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第17話 目玉焼き論争と一時帰還 2

「……またなんでリビルドなんじゃ?」

「そこの料理が好きだ。そろそろ昼飯にしてもいい時間だろう」


 ローゼ達は特に断る理由もなく、アロイスの提案通りリビルドへと向かっている。


 武器屋から歩きながら話をしていた一行。


 アロイスを先頭に街の規模の割に大きくなりすぎた駅に着く。人はまだ疎らで少ない。

 階段を上がると、しばらく進んだところでリビルドに続く道へと階段を下った。

 このルートを知っているということは、アロイスはヌルに何度も来たことがあるようだとローゼは確信する。


 着くなり声をかけられるローゼ達。今日は扉は開放されていた。


「あれ? しばらく帰ってこないと思ったのに」

「ネリアちゃん、また可愛くなったんじゃない?」

「ローゼ、あんたまた違う男連れて、しかも二人も」

「だーーーっ! うるさい! って、なんだ最後のは。アタシが男連れてるとこなんか見たことないだろ! それにそんな間柄じゃねーから……!」


 あはははははと軽やかな笑いが起きる。


「お前さんたちは随分と人気のようじゃな」

「これ、人気っていうのか……」


 ローゼとコルネリアがひとつひとつに返事を返しているとルドルフが二人の姿を見つけてカウンターから手を振ってくれた。


「二人ともおかえり」

「おう」

「少しだけですけど、ただいま」


 ルドルフが優しい笑みを返事とするのに対し、わずかばかりの険しさを見せるヘルマンがいる。


「あんたがここのリビルドマスターか?」

「ええ、一応は。この間は名乗らずすみません。わざとではないのですが」

「ただ聞いただけだ。それよりここで飯は食えるのか?」

「奥のテーブルで頂けますよ」


 カウンターからルドルフが出てきてヘルマンを案内する。ローゼ達もその後に続く。

 テーブルについている客はあまりいなかった。


 お気に入りの店としてリビルドを紹介することに選んだアロイスが適当に注文をすることになり、料理が運ばれてくる。


「お待たせしま……え! あ、え?」


 ローゼ達のテーブルに料理を運んできた少年が驚きに驚く。


「フェリクス! お前何で……」

「あ、ロージィ! コルネリアも! 何だ二人もいたのか~。あれ、でも、依頼でアンファングに行ってなかった?」

「……お嬢さん達の知り合いか?」

「はい! 大事な友達です」


 アロイスの問いに即答したのは意外にもフェリクスだった。

 フェリクスが料理を運び終えた頃。ルドルフはお前もお昼にしてきなさいといったらしく、ローゼ達のいるテーブルにフェリクスも同席することに。


「じゃあ、そろそろ食べようぜ。いただきます!」


 ローゼの言葉が食事開始の合図となった。


 いかにも力のつきそうな料理がテーブルいっぱいに並べられている。ビルダーとしてのアロイスの好みなのだろうか。手を伸ばす面々。


 遠慮がちに食事を始めたフェリクスはアロイスに捕まり、質問を受けている。ローゼとコルネリアも食べる手を止め、アロイスのする質問に耳を傾ける。

 ヘルマンだけはうまいだのまずいだのいいながら庶民のというより、豪快なビルダー向け料理の味を楽しんでいるように見えた。


「ほう……それではお嬢さん達がこの少年を助けたというわけか」

「そうならよかったんだけどな。実際は違う。……アタシは無力だった」

「そんなことないよ! おかげで今もおいしいご飯が食べられてるし、……それに、生きてる」


 いつの間にか過去の事件についての話になっていた。コルネリアにとっても辛い話だったので、別の話題を振ることにした。


「そんなフェリクスが私たちにプレゼントしてくれたものがあるんだよね~。ヘルマンさんわかります?」


 不敵なというよりただの笑顔でヘルマンに迫るコルネリア。


「どうせ、わかんないだろうけどな」

「アロイスさんはその場にいたのでラッキー問題です」

「俺はそういうのに無頓着だ。覚えていない。降参だ」

「じゃあ、アタシの勝ちだね」

「これぐらいの負け、喜んで譲ってやる」


 またも子供扱いされてむかっとするが我慢我慢のローゼ。コルネリアはどうですか? とタイムリミットを切り始める。


「コルネリア、この問題結構難しいんじゃないかな」

「うーん、やっぱりそうかな、それじゃ答えは――」

「そのチョーカーとかいう首輪じゃろ」

「!」


 アロイスに喧嘩を売りかけていたローゼと出題者のコルネリアが驚く。まさか当たるとは思わなかったのだ。ただの話題として提供しただけなのだから。


「なぁに、簡単じゃよ。お前さんたちの服は着込んだ感じがしておるのに、その首飾りだけ新品のように綺麗じゃったからな」

「ああ、そういうことか」

「よく観察しているんですね」


 ローゼは答えの導き方に納得し、コルネリアはヘルマンの洞察力に敬服した。


「職業柄というものじゃよ」


 ヘルマンは謙虚に言が、こういった観察眼も会社を大きくした要因なのだと考えさせられた。


「ごちそうさま。そろそろ、僕は仕事に戻るね。皆さん、失礼します」


 フェリクスが去るとそろそろアンファングに戻る頃合いじゃないかという話になり、ヘルマンもそれに頷く。食事を終えたローゼ達は、リビルドにいる人達に別れを告げたが、ルドルフの姿は見えなかった。


 ガードがいるはずの場所に戻ると、ずっとそこにいたのか車の中には簡易食料で軽食を済ませた形跡があった。


「ご苦労じゃった」


 どかっと後部座席の真ん中を陣取るヘルマン。


「お疲れ様です。あの宜しければお名前聞いてもいいですか? 私はコルネリアって呼ばれてます。こっちはローゼ」

「お疲れ、これ良かったら飲んどくといいぜ」


 リビルドで仕入れた栄養剤をガードに手渡した。


「ありがとうございます。あとで頂かせてもらいますね。私はライナーといいます。あはは、名前を聞いてもらえたのなんて何年ぶりだろう」


 ライナーの嬉しそうな顔が頭に残った。



 今夜は上階のレストランで夜景を見ながらの食事となった。昨夜、星空に見とれていた二人のためということなのだろうか。


 アンファングにはビルが多いのでビルの光が綺麗だった。あまり見慣れない光景にはしゃぐローゼ達。満足そうに食事を平らげるヘルマン。


 ただアロイスがぽつりと、でも星は見えないなといった。

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