19 真打ち
いつの間にやらみんなが集まっているのは、私の飴細工の前。
「何だか、あれですよねっ」
なんだよぅ、ノルシェ。
言いたいことがあるならいつもみたいにスパッて言ってよぅ。
「上手く言葉にできないけど、あれな感じ、かなっ」
なんなんだよぅ、アイネ。
奥歯になんか挟まってるならべろちゅーして取ってあげるよぅ。
「言ってはいけないワードを禁句っていうの、シジミは賢いから先刻御承知なのです」
なんなんなんだよぅ、シジミ。
そこまで言っちゃいけない言葉なんて、逆に気になっちゃうよぅ。
「みんな、もう少しオブラートに包んであげなきゃ、モノカが闇堕ちしてしまうじゃないか」
クロもかよ。
ってかこっちの世界にオブラートって売ってるんですか、先生。
助けてマクラ、お母さんのなけなしのプライドが飴細工のようにしおしおのしなしな。
「できたよっ、みんなっ」
真打ち登場。 一同、言葉も、無し。
ふわっふわのスポンジケーキで上手にアーチを作って幌を再現。
幌の形が崩れないように飴細工を針金みたいにして補強。
荷台の材料はソフトクリームのコーンみたいなアレ。
四つの車輪はプレッチェルっぽい香ばしさ。
二頭のお馬さんはパンですね、丸っこくって美味そう。
そしてもちろん、幌の左右にはチョコペンで描いたネコさんマーク!
みんな、見惚れちゃいました、よ。
「まだ完成じゃないよっ、みんなが乗らないとっ」
任せろマイスイートハートッ、って、
ごめんマクラ、幌を壊さないように荷台に人形を乗せるのって、めっちゃ難しいの。
「お母さんはこっちっ」
そうだねマクラ、チームリーダーの定位置は筋金入りの方向音痴なのになぜかいつも御者席って、
「……」
御者の隣の席には、小さな小さなマクラ人形。
少し、泣く。




