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12 言質


 一階ロビー、従業員さんに案内されて、部屋の中。


 ボディガードかな、ガタイの良い男ふたりを左右に連れて、


 真ん中でソファーに腰掛けているのは、


 目付きがそこそこ鋭い女。


 ずいぶんとお若いマダムですこと。



「あの子は?」


「……」


「聞こえてるの?」


「先に、名乗れよ、礼儀知らず」


 反応したボディガードを制した女。


「マダムシスレ、知らないの?」


「ニクル王子、知ってるか」


「誰よそれ」


「ニルシェ王国っていう魔族の国の王子」


「だからそれ誰なのよ」


「このあいだ私の家族にちょっかい出してきたんでぶん殴って前歯全部と他にも何本かへし折った」


「脅してるの」


「女相手にでくの棒ふたりはべらせてるのは脅しじゃないのかよ」


「マクラだっけ、あの娘に合わせなさいよ」


「マクラは会いたくないとさ」


「どうして」


「性格だけじゃなくて頭も悪いみたいだから教えてやるけど子どもが家族のために一生懸命作ったケーキをぶんどるような人の心を持ってない悪魔みたいなおばさんには会いたくないのが当たり前だろ」


「……」


「……」


「話にならないわね、いつもみたいにやっちゃっていいわよ」



 おっしゃ、言質いただき。




 ……




 足元にはガタイの良い男がふたり。


 私はノルシェと違って手足の腱を切ったりしないよ。


 肘膝の関節壊して股間を潰すだけだから。


 どっちが治りが早いかなんて知らないけどさ。



 あと、言質取ったからおばさんはこれから人さらいとして扱うから、って聞こえてないか。



 気絶したおばさんかついで両手で男たちの首根っこつかんでロビーの受け付けで謝った。


「これから人さらいをギルドに連れて行きますね、あの部屋とロビーを汚しちゃってごめんなさい」


 そのままおばさんが乗ってきたでかい馬車に全員放り込んで一番近いギルドへ向かった。



 たぶんみんなバルコニーから、馬車に乗るとこ見てただろうなぁ、ごめんねマクラ。



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