ウイングVSユール
〈始まりの街 ビギニング〉 中央広場近く
〈ウイングVSユール〉 残り時間15分
ライフだけで言うとウイングの方が有利だが、被弾回数ではユールの方が少ない。
「中々やるわね。でも、私の防御を抜くのはかなり難しいわよ」
「そうですね。でも、ボクに攻撃が当たらなければ、時間切れで逃げ切れますよ」
2人のタイプは違うが、負けず嫌いな所は同じか。
「へぇ〜、あの盾使いも中々やるね。でもユールの方が被弾回数が少ないから有利よね」
ルーチェさんがそう聞いて来たので
「いや、決闘で時間切れになったら、ライフが多い方が勝ちだから、この流れだとウイングの勝ちだな」
「そうだね、僕達的にはウイングに勝って欲しいけどね。負けたら少し面倒だからね」
俺達はウイングが、他の事で負けた時を思い出して、そう話す。
「しかし、まだ2人ともスキルを使ってないから、そこで流れが変わる可能性が高いな」
今もユールの攻撃を、盾で上手く凌いでいるウイングを見ながら答える。
『キィィン』
と金属がぶつかり合う音がして、喋るのは一旦止める。
そして、2人の戦いを見るのに集中する。
「ボク的にその盾が厄介です。しかも防御重視なので、殆ど攻撃が通らないです」
「そうね。でも、この盾じゃ無くても、貴方は私に攻撃を一回も直撃させて無いわよね」
「そうですね。でも、それは貴女も同じ事だと思うのですが?」
確かにどちらとも、まだ有効打は無いな。
それから何回も打ち合っているが、2人ともに有効打が無く、残り時間が5分を切った頃には、ウイングのライフは約3割、ユールのライフはウイングよりも僅かに少ない約3.2割位だ。
「レベルの差があるのにここまでやれるのは、ユール君? は凄いね」
チェインがユールを見た感想を喋って来た後
「いや、俺はあの攻撃を上手く凌いでいるウイングの方が流石だなと思うぞ」
「私はユールを応援するわね。あんな胸無しに負けるなユール!」
「おい、それは禁句だ! 前にそれを言った奴と大喧嘩になったんだぞ!」
流石にそれはマズイと思っていると
「アイツ、後で締める」
とウイングのかなり低い声が聞こえて来た。
「今です」
ユールがウイングの隙を突いて、片手剣スキルランク1(スラッシュ)を発動
『ガギン』
と鈍い音がして、見てみるとウイングが、盾スキルランク2(ガード)を発動して完全に防いだ。
「そう来るとは思ったわ」
そう言って反撃の(スラッシュ)をユールに直撃で当てた。
そして、ちょうど時間切れとなって、ウイングの勝利で幕を閉じる。
その後、2人は握手して
「正直かなり苦戦したわ。もし、同じレベルなら負けていたかも知れないわ」
「それはわからないです。ウイングさんも相当強かったので、また再戦お願いします」
なんか、仲良くなっているな。
「ねぇ、フェイク達は今日のお知らせにあった、闘技大会出るのかしら?」
「そういえば、貴女を締めるのを忘れていたわね」
そう言って、ハラスメントにならないギリギリの力でルーチェにお仕置きしていた。
その後、ルーチェをボコボコにしたウイングが
「それで、フェイク。この人達が昨日会ったフレンドでいいのよね」
「今更か! でもまぁ、そこは置いて、この2人が俺達にある依頼をしたいそうだ」
「依頼? 僕達はそんなに有名なパーティーでは無いよ。それに、このゲームは数日前にサービスが開始されたから、有名な人は他のゲームとかから来た人達が殆どだよ」
「そうだな。俺達は全く有名では無いからな。でも、俺個人はそこまで有名にはなりたく無いけどな。後、移動しないか? さっきの決闘で人が集まって来ているから」
周りを見ると、プレイヤーの人達がかなり集まっているので、正直さっさとここから離れたい。
とりあえず、俺達はここから移動して、他のカフェに向かう。
〈始まりの街 ビギニング〉 その辺のカフェ
そして、カフェの個室を借りれたので、メインの話し合いを始める。
「それで、俺達とその闘技大会に出たいと言っていたけど、何故そう思ったんだ?」
「それは、ボク自身がこのゲームで結果を残したいからです。深い理由はリアルが関係しているので、言えないです」
「無理にチームに入れてとは言わないわ。でも、お願い」
そう言って2人は椅子から立って頭を下げて来た。
「正直、僕はどちらに転んでも大丈夫だよ」
「私は手を貸してあげたいと思っているわ。それに、さっきの戦いをもう一回したいわ」
チェインは中立でウイングは賛成か
そして、4人は俺の方を向いて来る。
「それで、フェイクはどうするの?」
「ハァ、わかった。俺も賛成だ。でも、大会に出られるか分からないぞ」
俺は賛成だけど、大会の件は曖昧な答えて返す。
「フェイクその事だけど、最初の3パーティだけ、エリアボスを倒したプレイヤーのチームは、断らない限り確定で出る事が出来るらしいよ。それと、オリエンテーションで戦う事になるよ」
「それなら参加できるわね」
ウイングがそう言ったので、ユールが
「えっ、フェイクさん達はエリアボスを倒しているのですか!?」
「そういえば、昨日調べていたのだけど、始まりの草原のボスが倒されたと書いてあったけど、もしかしてフェイク達なのかしら?」
ユールとルーチェが驚いた表情でこちらを見て来る。
「いや、俺達が倒したのは始まりの草原では無くて、始まりの森林のユニークボスだ」
「「えぇ!?」」
2人がテーブルを叩いて立ち上がった。
「うそですよね。ボク達は軽くですが、攻略サイトで始まりの森林の情報も調べていましたよ。でも、ボスが倒された情報は無かったですよ」
「無かったも何も、俺達この事誰も言ってないからな。ちなみに証拠はこれ」
俺はコンソールを開いて、ムーンソウルラビットからドロップした、ムーンブラックソードを取り出す。
「あの、このムーンブラックソードの性能がかなり高く無いですか!?」
「もしかして、フェイク達はトップ攻略パーティーなの?」
「それは違うと思うわ。元々始まりの森林に行った理由は始まりの草原にプレイヤーが大勢いて、戦闘が出来なかったからなのよ」
「確かに、ボク達もその光景を見ました。でも、レベル1の状態で、レベル5〜8の場所のモンスターを、よく倒せましたね」
この2人、かなりの情報を調べて来ているな。
そう考えつつ話を聞いていると
「それはフェイクが作戦を考えたからだよ」
「でも、レベル差が大きいのに作戦だけで何とかなるのかしら?」
「普通はそう考えるわよね。でも作戦をきちんと考えて、それがハマったらこちらのペースで戦えるから、何とかなったのよ」
確かに、最初のホーンラビットレベル5、との戦いはかなりしんどかったな。
その事を思っていると
「もしかして、アタシ達は当たりを引いたかもしれない」
まさかの、当たりと言われるとは
「ルーチェ、当たりと言うのは失礼と思いますよ」
「そうね。フェイク達ごめん」
ルーチェがそう言って頭を下げて来たので
「別にいいわよ。それより、これからどうするのかしら?」
ウイングがそう言って、話し合いは続いて行く。




