水色に浮かぶ赤い月
水色はすべての色を映すから、空に浮かぶ赤い眼球にも染まってしまった
ぎょろりと見下ろした夜の目は、水色をたちまち怒りの色で染めてしまった
魚の住まないことが幸いだ、炎のように湧き上がった水色は
天に向かいめらめらと、その長い頭髪を逆立てて怒りに染められた
白い龍が降りて来て、それを収めようと氷の息を吐いた
大人しい元の水色に還れと、慈悲の氷を振り撒いた
我を忘れ、マグマのようになっていた水色は
天に向かい炎の槍を次々と飛ばし、白い龍は貫かれて墜落した
やがて月はその光景を見たその目から涙を零し出す
真っ赤に充血したからだのまま、絞り出されるような涙を海へ零した
海の真ん中にいた水色は
涙に染まり、銀色の光をただ浮かべた
静かに銀色の漂う海の上で
オレンジ色の長い髪の少女が泳ぎ出す
彼女の笑顔はすべてを納めるように
いつまでも、いつまでも、過去の歴史を隠すだろう