エルフと優雅なお散歩
朝食も終わり、セシルと買い物へと出かけることになった。恥ずかしながらセシルの私服のセンスの良さに見惚れてしまった。…まぁ、元もいいのだが。一部を除いて。
「…そういえばご主人様。この辺の地理についてまだお話してませんでしたね…。」
「ん?おう…どうした?なんかいい場所でもあるのか?」
セシルからこのような真面目な言葉が出るのは珍しい。
「…実はここら辺…谷が無く。大変なのです…。」
谷が無くて大変…どうかしたのだろうか。滝が発生するマイナスイオンがどうのこうのとかだろうか。
「谷が欠けていて大変なんです…」
「…ん?聞いてるが。そんなに大変なのか?」
2回も言うほど大変なことなのだろうか。
「谷が欠けている…まさに"欲"!!!」
「それが言いたいだけじゃねーか!!」
…やっぱり下ネタだった。こいつに期待した俺が馬鹿だった。
「ちなみに谷がないと言うのは冗談です。家の5mほど後方にございます。」
「大嘘じゃねえかよ!!冗談ってレベルじゃねえぞ!!」
本当にこいつはふざけている。
「いいえ、私は本気ですよ。」
「…心の中読むんじゃねーよ!!!」
朝からこいつは大丈夫だろうか。
街を並んで歩いていたところ。隣を歩くセシルが口を開く。
「…そういえば私はお金が無いんです。あそこの人にちょっと身売りして稼いできますね…」
「やめろよ!!そこまでして米食いたくねーよ!!」
歩いてた親父さんすみません。巻き込みました。そして満更でもなさそうな顔するのやめようか。
「ではこの我が家に代々伝わるネックレスを…」
「やめろよ!重すぎて食いたく無くなるわ!!」
…どれだけこのネタ引っ張るのだろうか。
「実は100〇ショップです。」
「ダ〇ソーかよ!!」
実は消費税が入って100円で売ってるものは何一つないというのは言ってはいけない。
「…冗談ですよ…お金くらい持ってます。」
良かった。どうやらお金は持ってきたようだ。これで無かったらシャレにならない。
「ほらここに。…ペソを」
「単価違うわ!!!何処のアルゼンチンだよ!!」
俺に言われれば呆れた様にため息をつきlilyと呼ばれる貨幣を出す。呆れるのはこっちである。
「むむ…アルゼンチン?あるのはチ〇チ〇じゃないですか。」
「少しは隠せよ!!!いや、隠してるけども!」
周りの目が段々と痛くなる。早くこの場を離れたい。
「…まぁ。航平さん。落ち着いて…ちょっとお茶でも飲みましょう。」
そう口にし、近くにあった喫茶店に案内される。
「…確かにな。これぐらいいいだろ…」
…この時こう思った俺を全力でぶん殴りたい