第6話 兵器前線
地下物置では、光取り込み用の小窓から朝日が差し込んでいた。その光が眩しくユンナは薄く目を開ける。まるで、長い夢でも見ていたような感覚であった。
小鳥達のさえずる声で、我に返りゆっくりと起き上がる。部屋にはユンナ意外は誰もいない。昨日1日の出来事がまるで嘘のように外は静かだった。
彼女に掛けられていた毛布から、紙切れが1枚舞い落ちた。何気なくそれを拾いうが、文字が書かれているのに気付き、ゆっくりと目を通す。彼が残した手紙だった。
「そ、そんな!」
ユンナの目には、涙が一杯溢れてきていた。そして、必至で彼の後を、追うのであった。
『黙って出ていって済まない、やはり、オレといると君に危険が伴う。これ以上君に迷惑はかけられない、オレはやつらと決着をつける』
『ユンナ、君は生きるんだ……』
彼の置き手紙には、そう書かれていた。
『そ、そんな、そんなーっ……』
『置いて行かないでー、私を一人にしないで……』
彼女はそう心の中で叫ぶと、宛てもなくただ走っていた。いや、走らずには居られなかった。
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荒野に風が吹き荒ぶ。砂塵の中に、白い装甲の彼が1人いた。その周りを、無数の黒い装甲の兵士達が遠巻きに囲んでいた。その遠巻きから1人歩み出る者がいた。
白い装甲の彼は決意の堂々とした態度を示している、もう逃げも隠れもしない。そして、前へ歩み出た黒い指揮官と思われる兵士と会話を交わす。
「ほほう、B.F隊全員お揃いの様だな」
「のこのこと1人で出てくるとは、いい度胸だな」
「さすがは、10人で一国と3か月闘った、元ジャックベレー隊員だけはある」
「まさか、生き残りがいたとはな……」
一人歩み出たB.F隊の隊長は、ヘルメットを外しそう言った……だが、白い装甲の彼の事情をかなり知っているらしい。
そして、白い装甲の彼も、相手の姿に見覚えがない訳がない。何故なら、その者は元ジャックベレー隊員の指揮官だった人物なのだから……
白い装甲の彼は溜息をつくと、また表情を強ばらせた。
「ブリングス小佐……あんただったのか……」
「たしか、今は偉くなって少将になったそうだな……」
「……影の部隊の長と言われるあんたが、B.F隊の指揮官だったか……」
握る拳にさらに力が入る、彼の中には、怒りと恨みで、溢れ返っているようである。
「ファッハハ……」
「心配するな……どうやって生き残ったかなどに関心はない。お前に会うのも、これで最後にしてやる」
「……き、きさま……」
「……罠にはめられたジャックベレ-隊の恨み、忘れては居るまいな……」
「どうだ、時代はやはり、兵器戦の時代になったであろう」
「あの時、肉弾戦しか知らぬ "野生の兵士" は不要との意味、理解したかな」
ブリングスは当時、ジャックベレー隊があまりの強さ故に、コントロ-ルが出来なくなる事を恐れた。そして、先の言葉はまさに、目障りなジャックベレー隊員達を陥れた者の言葉として、十分過ぎる言葉だった。
「それで、敵地のド真ん中で置き去りに!?」
「そうだ……さすがに3ヶ月も持つとは思わなんだが」
「……ガハハ……」
ブリングスのその言葉と同時に一斉に銃口が彼に向けられた。
「……しかし、反逆の情報を得て、テリー隊に志願するとは…….」
「わざわざ殺されに来た様なものだな、お前もテリー同様哀れな奴よ……」
「何もかも俺の思惑通りに行動してくれよった……」
「なんだって!?」
ブリングスの言葉に、敏感に反応する彼である。すぐにある事が頭をよぎった。
「どうも奴らは情にもろ過ぎていかんのだ」
「反逆しなかったW.C隊がまだ半分いるが、今回の件で当分の間全員拘束される」
「いずれ不要な連中だったからな……」
「貴様……テリー隊もハメたのか……」
テリー中隊に対し、非人道的な作戦・殺戮を容赦なく次々と命令していたのは、ブリングスであったのである。それも、いずれ反逆するであろう事も承知で……
暫くうつ向いていた彼だが、2度目の裏切りに、全身に力が入り、震えている様にも見える。そして、再び静かに語りだした。
「……ジャックベレー隊、テリー隊、そして、この村……」
「貴様には、償って貰わねばならぬ事が、有りすぎるようだな」
そう言うと、白い装甲の彼はゆっくりと両腰のダイヤルに両手を充てる。とっさに彼に向けられた銃口から4,5発程発砲が行われ、彼の腹部、右胸、右肩を貫いた。
「うぅ……悪いな、全員あの世へ行ってもらう……」
打たれても尚そこに踏ん張る彼の、Dパックのパイプは既に1本外れていた。そこから僅かに蒸気が立ちこめている。さらに、ダイヤルに結び付けた細目のコード3本をDパックから力いっぱい引き抜いた。
そして、最後の力を振り絞り、両腰のダイヤルを力強く手前いっぱいに回した。
ダイヤルにあるレベルゲ-ジが、グリ-ンからレッドへと変わるのに、そう時間はかからなかった。Dパックから、警告を示す、小さな赤いランプが点滅し、警告音が発しられる。その警告音が、段々と大きく早くなって行った。その冷ややかな警告音が、益々兵士達をおびえさせた。
「なに!」
「なっ、なにをする、貴様っ!」
「Dパックの、反応炉制御回路を!」
高オメガ核融合炉にて莫大なエネルギーを得ているDパックだ。その制御回路が今、外された。後に待つのは、膨大な量のエネルギ-の放出のみである。
「あんたの自慢の兵器は "野生の兵士" の手によって終焉を迎えるんだ」
青ざめるブラックフォックス隊であった。とっさに腰のダイヤルを回し、上空へ飛び立とうとする兵士も何名かいたが……
次の瞬間、閃光と共にホワイトキャッツの彼は白い光に包まれた。それが徐々に大きくなって、B.F隊を次々と飲み込んでいく。
そして、一面の白と黒の世界が交互に入れ替わる。それまで無音の状態だったのが、その後に強風が吹き荒れ轟音が一気に轟く、その強風は、ユンナの所へも届いていた。
「兵隊さーーーん!」
「いやーっ、1人にしないで!」
「死んではだめ!」
ユンナは、吹き飛びそうな身体を、岩にしがみついて耐えていた。
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気が付くと、風は止み空は青く澄み渡り静けさを取り戻していた。
ユンナは、無数の残骸が散る荒野を、漠然と歩いていた。そこには……細かく散った黒い装甲、そして元の状態すら判明しない程の、小さな肉片等が散乱していた。
ユンナは、ある物を見て座り込んでしまった。そしてそれを大切そうに両手ですくいあげていた。それは……コイン程の大きさに砕かれた、白い装甲の破片であった。
「そんな……」
「まだ、名前も聞いてないのに……」
破片を握りしめ、ユンナはその場から、離れようとはしなかった。
「……兵隊さんは、何故私の名前を知っていたの……」
次の日、シェルドン村一帯の区域は、完全閉鎖区域に指定され柵が設けられ、警備が着くようになった。
原子力発電所の事故による放射能汚染によるその被害。と言うのが、閉鎖の理由であると報道により伝えられた。
シェルドン村及びレ-ダ-基地に関しては一切報道はされていない。
その閉鎖区域内に、蒼い装甲の兵士2名の姿があった。破壊区域の偵察と、現場写真、そして、デ-タ収集が目的であった。
「こちら、ブルーシャーク、アルファー1」
「本部聞こえるか、コ-ドJ(暗号パターン)で交信中」
「現在 ZA1(シェルドン村)、快晴(作戦終了)」
「《《兵器前線異常無し》》」
「繰り返す 兵器前線異常無し……」
みてみんでイラスト紹介しています。
セレナ
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ユンナ
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ホワイトキャッツ隊
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