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第五章開始 色付きの花束と透明な花  作者: 絢奈
第五章 水姫と水都
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ペア決め

お仕事が忙し過ぎて日に日に投稿頻度が…

 





「リーチェもう少し右だよ!」


「行き過ぎですわ!左にもう少し傾けてくださいまし!」


「もう少しもう少しって…!もっと具体的に言ってください!!仮にも戦闘学科の生徒ですよね!?」



 シャルロットとリーナの声を頼りにスイカに向かって鞘から抜いていない『山茶花』を構える目隠しをしたリーチェ。



「な、何で僕埋められてるの!?しかも波が来たら溺れるよね!?」


「何、問題ないさ。砂浜の濡れ具合を見るにここまで波は来ない」


「アリア教諭はこういう砂に埋めたりする遊びもあるって言ってた。これは決してイジメじゃない」


「埋められるのはいいけど何で海ギリギリなの!?さっきから耳に波がちょっと当たってるんだけど!?」



 海の波によって砂が白と黒に分かれているギリギリの場所で海に頭を向けてアンジェリカとフレデリカに砂に埋められているテッタ。



「見て見て!ウサギ!!ククちゃんみたいでかーわーいーいー!」


「ふん!私のテッタ様の方が可愛いから!!」


「はぁー!?私のウサククちゃんのが可愛いし!」


「私のテッタ様の方が可愛いから!」



 波で濡れた砂を土台に白兎を表現するククルと濡れた砂だけで黒猫を表現するアデル。



「「シエラ!シリカ!どっちのが可愛い!?」」


「ん?あーしからしたらどっちも可愛いと思うけどな?」


「です!あーくし達のより可愛いです!!」


「「うわっ、すごっ…」」



 ククルとアデル達から少し離れた場所で砂だけでハプトセイルの王城を精密に再現するシエラとシリカ。



「久しぶりの海ー!!えい!!」


「うぷっ!?お姉ちゃんお返しだよ!!」


「おっ!?おぼがががああが!?!?」


「「て、テッター!?」」


「「あああ!?ウサクク(テッタ様)があああああ!?」」


「…何で波打ち際で砂遊びすんだよ…」


「もう少し離れてすればよかったのに…」



 水人族として海を操る様に海水を掛け合い大きな波を起こしたティリアとティア。



「それでですね?泳げない人にはこの空気を入れた浮き輪というものを使ってもらえれば溺れる事もありませんし、万が一溺れてしまったとしても水人族の方々にライフセーバーとして浜辺を監視してもらえば事故は限りなく0になると思います。更に安全を考慮してこれ以上先には行ってはダメという防止兼魔物避けの柵を設置すればより安全かと。そしてここに海の家という飲食店を作れば入場料の他に経済効果が見込めるかと。一応ユリとランには海の家で出す料理の試作をしてもらってます」


「ほぉ…アリア殿は本当に策士だな?」


「ならこの付近に宿屋を建てるのもよさそうですね?」


「ご慧眼ですねメルクリア王妃。実はその方向の話も用意してまして…」



 少し離れた所でビーチベッドに腰を下ろしたイヴィルタとメルクリアに海水浴のプレゼンをするアリア。



「ランっちー、他の海の家の定番ってなんすかー?」


「んー…食事系はラーメン、カレー、焼きそば、チャーハン、イカ飯、フランクフルト、フライドポテト、アイス系はかき氷、シャーベット、ソフトクリーム、アイスクリーム、飲み物系はビールとソフトドリンクにプラスしてアイスを乗っけるとかで試作はいいんじゃねーか?」


「ういーっす」



 空間収納から様々な食材と器具を取り出して大量の料理を作っていくユリとラン。



「みんな楽しそうですね?」


「いや…一人水攻めされてる子いるけど…しかも海水で…」


「あはは…」



 そんな仲間達をビーチパラソルの日陰で眺めている唯織と詩織。



「にしても傷を治したのかと思ってびっくりした事もだけど…まさかリーチェとシエラ、シリカまで傷の事知ってて余計びっくりしたよ…」


「ただ傷があるという事だけで、僕が奴隷だった事までは知りませんけどね」



 皆の前で素肌を晒した事に驚いた詩織が二人っきりで話そうとした時、先にリーチェが唯織と二人っきりで話しており、後で話そうとしたら次はシエラとシリカ…最後に話しかけた時に三人も傷の事を知っていたという事にまた驚いていた。



「これからはその腕輪を使って傷を隠すの?」


「いえ…アリア先生が言うにはこの変装の腕輪はかきんあいてむ?とか言うかなり希少な物らしくて、壊れていたのを直すのに最後の時間を巻き戻す権能で直してくれた物なのでこの海水浴が終わったらすぐに返します。…ずっと付けていたら壊してしまいそうですし…」


「課金アイテム…そっか、あれって()()()()()のとんでもアイテムだったのか…」


「ゲーム時代…?」


「あぁ、そういえばいおりんは知らないんだっけ?簡単に言うとアリアちゃんは…えっと…いおりんチェスとか分かるよね?」


「わかりますけど…?」


「アリアちゃんは所謂チェスの駒を動かすプレイヤーだったんだけど、チェスの盤面の世界に転移しちゃった転移者なんだよね」


「チェスの盤面に?」


「うん。実際はチェスじゃなくて自分の分身体を作り出してその世界を楽しむってゲームなんだけどね」


「…?そのゲームで遊んでいたら分身体が自分の身体になってしまった、という事ですか?」


「そう言う事。アリアちゃんは今までゲームとして遊んでいた世界に転移した転移者。ゲームが現実になって、争い事とかした事なかった一般人のアリアちゃんは最初に人を襲ってた熊を殺しただけでゲロったらしいよ?」


「あ、あのアリア先生が…?」


「想像もつかないよねぇ…まぁ、そんな事があったからアリアちゃんはゲーム時代のとんでもアイテムをいくつも持ってるし、ゲーム時代のとんでも肉体を持ってるんよ」


「なるほど…でも何故それを僕達に言わないんですか?」


「そりゃあ、この世界を必死に生きてる人達からしたら『君達は私からしたらチェスの駒でーす』なんて言っても信じられもしないし印象悪いし、第一アリアちゃんはそんなこと思う訳ないでしょ?一つの発言から煙が立つかもしれないからアリアちゃんは隠し事にする事が多いけど、私達に不利になる様な隠し事はしないし、嘘なんて吐かないからね。だから私も信用してるし信頼もしてる…じゃなかったらいおりんを任せようなんて思わないよ」


「…そうですね」



 そう言って笑みを浮かべる詩織の表情は命よりも大切な唯織の事を語る時の様な表情で…もう詩織の中には人形のように生きていた寂しさの影は無く、自分の事以外にも大切な者が出来た事に嬉しいような、ちょっと寂しいようなよくわからない心地のいい気持ちが唯織の中に生まれた。



「よーし!みんな一旦集合ー!!」


「お、アリアちゃんからの集合がかかったね?行こういおりん?」


「わかりました」



 何やら青い玉の様な物を持ったアリアから集合の声が上がると皆がアリアの元に集まっていくと…



「今からみんなでビーチバレーをしまーす!」


「え、マジで!?」



 詩織以外の皆は首を傾げた…。





 ■





「…という感じで初めてプレーするみんなは細かい反則は取らないとしてルールはシンプルなものにしたんだけど理解した?」



 アリアから提示されたルールはとても簡単なもので、まず縦16m×横8mのコートでネットの高さは男女の中間2.3m、ブロックをした者を除いてボールは連続して二度触ってはいけない、ボールを触ってから三回以内に相手コート内へ返す、両方合わせて7点取得でコートチェンジ、身体の何処を使っても良くて魔法は禁止というルールだけだった。



「魔法は禁止なんですのね…」


「そりゃあねぇ?魔法ありなら転移魔法が使える唯織と詩織が触れた瞬間に負けるしね。後、魔力纏うのも禁止ね?じゃないと多分シエラ達の腕が千切れるから」


「「「「ひっ!?」」」」


「それと、ペア決めなんだけどリーナはシャルと組むの禁止ね」


「む…わかりましたわ」


「リーナと組めないんだ…わかりました」


「んで、アンジェはフリッカと。詩織は唯織と。唯織はリーチェとテッタと。ティリアはティアと。シエラ達は全員バラバラね」


「はぁー!?何でいおりんとじゃダメなの!?」


「そうですよ!シオリはいいとして何で私までユイ君とはダメなんですか!?」


「はぁ!?この腹黒オレンジ!!」


「何ですか馬鹿ガキ!?」


「僕もダメなんですか?」


「その辺はもう目を合わせるだけでお互いの動きを合わす事が出来るでしょ?…んじゃ詩織とリーチェはペアね」


「「はぁっ!?何で!?」」


「うるさいなぁ…はいはい、んじゃ各自早い者勝ちでペアを組んでね~」



 ………



(魔法も無し、魔力を纏うのも無し…シャルと組めないのならテッタさん一択……べ、別に何か特別な理由とかではなく、獣人族で身体能力が高いからですわ…そうですわよ…)



 誰に言い訳しているのかわからないリーナはシャルと組めないならと即座にテッタに狙いを定めた…が、



「テッ『テッタ様ぁ!!私と組んでください!!』っ!?」


「あ、アーデちゃん…うん…い、いいけどちょっと近い…」


「やった~!」



 途轍もない勢いでアデルがテッタを掻っ攫って行ってしまった…。



(な、何なんですの…!?うぐ…あんなにベタベタと…!!!…はぁ……)



 テッタの腕にアデルがくっ付きながらアリアの元に向かっていく後姿を見て妙な苛立ちと胸の痛みを覚えたが、リーナはまだその気持ちの名前を知らなかった…。



 ………



(ふむ…テッタはアーデとか…私の中での候補は二人だが…運動能力の差を思えば彼女だな)



 テッタとアデルが早々にペアを作ったのを眺めながらアンジェリカは狙いを定めた一人の元へ向かった。



「シエラ、私と組まないか?」


「え?あーしとか?」


「ああ、姉妹の姉という繋がりもそうだが…戦闘学科の生徒が多い中、いきなり座学学科の生徒が上手く動けるとは思えないからな。私がサポートしよう」


「そんな事言ったらティア先輩の方がいいんじゃねーのか?ティア先輩はハルトリアス学園の特待生…じゃなくて特級だったんだろ?身体能力もあーしより上だろ?」


「だからさ。アリア教諭は誰かが楽しんで誰かが楽しめないなんて状況は絶対に望まないからな」



 身体能力だけを見れば確実に水人族のティアと組む方が勝率は高いが、アンジェリカは遠くでこっちに正解とばかりに笑みを向けてくれるアリアに笑みを返して親指である方向を指差し…



「それにフリッカもシリカを選んだ。私の考えと同じようだが?」


「…流石は元生徒会長様だな。わかった、あーしと組もうぜ」


「ああ、よろしく頼む」



 アンジェリカとシエラは固く握手を交わした…。



 ………



(リーナはアーデにテッタ君をとられちゃったのか…アンジェはシエラ、フリッカはシリカ、残ってるのはククルとティリアとティアとイオリ君…多分ティリアは…なら…)



 テッタと組みたかったであろうリーナを手助け出来なかった事を申し訳ないと思いつつ、シャルロットは唯織に向かって走っていく人物に声をかけた。



「ククル?私と組みませんか?」


「えー?ククちゃんイオリ君と組みたーい!」


「イオリ君ですか?もう既にティリアと組んだみたいですよ?」


「えっ!?」



 指を差して驚くククルの視線を誘導するとその先には既に唯織とティリアがペアを組みアリアの元に向かっている姿があり…



「まぁ、そう言う事なので頑張りましょうね?」


「…ちぇ~、仕方ないかぁ…一応こう見えて運動神経いいからね!期待しといて!」


「じゃあ最初はサポートに回りますね?」


「任せた!」



 シャルロットとククルはお互いの手を叩き合う…。



 ………



「…なんか余り物みたいでごめんね?」



 俯きながら肩を震わせているリーナに近づくティアは…



「…ティアさん、絶対に勝ちますわよ…」


「…え?」


「絶対にこの勝負勝ちますわよ…!」


「え、あ、うん…頑張ろうね?」



 何によってリーナがここまで闘志を燃やしたのか察した…。

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