でもシルヴィアさんは自分含め勇者様もアリア先生も枷にも鎖にもなれないと言ってましたわ。なら…その決別を止められるのはわたくし達とテッタさんだけ…という事ですわね。…一体何が…」
「私達がイオリ君と友達になる事が鎖になる…のかな?」
「多分そういう事なんでしょうが…何分私達はイオリさんについて何も知らない…なら探ってみるしかないんじゃないですか?」
「えっ…」
リーチェの唯織を探るという言葉を聞いたシャルロットは唯織が一瞬だけ見せたあの冷たさと暗さ、絶望を宿した目を思い出す。
「…あんまりイオリ君の過去を探らない方がいいと思う…」
「…?シャルは何か知ってるんですの?」
「リーナ…私一回だけイオリ君に何か抱えてるんですねって言おうとした時…とてもつらそうな目をしてたから…多分それを無理に探ったりしたら本当に決別する事になるとおも…う…」
「…まぁ、シルヴィアさんの口ぶりとシャルロットさんが見たイオリさん…イオリさんには相当の過去があると伺えますし…どうしましょうか…」
「「…」」
重苦しい空気が体に纏わりつく様な不快な感覚が三人を蝕んでいくが…シャルロットは小さく疑問を呟く。
「友達になるのって…過去を知らなくちゃなれないの…?」
「「…え?」」
「だってさ…友達ってそういうのじゃないよね…?私とリーナってお互いの過去を知ったから友達になったの?」
「それは…」
「私だってリーナに言ってない事だってあるし、リーナだってお城での生活とかお父さんやお母さんの話、お兄さんの話を一回も聞いた事ないし…」
「…」
「それでもこうやって友達として一緒に過ごしてるのに本当に過去って友達になるのに知る必要ってあるの?」
「…そう…ですわね…」
「私だってリーチェさんの事を全く知らないのに、リーチェさんだって私達の過去を何も知らないのに今こうやって友達の様に話してますよね?」
「え、ええ…」
「なら過去って友達になるのに必要ないですよね?知りたかったら仲良くなって聞けばいいですよね?」
「…です…ね。難しい事をここで悩んでいても仕方ありませんし…寮へ帰りますか」
「なら寮に帰りましたらイオリさんと友達作戦ですわね」
「あ、でもシルヴィアさんはどうしよ…多分またイオリ君の部屋でお風呂に入ってるかも…?」
「「はぁっ!?どういう事ですの!?」」
「あっ…」
シャルロットの余計な一言でまた寮へと向かう足を止めてしまう三人だった…。
■
「あぐ…げほっごほっ…い、イオリ足早いね…うっ…」
「ご、ごめんテッタ…恥ずかしくて気付いたら逃げてた…」
寮が既に大きく見える程近づいた唯織は後ろから必死に近づいて息も絶え絶えになっているテッタに肩を貸しながら歩いていると寮の門前で黒髪の人影が二人いる事に気付く。
「あ…ミネア校長…?」
「ほんとだ…一緒にいるのってセルジュさんだよね?何かあったのかな?」
二つの人影がミネアとセルジュだと分かるとテッタはとたとたと駆け寄り唯織もそれに続いて近づいて行く。
「ミネア校長お疲れ様です。セルジュさんもただいまです」
「あらテッタ君。お疲れ様」
「テッタ様、お帰りなさいませ。既にテッタ様のお部屋の片付けなどは済んでおります」
「ありがとうございますセルジュさん」
「それよりテッタ君…まさかテッタ君がこんなに早く彼女を寮に招待するとは思いませんでした…」
「えっ?か、彼女ですか…?」
「テッタ君もお年頃なのはわかりますしダメとは言いませんが寮生活だという事を忘れてはいけませんよ?他のクラスメイトも同じ寮に住んでるんですから」
「え…?ま、待ってくださいミネア校長…僕は彼女とか出来てませんよ?」
「…?なら後ろにいる女子生徒…は?」
「…ま、まさか」
首を傾げながらテッタの後ろにいる唯織を見つめるミネア…そして何かに気付いたセルジュは目を丸くしながら頭を恭しく下げる。
「イオリ様、お帰りなさいませ。お部屋は指示通り誰も立ち入らせておりません」
「あ、はい…セルジュさんありがとうございます」
「っ!?!?い、イオリ君なんですか!?!?」
「はい…お疲れ様ですミネア校長」
「な、何で女子生徒の制服を…?」
「実はアリア先生に…」
「そ、その髪は…」
「今まで黒く染めてたんですがこれが僕の本当の髪色なんです…」
「っ…これは…」
「え…?み、ミネア校長…?」
目を零してしまうのではないかと言うほど目を見開きながら隅々まで唯織を観察していくミネアだったが小さくため息を吐いたセルジュがミネアの肩を掴んで驚きの言葉を呟く。
「他にどんな服が似合うかしら…?これはこれは…」
「…姉さん。イオリ様が困ってんだからやめろよ…」
「「ね、姉さん!?!?」」
「あら…?そんな言葉遣いを許した覚えはありませんが?」
「別に姉さんにはいいだろ?」
「ここにはテッタ君とイオリ君もいるんですよ?」
「そのイオリ様の事を一目で見抜けなかったくせに何言ってんだよ…イオリ様、わたくしの姉がとんだご無礼を…」
「い、いえ大丈夫です。頭を上げてください…」
「ありがとうございます。…ほら、姉さん?俺の仕事の邪魔だから自分の仕事に戻ってくれよ…」
「わかりました…テッタ君、イオリ君?明日も元気に登校してくださいね」
「「は、はい」」
そう言うとミネアはスッと影に溶け込む様に姿を消し、セルジュはバツの悪そうな表情を浮かべていた。
「セルジュさんが誰かに似てるとは思ってましたが…まさかミネア校長の弟さんだとは思いませんでした…」
「ええ、よく言われますイオリ様。それとお二人にお伝えしたい事があります。本日の夕食はアリア様が既に用意してくださいました。そしてアリア様からは皆で食べる様にと仰せつかっておりますが、夕食時になりましたらお呼びしても宜しいでしょうか?」
「あ、アリア先生すごい…はい、お願いします」
「アリア先生のご飯美味しかったもんね…僕もお願いします」
「かしこまりました。ではその様に手配させて頂きます。お帰りなさいませテッタ様、イオリ様」
「「ただいま戻りました」」
セルジュの言葉に笑みを返した唯織とテッタはそのまま寮へと帰っていくとセルジュの目の前に銀髪の少女が降ってくる。
「シルヴィア様、お帰りなさいませ」
「…ん。イオリは?」
「イオリ様はつい先ほど寮の中へと入られました」
「…ん」
「少々お待ちくださいシルヴィア様。アリア様からの言伝がございまして…」
「…ん、わかった」
「ではごゆっくりお寛ぎを」
「…ん」
唯織とテッタに伝えた事をシルヴィアにも伝えると無表情のまま寮の中へと入り…
「…ど、どうされましたか?シャルロット様…?」
「うっ…せ、セルジュ…」
「どういう事なんですのシャル!?ちゃんと詳しく説明してくださいまし!!」
「そうですよシャル!一緒にお風呂に入ってたってどういう事ですか!?」
「一緒にお風呂に入ってたなんて言ってないよぉ…」
最後に顔を真っ赤にしたメイリリーナとリーチェに腕を引っ張られ衰弱している主人を寮へと向かい入れるセルジュだった…。
■
「シャルロット様、メイリリーナ様、リーチェ様、シルヴィア様、テッタ様、イオリ様、どうぞお召し上がりください」
「「「「「「頂きます」」」」」」
レ・ラーウィス学園特待生クラス寮内…食堂にてセルジュが並べたアリアの手料理の味を知る唯織達は頂きますを合図に手を伸ばし食べていく。
「それにしても本当に美味しいですわね…」
「うん…完璧だよね」
「今まで見た事のない料理ばっかですが本当に食欲をそそられます…体重…大丈夫でしょうか…」
「「っ!?」」
リーチェの言葉でメイリリーナとシャルロットはピタリと手を止めて口に運ぼうとした匙を更に戻そうとするがセルジュがそうなる事を予想してたかのように口を開く。
「シャルロット様、メイリリーナ様、リーチェ様。アリア様からの言伝です。太りにくい様に調理しているし今日はかなり動いたから気にせず馬鹿食いしていいわよ。それでも気になるなら魔力を起こしながら食べなさい。…との事です」
「…行動まで先読みするんですの…?」
「なんというか…全てが規格外というか…」
「…まぁ、おかげで気にせず食べれるんですしいいじゃないですか」
目を丸くしながらも魔力を起こしながら食べ始めたシャルロット達はさっき以上の速さで食事を進めていくとテッタが問う。
「ねぇイオリはどんな料理が好きなの?」
「え?そうだね…特にこれが好きっていうのは無いけど強いて言えばドラゴンの尻尾肉の丸焼きとかかな?」
「…あれはうんまい」
「「「「ええっ!?」」」」
テッタの問いに何気なく唯織が答えるとシャルロット達は驚きの声を上げてテーブルに身を乗り出して興奮気味に声を出す。
「ど、ドラゴンのお肉を食べた事があるんですの!?」
「はい…というより師匠と暮らしてた時の主食でしたので。ドラゴンの尻尾は切ってもまた再生しますし…」
「さ、再生するんですか!?というより何処にドラゴンなんているんですか!?」
「師匠と僕の家、アリア先生の家がある森によく出ますよ?あそこはどの国も手が出せない未開拓地、魔王領ですから」
「あそこ魔王領なんですか!?!?瘴気が立ち込めて誰も足を踏み入れられない…踏み入れたら魔獣へと変わってしまう魔王領なんですか!?」
「そういう風に言い伝えられてるんですね…確かに瘴気に触れれば魔力の乱れによって様々な弊害が出ますが魔力を起こしてしっかりと纏っていれば特に何もありませんよ?それにあれは外側だけで内側は今日行ったみたいに平和なものですし、師匠が安全の為に結界も張ってますから」
「へぇ~…やっぱりすごいねシオリ様…他には何か美味しい物あったのイオリ?」
「んーそうだなぁ…」
「…あれもんまい。コカトリスの卵」
「ああ、そうだねシルヴィ。コカトリスの卵で作った目玉焼きとか卵焼きも美味しかったなぁ…」
「「「「コカトリス!?」」」」
「…今度アリア先生に頼む」
「ならまだ僕尻尾肉も卵も空間収納に入れて持ってるから明日アリア先生に渡しておくよ」
「…ぐっじょぶ」
そこまで言うとメイリリーナ、シャルロット、リーチェはぐったりとしながらも食事を続け、テッタは楽しそうに尻尾をゆらゆらと揺らし始める。
「なんというか…常識を疑う会話ですわね…」
「うん…私達もいつかそうなるのかな…?」
「…アリア先生に教えられてる時点で既に片足を突っ込んでいる気がしますが…」
「でも知らなかった事をいっぱい知れるからいいんじゃないかな?僕はイオリと一緒に居て楽しいよ?」
「テッタ…さ、流石に恥ずかしいよ…」
「…泥棒猫」
そうして皆が初めて集まった夕食は和やか?に進みついに…
「…あの!イオリ君!」
「っ!?…はい、どうしましたか?シャルロット・セドリックさん?」
「私とお友達になってください!!」
「えっ!?」
シャルロットが先陣を切った。
「出来れば名前もフルネームじゃなくてシャルって呼んでください!」
「え、ええっ!?ちょ、ちょっと待ってください!」
すると食事を食べ終わって口元を拭いていたメイリリーナとリーチェも小さく手を上げる。
「わたくしの事はリーナでいいですわ。…という事でお友達になってくださるかしら?」
「ええっ!?」
「では私もリーチェと。そういう事で私ともお友達になってくれますか?」
「え、ええっ…!?ど、どういう事ですか…?もしかして僕の事をからかってたり…」
「「「してません」」」
「…ほ、本気ですか…?」
「「「本気です」」」
「…どうしてですか…?僕は皆さんに好かれる様な事を何も…」
いきなりの事に唯織はどう対処していいのか分からずむやみやたらに視線を泳がし続けるが三人はしっかりと唯織を見据えて言う。
「私は少しでもイオリ君を知りたい。過去じゃなく今のイオリ君を知りたい」
「っ!」
「わたくしも同じですの。過去なんてどうでもいいですわ。シャル以外にも気が許せる友達が欲しいと思ってましたし」
「っ…」
「私もです。過去がどうであれ私達の前にいる今のイオリさんと一緒なら退屈しないでしょうし」
「皆さん…っ…」
三人の言葉に胸が締め付けられる圧迫感…それでも心地のいい痛みは自然と唯織の目からぽろぽろと涙を落とし…
「…はい。こんな僕でよければ是非…」
「…イオリ、おめでと」
「イオリやったね!」
「シルヴィ…テッタ…っ」
シルヴィアとテッタは顔を伏せて泣き続ける唯織の頭を優しく撫でる…。
「…というより、シルヴィアさんはイオリさんと友達になりませんの?」
「…私は友達じゃなく家族だから」
「…そうですの。まぁ…これがわたくし達の答えですわ」
「…そう」
メイリリーナの言葉にそっけなく答えるシルヴィアはいつもの無表情ではなく笑みを浮かべていた。
「…じゃあ僕達は全員友達って事でいいのかな?みんなイオリと友達になったわけだし!」
「そうですわね。テッタさんもシルヴィアさんもよろしくですわ」
「うん!みんなよろしくね!」
「ですね。よろしくお願いします」
「…ん、よろしく」
そして皆が本当の意味で繋がり泣きじゃくる唯織以外が満面な笑みを浮かべ、同じく笑みを浮かべたセルジュがパンパンと手を叩くとメイド達が食堂に集まり…
「では皆様がお友達になられた記念にアリア様からプレゼントを預かっておりますのでお渡し致します」
まるでこうなる事を見透かしていた様に皆の前に指輪を入れる様な小さな箱とキラキラしたケーキが置かれる。
「…何処まで先を読んでいますの…?アリア先生は…」
「ここまで来ると怖いね…」
「…まるで掌の上で踊ってるようですね」
「でもそれだけ僕達の事をわかってくれてるって事だよね?」
「…テッタポジティブ」
「うくっ…」
少し怖いような嬉しいような複雑な表情を浮かべた皆は恐る恐るアリアからの箱を開き…
「これは…イヤリング?」
「ほんとだ…すごくキレイ…」
「この宝石見た事ありませんね…」
「うわぁ…すごく高そう…」
「…センスにじゅうまる」
「ほんっ…ひくっ…きれい…」
角度を変えれば赤、青、緑、茶、黄、水、紫、白、黒、透明に変わる不思議な宝石が嵌め込まれたイヤリングを皆で付け合い笑みを浮かべるのだった…。
………
「…まぁこんな感じかしらね。どうです?理事長、校長」
「全く、たった二日でこうなるとは…」
「ええ…本当に素晴らしいです」
「では、私は家でお腹を空かせてる息子と娘がいっぱいいるので失礼しますね」
「うむ。今後ともよろしく頼む」
「わたくしからもお願いします」
「承りました。ではお二人もお屋敷に転移しておきますね」
こうして大人達の企みも幕を閉じるのだった…。
ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。
この話で第一章完結となります。
少しでも面白いと思って頂けたらモチベーションに繋がりますのでブックマークと評価の程よろしくお願いします。
絢奈




