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第五章開始 色付きの花束と透明な花  作者: 絢奈
第五章 水姫と水都
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水人族の始祖

 





「「「……っ!!!ひ、姫様!?」」」



 抱えられたティリアを見た瞬間に声を揃えて姫様というギャリー、ビビ、プラム。



「「「……え?」」」



 ティリアを姫だと言う三人に驚くアリア、ユリ、ラン。



「ど、どう言う事だアリア!!何故我々の姫様がここにいるんだ!!」


「ちょ、ちょっと待って~…え~…?ティリアが姫様~…?確かにティリアはおーぞくの血を引いてるから姫だけど~…ティアも同じなのにティリアだけ~…?」


「…!間違いない!!()()()()()様よ!!」


「…この子も確かにエリュイン様にそっくり…でも違う…雰囲気…気配が違うわ」


「説明しろアリア!!」


「おいおい…一旦落ち着けよお前ら。あたいらは逃げも隠れもしねぇんだから冷静に話し合おうぜ?ここまで来てあたいらにお前達を殺させないでくれ」


「そうっすよ。ギャリーっち達が感情に任せてアリアっちの胸倉を掴んだり、今度こそティリアっちを攫おうとしたら…本気でぶっ殺さなくちゃいけないっすから」


「「「……」」」



 声は優しいのに眼だけは一切笑っていないユリとランの言葉で落ち着きを取り戻すと、アリアは甲板にティリアを寝かせて一つずつお互いの溝と疑問、()()()()を埋める為にギャリー達と操縦席に移動した。



「まずは落ち着いてはなそー?」


「…これが落ち着いていられ『『動くな(動くんじゃねぇ)』』……」


「ありがとユリ、ラン。もう必要ないから下ろしていいよ」



 また感情のままに叫ぼうとしたギャリーの首に真っ赤な剣と禍々しい短剣が添えられるが、アリアは優しく二人の腕を掴んで下ろさせた。



「…ギャリーさ、まず聞きたいんだけど…君って男だよね?」


「…何故今その話なんだ…?俺が男かなんて姫の事と何も関係ないだろ」


「関係あるんだよね~。だってさぁ…水人族の男って男児を産む為に国の中枢で管理されてるはずなんだもん~」


「…?何の話だ?」


「君達さ~…()()()()()()()でしょ?」



 のんびりした雰囲気から急に何でも見透かしている様な、得体の知れない別人の様な雰囲気を纏った事にギャリー達は息を詰まらせ、次の言葉で目を見開いた。



()()だよね?」


「なっ…」


「何でそれを知ってるのかって言いたいのかな?それともデタラメだ、水人族を魔族と愚弄するかって怒りたいのかな?」


「…………何故我々の正体を知っている…」


「やっぱりか……いいよ、順を追って説明してあげるね」



 魔族…それは魔王ヴァルドグリーヴァが生み出した人類の敵…ギャリー達がその魔族である事を見抜いたアリアは一つずつ説明していく。



「まずは僕達がティリアとティアと一緒にいる理由から。僕は他にも寝かせてた唯織達に魔法や戦闘技術、この世界の知識や生き方を教える為に教師をやっているんだ。隣に居るユリとランも同じく唯織達に色々教える教師みたいなもんだけど…ここまではギャリーにだけ説明したよね?」


「…ああ、聞いた」


「よし。僕は唯織達に人を助けたという実感を感じさせる為に冒険者…簡単に言うと何でも屋でお仕事の依頼を受けてとある村に出向いた時、お仕事を依頼したティリアと出会った。最初のティリアは目も見えない、舌が無くて喋れない、脚の健が斬られてて歩けない様にされてて…僕が今の状態まで癒して詳しく話を聞いたらアトラス海王国の王女様だったんだ」


「されてて…?何故その様な仕打ちをエリュイン様が…!人間がやったのか!?」


「違うよ、やったのは水人族の王族…同族、家族にそうされたんだよ」


「何だと…!?それは本当なのか!?」


「怒りたくなる気持ちも分かる…僕だってこんな話していい気持ちにもならないし、出来るならぶっ殺したいと思ってる。でも今は落ち着いて最後まで話を聞いてくれ」


「……」


「…何でティリアがそんな仕打ちをされたか…それは同族の同性すら魅了してしまう魅惑の魔眼を持って生まれ、存在が危険視されたからなんだ」


「魅惑の魔眼…?待て、エリュイン様は魅惑の魔眼なんて持っていないぞ?」


「今はギャリー達の知るエリュイン様って人の話をしていない、ティリアっていう女の子の話をしてるんだ」


「……」


「本当はアトラス海王国を脅かす魔眼を持つティリアとそのティリアを生んだ母親はすぐに殺されるはずだった。だけど、強力な魔眼を持つティリアと強力な魔眼を持つ子を産む母親を処理するより、()()()()()()()また母親に魅惑の魔眼(失敗作)じゃなく、別の魔眼(都合のいい完成品)を生ませ、その別の魔眼(完成品)を持った子に対して母親を人質に言う事を聞かす方がいいって進言があって二人とも命拾いしたんだ。でも、ティリアが魅惑の魔眼(失敗作)を持っている事には変わりない…ティリアを殺してしまえばいつかバレて母親に死なれるかも知れないし、いつか生まれる別の魔眼(完成品)を持つ子が裏切って何かをするかもしれない…だからティリアは別の場所で隔離すると言う情報を流して秘密裏に奴隷として他国に売り、買い手に使い潰されて死ぬようにしたんだ。…流石にティリアにはこのまま伝えるんじゃなく、一部改変して伝えたけどね」


「……信じられない…それは本当の事なのか…?」


「本当だよ。ユリが全部調べてくれたんだ」


「うっす。実はアトラス海王国に()()()がいるんっすよ。その人がティリアっちと母親を殺させない為に進言して、ティリアっちが奴隷として売られるのを母親に伝えてあげて母親が信頼のおける人物にティリアっちを助けてって依頼したんっすよ。…んで、そのティリアっちを助けた人からあたし達はティリアっちを託されて、ティリアっちのお願い…母親を助けてって言うお願いを叶える為にここまで来たんっすよ。文字が読めるんなら全部証拠出せるっすけど読めるっすか?」


「いや…読めない………」



 アリアの話を聞いて絶句どころか気持ちが悪そうに涙を流すビビとプラム…その間に挟まれるギャリーも腸を抉り出されているかの様な苦痛の表情を浮かべていた。



「ここまでが僕達がティリアとティアと一緒にいる理由ね。で、ここからが何でギャリー達が水人族じゃなくて魔族だって判ったかだけど…ティリアとティアの母親を助ける為に二人の血を調べたんだ」


「…?母親を助ける為に血を調べる…?」


「うん。ティリアとティアの母親が捕らえられてる理由は水人族の男が生まれ難いからなんだ。水人族の男がいなくなったとしても、人間族が居れば子を成す事が出来る。だけどそれだといつかは水人族の血が薄まって水人族が絶滅するんだ。だからそれを阻止して種を存続させる為に純血の水人族の男は国で管理されて純血を絶やさない様に管理されるんだ。んで、僕は男が生まれやすくなる薬を作ってその役目から母親を助ける為にティリアとティアの血を少しだけ分けてもらって調べて…その薬が完成したから母親を助けに来たんだよ」


「さっきの質問の意図はそう言う事か…なるほどな…管理されてる筈の水人族の男がここに居るのはおかしいから魔族だってわかったのか…」


「違う違う、さっきの質問は一応間違ってちゃあれだから確かめる為に聞いただけだよ」


「…ん?なら何で魔族と判ったんだ?」


「それは薬を作る為に分けてもらった()()()()()()()()()()()()だよ」


「血だけでそんな事が判るのか…?」


「普通なら絶対に判らないよ。でも僕の妻には血のスペシャリスト…吸血鬼の妻がいるからね」


「はーい!あたしの事っすー!」


「「「っ!?」」」



 ユリが大きな胸を張って吸血鬼だとアピールすると背中から蝙蝠の羽と銀髪から黒く捻じれた二本の角を生やし、親指と人差し指で作った枠から驚いているギャリー達の顔を覗く。



「この世界の魔族をまだ見た事無かったっすからねー、ギャリーっち達があたしらを襲撃してくれたおかげで全てが繋がったっすよー?」


「アリア…吸血鬼は魔族だぞ?それも…吸血鬼は魔王ヴァルドグリーヴァ様…いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()…そんな吸血鬼でも…魔族は人間と共存する様になったのか…?」


「話せば長くなるんだけど…人間は魔族と共存してないし、今だ魔族は人間からしたら恐怖の対象のままだよ」


「……そうか…」


「…ギャリー達にも色々あるみたいだけど、まずは僕達の話を先にしちゃうね。…さっき僕は自分の事を人間と言ったけど、実は訳あって人間から魔族になった所謂『魔人』っていう種族なんだ。ちなみに妻のランもドワーフから魔族になった魔人で、ユリは吸血鬼とサキュバスのハーフで純粋な魔族だったんだけど、僕の力を取り込んで魔人になったんだ」


「人間から魔族になった魔人…()()()()()()()()()()()()…?なら、アリアは新しく誕生した魔王なのか…?」


「ヴァルドグリーヴァが人間から魔族になって魔王になった事にも驚きなんだけど…いやー…まぁ…確かに魔王だけど…この世界の魔王じゃないよ」


「この世界の魔王じゃない…?あれか?ヴァルドグリーヴァを殺した由比ヶ浜 詩織と同じく異世界から来たのか?」


「え?詩織を知ってるってもしかしてギャリー達って初代魔王ヴァルドグリーヴァと同じ時代の魔族…いや、原初の魔族なの?」


「そう呼ばれているのかはわからないが…その言葉が相応しいのはきっとエリュイン様の方だ。我々はエリュイン様から生まれた魔族だからな…」


「…俄然ギャリー達の話に興味が出て来たけど…」



 ギャリーの口から今まで知られていない事実がポロポロと出てくる事に興味を刺激されたアリアは質問したい気持ちを頭を振ってグッと堪えた。



「今はこっちの話を全てギャリー達に知ってもらいたいから話を少し戻すね。ユリ、続きを説明してくれる?」


「あいっすー!ティリアっちとティアっちの血を調べて何でギャリーっち達が魔族か判ったか…それは()()っす」


「魔石…?」


「そうっす。まず知っておいて欲しいんっすけど、あたしら異世界の魔族は人間の心臓と同じ役目をする魔石が胸の中心にあるんすよ。そして進化を果たして魔人になるとその魔石は無くなって人間と同じ心臓になるっす。ここ迄いいっすか?」


「ああ」


「おっけーっす。ならここから本題っすけど、ティリアっちとティアっちの血には微量ながら()()()()()()()()()()()()()んっすよ。あたしはそこでおかしいな~どうしてかな~って色々調べて妄想を膨らませてうんうん悩んだっす。…で、一つの推測に辿り着いたんっすよ、もしかして()()()()()()()()()なんじゃないかって」


「……」


「でも、ティリアっちとティアっちの胸には魔石じゃなく心臓があるっす。だからずっと確信は出来なかったんっすけど…今、ここでこの世界のギャリーっち(魔族)達の胸の中を見たおかげで確信出来たっす。魔族と人間の血が合わさって水に適応進化した魔人…それが水人族という種族でギャリーっち達は水人族の始祖っす」


「なるほどな…血だけでそこまで判るなんてな…」



 水人族という種族が魔族と人間の間に生まれた種族だと言う事をギャリー達に突き付け…



「そこまで知られているならもう隠す事は無い。次は我々のエリュイン様の話をさせてもらう」


「ああ、頼むよギャリー」



 アリア達は少し諦めた様に話し始めたギャリー達の昔話に耳を傾けた…。

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