15 クロ
チームのみんなは焚き火のそばで調理中。
私はクロとふたりきり、みんなから少し離れた場所で、お互いを見つめあう。
「また、やらかしちゃいましたよ、クロ」
「いつも通りに仲間を守って特使騎士権限を行使した、だよね、モノカ」
「いつも通りなら暴れたらそれなりにすっきりするのに、何でこんなに胸が苦しいんだろ」
「気持ちは痛いほど分かるけど、残念ながら特効薬は無いんだ」
「クロでも治せないの?」
「こう見えて私の方がやらかしの先輩だからね。 出来る事ならとっくに自分自身を治しているよ」
「これからどうしよう」
「ひとつ確かなのは、モノカが落ち込めば落ち込むほど、あの娘たちが甘やかしてくるってこと」
「勘弁してくださいよぅ」
「そしてこの状況からモノカが立ち直れば、あの娘たちはますます惚れ直すだろうね」
「永久機関っすか」
「世間ではこういうのをご褒美って呼ぶのだけれど、お気に召さないのかな」
「召す召さないはともかく、自分で撒いた種は自分で何としなくちゃ、なんですよね」
「もしモノカが男で種撒きし続けていたら、今ごろあの娘たちはえらい事になっていただろうね」
「……」
「ごめん、傷心乙女にシモネタぶつけるのは恥ずべき行為だったよ。 これじゃあまるで私とメイジが同レベルみたいじゃあないか」
「本当に仲良しなんですね」
「仲良しなんて言わないで欲しいな。 メイジとの関係は、そうだな、くされ縁ってやつさ」
「良い感じに発酵し合っている、同期のサクラって感じですかね」
「モノカにもいるじゃないか、同期のサクラが」
「アランさんたちは、そうですねえ、頼りになりますしお世話にもなっていますけど、なにせ新婚さんですから、いろいろと気を使うところが多すぎてですねぇ」
「私も彼らとは最近いろいろあったのだが、少々困っているのだよ」
「何かあったのですか?」
「何かあったというか何事も無かったというか。 私もそれなりに経験豊富な医療従事者の端くれではあるのだが、産婆さんだけは未経験なのだよ」
「もしかして奥方さまたちがオメデタ!」
「いや、幸か不幸か今回はそうでは無かったのだが、ここまで関わりをもった以上これからそうなった場合にどうしたものかと……」
「びっくりしちゃうくらいにらぶらぶですものねぇ、あの三人」
「全く、少しは独り身乙女の気持ちを考えてくれても良さそうなものだがなぁ、特にあそこのご主人」
「駄目ですよ、アランさんは奥方ふたりにぞっこんですもん。 周りの女の子のことなんて眼中に無し、です」
「……なんで独身組の愚痴大会みたいになっているのだろうねぇ、モノカ」
「……てっきり励ましてくれているのかと思っていましたよ、クロ」
「お母さんたち、ご飯できたよっ」
「食べましょうか、クロ」
「食べちゃうのはご飯だけにしてくれよな、モノカ」
「……マクラの前でシモネタは禁止ですよ、クロ」
「大丈夫だよモノカ、それよりも無乳同盟にスカウトしたくなる新人さんがいるようだね」
「断固阻止しますよ、クロ」
良い香りに誘われるように、みんなの元へ。




