表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第五章開始 色付きの花束と透明な花  作者: 絢奈
第五章 水姫と水都
137/157

遠足前日






「ねーえーりーいーなー!いーおーりーんーどーこー!」


「やかっましっいでっすわっねっ…」



詩織に肩を掴まれがくがくと揺らされるリーナは抵抗する事が面倒くさくなり、為されるがままシャルロットのアルメリアに魔力を溜めていた。



「シャルっ今日のっ分っ溜めっ終わりっましったわっ」


「…少しぐらい抵抗したら?ありがとうね?」


「変っにっ相手っすっるとっ逆っ効果っですわっ」


「ねーえーりーいーなー!!」



前だったら「わたくしは王女ですのよ!?」と怒ってただろうにと笑みを浮かべたシャルロットは選手を後退したリーチェ、テッタペアとアンジェリカ、フレデリカペアの模擬試合を眺め始める。



「くっ!?」


「リーチェ!!」


「はい!!」



植物の蔦を避けさせてアンジェリカの着地の隙を生み出すとリーチェはその着地を狩る為に一直線に跳ねるが、



「アンジェ!!」


「来い!!」


「っ!?」



横から飛び出してきたフレデリカがアンジェリカの腕を掴みながら搔っ攫い、更にお互いを投げる様に回転してフレデリカはリーチェ、アンジェリカはテッタに瞬発した。



「せいやっ!!」


「くぅっ!?」


「それっ!!」


「なんのっ!!」



今度はアンジェリカがリーチェの着地を狩る様に魔道銃の光刃で斬りかかり、後方支援していたテッタにはフレデリカが光刃で斬りかかるが、お互いの隙をついても一向に決定打を生み出せず…



「はーい!みんなちゅうもーく!」



少年の声が闘技場に響き、模擬試合は勝者を生まず終了した。



「…?今度こそアリア先生の本当のお子さんですの?」


「え?あれがアリアちゃんの本当の姿だよ?」


「「「「「「えっ!?!?」」」」」」


「あれ?この姿見せた事ないっけ?あはは」



あははと笑う唯織と同じ美少女にしか見えない軍服姿の少年がアリアの本当の姿で、砕けた見た目相応の喋り方がアリアの本当なんだと思った瞬間…リーナとシャルロットの脳裏に()()()()()()()が過った。



「…待ってくださいまし。わたくしとシャル…アリア先生とサウナに入りましたわよね…?」


「あー、聖水を集める時だっけ?確かに入ったね?」


「…お、男の人とサウナに入ってたの!?!?」


「んー…まぁ、そうなるけど…あの時はちゃんとアリアの身体だったし、ちゃんとタオル巻いてたし…別によくない?なんて無責任な事は言わないけど、あの時は僕の正体を隠してたのもあって…ごめんね?」


「「………っはぁ…」」



可愛く謝るアリアに不覚にも背徳感の様なものを感じたリーナとシャルロットは諦めのため息を吐いた…。



「それはそうと…アリア教諭?何故今日はその姿なんだ?」


「その姿もいいけど、いつもの姿の方が接しやすい?」


「そうですね…なんかユイ君に似てて調子が狂うというか…」


「あー…ちょっとね……今、いつもの姿に戻るとイライラが凄くて…」


「え?イライラですか?」



アンジェリカ、フレデリカ、リーチェに苦笑交じりで答えるとテッタが当然の問いを返した。



「こんな事教師にあるまじき事なんだけど…ムーア王国の一件でしばらく使ってなかった力を使った影響が出ちゃってね…」


「…あ~、そういえば私と殺し合いした時、アリアちゃんあの悪魔達を呼んだ途端、滅茶苦茶性格変わってたもんね~」


「そうなんだよね…どうしても悪魔的な性格に引っ張られるっていうか…まぁ、何かで発散するまではこの姿のままでいるつもりだから慣れてね?」



軍帽を指で回しながらあははと笑うとアリアはここに居ない二人に首を傾げた。



「あれ?唯織とティリアは?」


「あ!ねぇりーいーなー!!いおりんの場所おーしーえーてー!」


「だかっらっおしっえまっせんっわよっ」


「ふ~ん…リーナ、後で唯織とティリアが何処にいるか教えてもらえる?伝えたい事があるんだよね」


「わかっりまっしたわっ」


「はー!?ずるい!おーしーえーてー!!」



最初の時に比べて一体感の様な、本当の仲間になれた様な光景に無垢な笑みを浮かべたアリアはこほんっと咳払いをして言った。



「んじゃ、少し落ち着いて欲しいんだけど…ティリアのお母さんを救う計画を始めようと思うんだ」


「「「「「「「!!」」」」」」」



その言葉で弛緩していた空気は一気に張り詰め、皆が真剣にアリアを見つめる。



「…うん。えっとね、急で悪いんだけど明日からアトラス海王国に向かうから準備して欲しいんだよね」


「随分急ですわね?」


「そこは本当にごめんね?会談を取り付けたりするのは前々から進めてはいたんだけど、みんなにはムーア王国の方に集中してもらいたかったし、今回は戦闘する予定もないから観光気分…いや、アトラス海王国で観光気分は無理かも…()()()()()()()()()…」


「え?僕とイオリですか…?」


「うん…アトラス海王国はね、簡単に言ってしまえば()()なんだよ」


「「「「「「っ!?」」」」」」


「淫都…ねぇ…」



淫都と聞いた瞬間、詩織以外の皆は顔を真っ赤にするが詩織だけは暗い表情を浮かべた。



「僕としてもみんなをそういう所に連れていきたいわけじゃないんだけど…どうせ来るでしょ?」


「そ、そうですわね…淫都と言えど…わたくし達は仲間の為に何もせず、指を咥えて見ているつもりはありませんわ」


「だから今回は個人行動を禁止にして全員集まって行動する様にするからそこだけ注意ね?」


(詩織としては唯織の心傷(トラウマ)ど真ん中の淫都なんて行かせたくないだろうけど…やっぱりティリアの事で唯織と喧嘩した時の影響か前みたいに突っかかってこない…ティリアも大事だし唯織も大事だし決めきれない…全員集まって行動するなら助けられるからギリギリ許容範囲…って所か。成長したね…)



詩織の心内を見透かし笑みを向けると詩織は顔を背けるが、皆が無言で頷いたのを見るとアリアは影に向かって声をかけた。



「んじゃ、ユリ?後はお願いしていい?詩織はちょっとこっちに来てくれる?」


「…ん」


「あいっすー!!…って、驚かないんっすね…」



アリアの小さな影から飛び出したユリは今更驚かなくなった皆にちょっと不満げな表情を浮かべるが、アリアと詩織が離れていくのを見届けてすぐにいつもの調子で話し始める。



「まぁいいっす!今回なんっすけど、アトラス海王国に行くまでの道中で海で遊ぼうと思ってるんっすよ!なんで女の子連中は水着を選ぶっす!!あ、テッタっちはこれっすよ」


「え?半ズボン?」


「「「「「水着…?」」」」」


「まぁ、要するに水遊びをする格好っすよ!」


「「「「「「っ!?!?」」」」」」



指を鳴らすだけでアリアと同じ軍服姿から布面積の少ない真っ赤なビキニ姿になったユリに顔を真っ赤にする皆…テッタの目を強制的に閉じながら紐だなんだと騒いでいるそんな光景を少し離れた所で眺めつつ、アリアと詩織は語り始めた。



「…やっぱり唯織をアトラスに行かせるのは反対?」


「全部見透かしてるくせに性格悪くない?」


「まぁ、魔王だしね?」


「はぁ…そりゃ行かせたくないでしょ。ティリア達の事も大切だけど、私の中で唯織が一番なのは変わらない。でも、今の唯織ならあの時ティリアの身体を治せなかった負い目から絶対に行こうとする…私の我がままで唯織のしたい事を邪魔したくないし…」


「…本当に変わったね」


「死んでた頃の私じゃないし、今は生きてるんだからそりゃ変わるでしょ」


「そりゃごもっともで」


「もちろん唯織が行きたくないって言うなら行かせないし、行きたいって言うならどんだけうざがられようが守るだけだし…だから今回は全員行動って言ったんでしょ?」


「行き過ぎた過保護も少しは正当化出来るでしょ?」


「……ほんっとムカツク」


「え?普通にひどくない?」


「そういう何でも見透かしてます、予定調です、掌で踊ってくださいって感じがムカツク」


「え、ええぇ…?僕ってそんな風に見られてたの…?結構親身になって色々頭悩ませてるんだけど…」


「知ってる。唯織達のお願いを叶える為にどれだけ頑張ったのかも見てるし知ってる。何でも唯織達の思い通りの事をさせて伸び伸びとした人生を送らせてるのと同時に、何時の間にか()()()()()()()()その中に入ってる事がムカツクの。私のこの身体の事だってそう…ムカツクけど嫌ってるムカツクとかじゃなくて………」


「要するに、子供扱いすんな!照れるだろ!って事?」


「…はぁ…まぁ、簡単に言うならそう」


「んー…まぁ、別に僕は詩織の事を子供扱いしてるわけじゃないし、唯織達の事も子供扱いしてるわけじゃないよ。それに…僕は詩織が唯織を求める以上に仲間が居てくれないと何も出来ないんだよ…だから僕を僕として居させてくれる仲間に僕が出来る事を全て注いでるだけ…僕からしたら唯織達も詩織も何も変わらず守りたい仲間で宝物だよ」


「…ふん」



今まで最強の勇者として自分が守る側だったのに何時の間にか守られる側になっていた事に不満で鼻を鳴らすが、口元は笑みを浮かべ頬はほんの少しだけ赤かった…。



「まぁいいや。ならお言葉に甘えてもう少しだけ守られる側でいさせてもらうからね?…おーーい!私も水着選ぶー!!!」


「本当に変わったなぁ……」



照れる様に話を切り上げて水着をおっかなびっくり選ぶリーナ達に混ざる詩織を見届けると、今度はテッタが半ズボンの水着を握りしめて近づいてきた。



「流石にあの状況じゃ男の子はキツイよね?」


「は、はい…ほ、本当にあんな格好するんですか…?」


「そうだねぇ…ユリの格好は流石に際ど過ぎるけど、普通の水着だってあるし流石にリーナ達がユリみたいな際どいのはつけないでしょ」


「な、ならいいんですけど…流石に目のやり場が…」


「…ははっ、本当にテッタは純粋だね。悩める青少年に幸あれって感じだ」



どうしても(フェイナ)と重なるテッタの頭を背伸びして撫でると今度はリーナが赤くなった顔を覚ましながら近づいてきた。



「ん?水着選びは終わったの?」


「い、いえ…決まらないのでわたくし達は一度寮に帰ってから決める事になったのでイオリさんとティリアさんの場所をお伝えしますわ」


「ああ、ありがとねリーナ。…このままテッタを女の園に放り込んだら可哀そうだから一緒に来る?」


「お、お願いします!」


「わかりましたわ」



このままじゃ自分の何かが爆発する危険があったテッタはアリアの提案にぶんぶんと首を振り、リーナは自分の頭の中にある情報をメモ帳に書き写し…



「ここにイオリさんとティリアさんとティアさんと…他にも4人いますわ」


「…座学学部…ふぅん…おっけー、ありがとねリーナ」


「では先に寮に戻ってますわ。テッタさんもまた夕食の時に」


「うん、また後でね」


「…っし、いこっかテッタ」


「はい!」



ユリに連れられて寮に帰るリーナ達を見送りアリアとテッタは唯織達がいる座学学部へと足を向けた…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ