3話~1歩
「僕は、この村の外に出たいです!僕のまだ知らない世界を見てみたい!」
デルランド様は直ぐには答えず僕の顔をジッと見つめ、少しして大きな口を開いた。
「そうか、外の世界をみたいか。だが、外にはお前、カイルを保護する者などいない。我が守護するのもこの地のみだ。
カイルの思う以上の危険や困難が待っているだろう。この村の住人にとって、この村以上に安全に過ごせる場所などないぞ」
「危険は承知の上です。僕はまだ知らない多くのことを知りたいのです。
この村はいい場所です。イリス母さんは優しいし、龍達は一緒に遊んでくれるし、ミリムと一緒にいるのは楽しい。
でも、僕は僕の知らないもっと多くの物を見てみたい、知りたい、体験してみたい!
この村にいては、僕の願いは叶わないんです、デルランド様!」
デルランド様は再び沈黙し、さっきよりも長い時間、まるで僕の本気を試すかのようにジッと見つめてきた。
大きなデルランド様に見つめられるのはドキドキする。けど、僕はこの日をずっと待ってたんだ。今更、怖じけずいたりするもんか!
「そうか。カイル、お前の覚悟は分かった。だが、覚悟だけではどうしようもない事もある。
この村を囲む山脈、大森林、沼地、大湖はドーサ村の自然の防壁であると共に檻にもなっている。
お前はこれを超える事が出来るのか?
よしんば超えたとして、外の世界を全く知らないお前がそこで生きていけるのか?
我が行うのはドーサ村の守護のみだぞ」
「分かっていますデルランド様。それでも、僕はきっと乗り越えてみせます」
「ーーよかろう。カイルのその願い、聞届ける。だが、今すぐにドーサ村を出ることは認められない。外の世界で生き抜くには、お前は多くを学ばねばならない。力をつける必要もある。
明日から、カイルは我の巣で生活してもらおう。我が外に出て行けると判断するか、お前が諦めて村に戻りたいと言うまでは帰さない。よいな」
デ、デルランド様が直々に僕に外のことを教えてくれるんだ!こんな経験、今じゃないと出来ない。直ぐに外に行けないことは残念だけど、これは村にいないと出来ないことだ。
当然、僕の答えは決まっている。
「はい!ありがとうございます、デルランド様!」