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第24話 忘れられない廃倉庫へ

 ローゼはコルネリアを抱えたまま走っていた。

 コルネリアはずっとリーベの宝玉に蓄積できる限界まで魔力を溜めていた。


 仮面の敵、改めアロイスが“思い出の場所”と称した場所に見当はついている。

 以前フェリクスが誘拐にあった時に連れていかれた廃倉庫のことを指していると思われた。


 廃倉庫への道は忘れようと思っても忘れられない。

 廃倉庫はヌルの中心から少し外れた場所に相も変わらず残っていた。


 三階建ての大きな貸倉庫がいくつか並ぶ。遠目に見ても当時と外観は変わらない。いや、もっと古びた感じになっただろうか。どの倉庫も塗装は前よりも剥げ、錆びているようにも見える。


 中でもローゼ達は【1】と書かれた廃倉庫に注目した。一見したところどの窓も閉まっていて、以前と同じ作戦は出来そうにない。


 過去に起きた、フェリクスがローゼ達に大事な家族が増えたと感謝する事件。【1】の廃倉庫の三階にフェリクスは捕まっていた。


 アロイスがわざわざ思い出の場所と告げたからにはまた同じ場所に捕らえられている可能性が高い。模倣犯なのか、それとも……。気を引きしめていく必要がありそうだ。


 一度廃倉庫から距離を取り、茂みに身を隠す。ここまで休憩を一度もとらず来た為、ローゼの傷の具合がコルネリアは心配だったのだ。


「ローゼ、私リビルドで包帯もらってきたんだ」


 真っ白な包帯と留め具を、腰に提げたバッグから取り出す。


「ありがと。巻いてもらって良いか?」


 と、答えを聞く前に服を捲り腹を見せた。

 傷は深くない。


 だが応急処置しかしていない為か、コルネリアによる止血が済んでいるはずなのに、血が滲み出ていた。


 コルネリアはさっき途中だった治療魔法をもう一度唱えながら、包帯を手早く巻いた。チャームポイントのヘソは包帯で隠れてしまった。


「傷口に湿布型の回復用パッチを貼っておいたから、これでフェリクスを助ける間ぐらいはもつと思うよ。本当は……ううん、みんなで帰ったらちゃんと治療しなきゃね」

「助かる。そうだな、帰ったらコルネリアはもっと強力な治癒魔法を覚えてもいいかもな」

「そんなのが必要ないくらいロージィが強くなればいいんだよ。じゃ行こう!」


 軽口を叩きあい互いを鼓舞する。

 どれだけの数の敵がいるのか、その相手がアンダーマインなのかすらわからない。コネクトで表示されない一般人の可能性もある。


 今わかるのは、目標の廃倉庫の入り口にはアンダーマインが一人の男と一匹いることぐらいだ。

 男の方は殺人犯としてコネクトに表示されていた。

 ヘルマンを襲った時にもいた犬型のモンスターがここにもいるということは、やはりアロイスがいった場所はここで間違いないらしい。


 二人だけで挑むアロイスからの挑戦。


 リビルドの人達も駆けつけるだろうが、助けてもらおうという甘えはない。

 といっても慢心もない。

 だが二人はフェリクスを仲間を安心させたい気持ちでここに立っていた。


 どうせ自分達が来ることはわかっているだろうと、ローゼ達は正面突破することを選ぶ。

 その証拠に扉の左右にアンダーマインたちが立っていたが、肝心の扉は開け放たれていた。


 ローゼはアインタウゼントを靴型装備のまま、アンダーマイン達の前に躍り出た。アンダーマイン達の惹き付け役となりコルネリアに詠唱の時間を作る。


 作戦はシンプル。何度となく使っているプリズムの効果の一つを発揮させる。

 宝玉の魔力は温存。

 新たに魔力を溜めるとコルネリアは詠唱し、プリズムの魔法を発動させた。


 今回も見事に決まり目を眩ませたまま空を掻いているアンダーマインの男とモンスター。

 チャンスとばかりに蹴りを、腹に背中に頭にと、何発も複数を相手に立て続けに猛攻撃のローゼ。


 傷を負っているにも関わらずキレが増していた。それはやることが決まっているからかもしれなかった。


 増援を呼ばれる前に捕縛をすませてしまいたい。


 視力が戻らないまま、懸命にぶんっと腕を振るがそんな攻撃はローゼには当たらない。


 ふらつく犬型モンスター、とどめにとローゼが離れたのを見て、指二本のショートカットに登録し直していた雷の魔法を落とすコルネリア。ダウンする犬型。


 ローゼがもう一人を仕留めるべく、相手の背に回し蹴りを決め、追撃し肘打ちで地面に叩きつける。


 アンダーマイン達が気絶したのがわかると、コルネリアが持っていたロープで縛る。


「殺人犯の男」

「犬型モンスター」


 ローゼ達はそれぞれ手持ちの小瓶に捕獲した。


「楽勝だったな」

「うん、でも同じ作戦はあまり使えないかもしれないね」

「ああ……。言霊も体力もおまけに道具にも限りがあるしな」


 そうなのだ。

 ロープもアンダーマインを封じる瓶も数があまりない。

 警護のリクエストを受けた時に準備した分しか持っていないのだ。追加することは失念していた。


 出来れば遭遇せずに行きたいが、きっとあちらこちらにモンスターか人間を配置していることだろう。

 一つの不安要素だった。


 あとはローゼの体力やコルネリアの魔力が尽きてしまわないかどうかだ。


 魔力がなく魔法が一切使えないが、武器の扱いが上手い前衛士のローゼ。

 体力や力が少なく打撃攻撃などに向かないが、魔法のセンスがずば抜けている魔法師コルネリア。


 ローゼ達は一人で戦うことも可能だが、互いを補い合う二人で一人のビルダーだ。

 なるべく二人で戦いたいと考えていた。


「アイツを倒すまで色々温存できればいいんだけどな」

「うん、私もそう思う。でも仕方ない時も出てくると思うな」

「だな」


 ローゼはコルネリアに向かって拳を出した。

 コルネリアは応えるようにローゼの拳に自分の拳をぶつける。

 言葉遣いが悪く照れ屋なローゼの「がんばろうね」という仕草。


 二人は気合いを入れ、廃倉庫の中へと入って行く。

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