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第11話 隣町へ向かう一行

 ローゼ達はここ数年ヌルの街を拠点にしている。


 華やかな隣町のアンファングや他の街などに出かけるのに便利な立地条件を兼ね備えているところと雰囲気が気に入っていた。

 聞いていたよりずっと緑が多かったのも好印象。

 もっと荒れてしまっているのではと、初めて来ることになった時は心配だったが杞憂に終わった。


 リビルドから出るとローゼ達は拠点にしているホテルまで戻ってくると、そこから右に曲がって大通りに向かう。


 ホテルのすぐ南側には、昨日ローゼ達が屋台で買った朝食を食べた噴水のある公園があり、その横の幅の狭い道を歩き続けると大通りに出ることが出来る。

 大通りには馬車や魔法を動力にした路面電車が走っていて、店も多く賑わっていた。


 武器屋、魔法屋、防具屋、道具屋と店が多く並んでいるがどれも高級志向の店で滅多に寄ったことがない。

 デザイン重視の店も多くあり、憧れないわけではないが、結局機能重視で馴染みの店で買うのだった。


「電車で行けば速いだろうけど、歩いた方が少しでも鍛えられて好きだな」


 と、コルネリアに話したつもりだったのだが、


「確かにお嬢さんの言う通りだ」


 と、ローゼに同意するアロイスがいた。


 お嬢さんと呼ばれるのは気に入らなくとも、同意を得られたことには満足げなローゼ。

 その様子を微笑ましく見守っているコルネリアはというと、「魔法で飛べれば速そうなのに」と全然別のことを考えていた。


 大通りを真っ直ぐに行き、ずっと東に歩いていくと隣町に着く。

 大人の足で三十分弱といったところか。


 その間にアロイスから問いかけがあった。


「お嬢さん達は、ロージィとネリアと呼ばれているそうだな?」


 仏頂面で「それがどうした」とローゼ。

 さっきまでの機嫌の良さが吹き飛んだ有様。コルネリアがすかさずカバー。


「ただの愛称なんです。でもビルダーだと通り名で呼ばれることって珍しくないですよね。私たちもそんな感じなんです」


 ちょっと恥ずかしいなという感じを演技するコルネリア。


「アロイスさんもそういう風に呼ばれたりってありませんか?」


 気づいてか気づかずかアロイスは「なるほどな」と頷くと、それっきりリビルドに向かうまでの間、名前の話は出なかった。

 そのことにローゼたちがほっとしていることを感じ取っていそうなアロイスではあった。



 三十分程歩き隣町、アンファングに着いた。

 徒歩でたった三十分しか離れた場所にあるとは思えない栄えぶりで、店も多く思わず目移りしてしまう街だ。


 ローゼとコルネリアが「久しぶりに来たね」なんてキントリヒと呼ばれる華やかな商店街に並ぶ店屋に見とれながら歩いているうちに、右手にはもうリビルドが見えてきていた。


 アンファングのリビルドはヌルとは趣が大分異なっていて、十階建てのビルはリビルドだけで構成されている。

 元々高級志向の大型の店だったらしく、ヌルと違い結構派手だ。


 ビルの一階に受付があり、受付のお姉さんが

 「アンファングのリビルドへようこそ」と笑顔と共に歓迎の言葉をプレゼントしてくれた。


 今回の場合はどんなリクエストか知らされていないので、受付のお姉さんにルドルフの名前を出し、何階に行けばいいのかを聞いた。

 それぞれ各階で取り扱っているリクエストが違うのもヌルより都会だということを思わせる。


「それでしたら十階の特別室で承っておりますので、こちらのパスをお持ちください」


 さも当然といった感じでアロイスに渡されるのが面白くないローゼではあったが、あまり気にするのも本当に子供だと思い気にしないことにした。


 パスはこのリビルド以外でも使われているシステムだ。

 ローゼ達も何度かパスを受け取って特別室に行きリクエストを受注したことがある。


 やはり報酬が報酬なだけに厄介なリクエストなんだろうなと思うローゼとコルネリアの二人。何となくアロイスはこういうリクエストに慣れている気がした。


 アロイスがまたもローゼ達を置いていくようにすたすたと進んでしまうものだから慌てて追いかけた。

 パスを持たないのだから、完全に置いてかれてしまうと特別室に入れない。


 ここでも歩くことは体を鍛えることになるを実践しているのか、エレベーターがあるにも関わらず迷いなく階段を選ぶのだった。


 ローゼは感心していたが肉体派ではないコルネリアはここで体力を消耗してしまうのは手痛いだろう。

 それに気づいたローゼ。


「アタシさすがに階段で全部上がるのはパス。面倒だし。コルネリア、エレベーターで行こうぜ。アロイス、じゃあ十階で」


 四階の階段でアロイスと別れ、コルネリアの手を掴みちょうど来ていたエレベーターに乗り込む。


 ローゼの気遣いに気づきつつも何もいわないコルネリア。こういう時に感謝されるのが苦手なローゼを知っての行動だった。


 代わりに別の話題を振った。


「特別室ってなんか慣れないね」

「ん……そうだな。レナーテさん元気にしてるといいな」

「うん、そうだね」


 コルネリアは特別室と聞くとローゼと出会った頃のことを思い出すのだった。

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