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慧君は間違えない  作者: あいもめ
4/35

番外編:節分

番外編です

とある日の節分です

 2月3日。

 豆をまいて鬼を追い払って福を呼び込む日。

 そして縁起が良い方角を向いて恵方巻きを食べる日。

 そう、節分である。


「おはよう、美咲」

「おはよう、慧。どうぞ上がって」

「うん」


 今日私の家では節分が行われる。

 しかし、慧の家ではもう節分をしないようで、慧だけは招待している。

 ちなみに招待しているのはお母さんである。


「いらっしゃい、慧君。もうすぐご飯が炊けるからね」

「はい」


 我が家の節分は、まず恵方巻きを作ることから始まる。

 各々好きな具材を入れて、恵方巻きを作るのだ。


「じゃあ慧は手を洗ってきて」

「うん」


 今日の慧はテンションが低い。

 きっとまだ起ききってないのだ。


「やっぱり顔も洗ってきて」

「お湯でいい?」

「水で」

「……うん」


 私は顔も洗って目を覚ましてもらうことにした。

 水で洗わせるのは、少し可哀想な気もしたが。


「炊けたわよー」

「はーい」


 そうこうしているうちに、ご飯が炊けた。


「おはよう」

「目は覚めたみたいだね」

「うん」


 慧の口数はあまり変わっていないが、声音が僅かに変わっていた。

 目が覚めた証だ。


「それじゃあ具材を選ぼうか」

「うん」


 お母さんがご飯に酢を加えて酢飯を作っている間に、私と慧は具材を選ぶ。


「どれにしようかな~」

「全部入れればいい」

「それだと巻けないから」


 全部入れられれば苦労はないが、できないから迷っているのだ。


「じゃあ、これで」


 慧は玉子、きゅうり、えびを選んだ。


「私は……これで」


 私は玉子、きゅうり、かに、田麩(でんぶ)を選んだ。

 田麩は空いたスペースにおけるから巻くのに支障はない。


「美咲、欲張り」

「巻けるからいいの!」


 だが慧の指摘で少し恥ずかしくなった。


「そんなに食べたいなら2本巻いてもいいのよ?」


 さらにお母さんからも一言が。

 具材選びに夢中になって気付かなかった。すごく恥ずかしい。

 結局私は恵方巻きを2本作ることにした。


「できあがったわね。じゃあ、いただきます」

「いただきます」

「いただきます」


 私達は今年の恵方を向いて食べ始める。

 しかし、作ってみてから思ったのだが、2本もあると流石に多い。

 食べきれない気がしてきた。

 私はとりあえず食べ進めた。


「ごちそうさまです」

「はい、お粗末さまです」


 慧とお母さんは食べ終わったようだ。

 しかし私にはまだ1本ある。そしてこんなには食べきれない。


「慧、2本食べる気ない?」

「ん?」

「ちょっと多くて」


 私は慧に助けを求めることにした。


「どのくらい?」

「半分くらい」

「分かった」


 慧は助けてくれるようだ。


「食べ終わったら渡すからお願い」


 それだけ言って私は食べ始めた。

 すると、慧は私の前まで来て……


(!?)


 反対側から食べ始めた。

 食べてる途中だったので声は出さなかったが、ビックリである。


「あらあら、若いわねぇ。私もお父さんとやろうかしら」


 お母さんがなにか言った気がしたが、私には届いていない。

 私の頭は眼前に広がる慧の顔を見るだけで精一杯だ。

 慧は私が目の前にいることを全く気にしていないようで、どんどん食べ進めていく。

 徐々に慧の顔が近づいていく。


(……)


 私の頭は真っ白になった。

 もうすぐキスしそうというところで、慧は恵方巻きを噛み切って食べるのをやめた。


「ごちそうさま」


(え……?)


「あらら? やめちゃうの?」

「ん? 半分なら食べ終わりましたけど?」


 私の思考が徐々に回復していく。

 要は、私が助けを求めた分を食べただけ、ということだ。

 私は恵方とは逆方向に向き直って、残りを食べ終えた。


「美咲、どうしたの? そっちは恵方じゃないよ?」

「誰のせいだああ!」


 私は、伝わらないと分かっていても、叫ばずにはいられなかった。

ここまで読んでくださりありがとうございます

節分というか、恵方巻きの方が正しかったな……


--------改稿--------

誤字を修正しました。

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