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番外編 第9話 少年の過去と誘拐事件 5

「むせて吐き出したけど飲酒運転になっちゃうかな? 緊急事態だし仕方ないよね」

「あはは、怒られる時は一緒に怒られてやるよ。それよか、頭痛は引いたか?」

「頭は大丈夫、わかった、早く戻ってくる」


 早口に言ってフェリクスはローゼ達が登ってきたロープから下りて行った。


「コルネリア、ごめんな。アタシおっちゃんが宝玉をコルネリアに渡したとき妬いちゃって、一人で全部片付けようと思っちゃったんだ。アタシのせいだ」

「……それは違うよ」


 ローゼの言葉に反応し明確な意志を表す。


「私、ローゼのそういう気持ちもわかってたのに有頂天になって気遣ってあげれなくて」

「なんだ、バレてたのか」


 茶化すように笑うローゼを見るのが痛ましかった。


「それに私達がよく対峙するアンダーマインたちと違って、あの人たちは同じ人間なのに何も通じない気がした。ローゼが銃で撃たれたとき怖かった。怖くて怖くて魔法が使えなくなって、もしちゃんと魔法が使えてたら――」

「コルネリア!」

「ロ、ロージィ……?」

「コルネリアは悪くない。アタシが独断専行したのが悪いんだ。コルネリアのことはアタシが守る。だから安心」

「あっれ~? おかしいな、あの小僧がいないじゃないか」


 誘拐犯達が戻ってくる。作戦会議か何かは終わったようだ。


「お前ら少年を逃がしたな?」

「…………」


 何もローゼは答えない。


「こっちの娘さんに聞いたらわかるのかな? よくみると可愛いじゃねーか」


 銃を片手にコルネリアの顔を無遠慮に触る。


「やめろ」

「お前も口は悪いがなかなかの上物じゃねーの」


 ローゼは胸を鷲掴みにされた。気持ち悪さに頭がくらっとした。コルネリアに向いていた意識が自分に集中していることは良かった。コルネリアがこんなことをされるよりはいいとされるがままのローゼ。


 他の男達もローゼを撫で回す。コルネリアが何か言いかけようとする度、ローゼがそれ以上の大声を出して遮り、男達を挑発する。こっちの黒い女とかお前趣味悪いな、うるさいほっとけといったやりとりが嘲りとともに吐かれる。


「お前らどうせ家出少女か何かだろ? 俺たちが楽しんだ後、奴隷商にでも売って金にするか。小僧は惜しかったけど、これはこれで収穫だな」


 ローゼの足先から傷を受けていない太腿へと手を這わせ下着に手を伸ばしたその時、大きく倉庫の扉が開く音がした。


 何事かとざわめく誘拐犯達。リビルドから応援が来たのだ。倉庫内の階段を上がる音が聞こえる。ローゼ達を呼ぶ声が聞こえる。


 ローゼは悔しかった。コルネリアは悔しかった。

 本当にこれじゃただの小娘じゃないかと。

 

 誘拐犯はあっという間に縛り上げられ連行されていった。残るのはフェリクスと数人のリビルドの人達。


 リビルドの女性が可哀想にとロープを切ってくれた。ローブを羽織らせてくれてルドルフの運転する車に乗せてもらった。


 助けに来たつもりが助けられるなんて、ルドルフも呆れているだろうとローゼ達は自分を責めた。ルドルフが小さくごめんなと言った。たまらなくなってローゼは泣いた。


 その日はフェリクスの無事を祝って朝までお祭り騒ぎ。ローゼ達を元気づける名目もあったのだろう。誘拐されたという話はフェリクスの口からはもちろんルドルフからも誰からも出なかった。

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