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制裁に手加減は不要

「「よりによって一番会いたくない人に会ってしまった……」」

「何がどういう偶然でこうなるんだ……」

「しかもその人と普通に会話してた……。男の黒宮蓮じゃなくて、女の蕪城ゆずとして話をしてた……」

「普段でさえそうだってのに。どうせならもっと女の子らしくしてくれたほうがまだよかった。もう男として生きていけそうな気がしない……」

「大丈夫だ草薙。外見で悩んでいようが心は男だってこと、私はちゃんと知っているぞ……」

「ありがとうございます邦岡さん……」


 向こうの木の陰のほうで縮こまって意気消沈する者が三人。


 そこから離れたところでまた別に話をする残りの者。 




 いろいろあってなんかもうごっちゃごちゃになったんだけど、とりあえずここはひとつ。


 音田浩。……もとい改めまして、袴田美音による、大体原稿用紙一枚分ぐらいの容量にまとめたこれまでの私たちの行動について。それを語ることにしましょう。




 朝起きてみたら麗しい美少女になっていた蓮君と物静かな少年になった希愛ちゃん。自身の能力では根本の解決にはならないため、元に戻る姿を探すべく街を併走していた蓮君は、ひょんなことから紅葉ちゃんとエンカウント。恥じらいでメンタルボロボロになりながらも、希愛ちゃんのかなり強引な方法でなんとか取り持って再び行動開始。


 一方それとは別で行動していた私は、これまた少年となった麗奈とばったり。それぞれ音田浩、吉村誠也という仮染の名前で別行動を開始。その途中で私はリリーシェこと李梨華ちゃんと。麗奈は班長と悠君に遭遇したようで。そのあと場所を変えた私達は、この事件に関する話をしていた蓮君たちを発見してアプローチ。もちろんこの時は彼だってわからなかったわよ。それくらい蕪城ゆずが完成されていたと思うわね。


 でもって私の思う本命の調査の前に麗奈と合流して行こうとしたところでこれまで話した人全員。執行班と蓮君の妹の希愛ちゃん計八人が集結。


 皆が全員の正体を知る前に解決するかと思ったんだけど、不知火蓮と名乗った紅葉ちゃんの一言によってすべてがほつれて、全員の身元が判明ましたとさ。


「という感じかしら、李梨華ちゃん」

「約五百文字。ちょっとアウトだね美音さん」

「まとめるってむずかしいわねー」




 それで、どういう流れで判明したのか。についてだけど。


 まず紅葉ちゃんが男の姿のままで悠君に気づいて彼のこと呼んだんだけど、当然悠君は混乱したわけよ。

 そら知らない人に自分の名前呼ばれりゃ誰だって驚くわねー。そのあとは流れ流れて全員がお前は誰だよ、ホントは違うんだろ、お前だっていうなら証明してみろっていうもんで。

 でも今の姿がそれだから、身分証見せたくらいじゃ解決しないわけよ。それぞれ部分的にわかっていても全員の正体をはっきりと知っている人はこの時居ないわけだし。


 でもってその証明、全て一気に何とかするために、架谷さんが二秒間だけ能力使いました。そうしたら疑いも晴れてめでたしめでた――――――




「「「いやめでたくないからぁぁぁぁ!!」」」


 袴田の話が聞こえていたのか、座り込んでいた三人は立ち上がって彼のほうに向かって叫んでいた。


「結局何も解決してねぇんだよー!! むしろ変な疑いが増えたような気がするんだけどおぉー?!」

「何があろうと僕の扱い変わってないような感じがするし!?」

「というか根本の問題がまだ解決していないのにめでたしめでたし。じゃないだろう! まだこの姿のままじゃないか! 戻ってないじゃないか!」

「「「……」」」

「「「はあ゛ぁーー……」」」


 言いたいこと叫んだあと、またその三人は座り込んでしまった。




「どうするんだ。あのままじゃ行動も何もないぞ」

「うちの精神安定剤組の二人がこれじゃあ、どうしようもないわねー」

「なんですかその呼び方……。お兄ちゃんたち執行班がまともな集団でないような響きですけど」

「そのままの意味ね。自分でこんなこと言うのもあれだけど、結構変わり者が多いから、性格まともな人を私が勝手にそう呼んでるだけ。安心して。あなたのお兄さんはまともなほうよ」

「ネジの外れたお兄ちゃんは、もう見たくないなぁ……」


 当の本人が言えたことじゃないんだが、彼女曰くのことだそうだ。

 尚、降順で邦岡、黒宮、崎田、草薙、天王寺、袴田、北島だそうで。


 そんなどうでもいい話はともかくとして、あの三人には動いてもらわなければならない。という意見は合致しているようだ。




「というか蓮君達をどうにかしないことには、行動も何もない気がするけど。放置ってわけにもいかないからなー」

「それは崎田と同意見だ」

「それにしたってどうするの。麗奈ってネガティブになると、てこでも動かなくなるのよ」

「って言ってますけど立ち上がったみたいですよ」


 そういう李梨華の指さしたほう。彼女の言葉通り三人は立ち上がっていた。のはいいが。


「しかしだ。彼女らから邪悪なる覇気を、殺気を感じるぞ……」




「いい方法などない。しかしだ。やることは決まった」

「えぇ。犯人の野郎を憎しみで滅する……」

「イエッサー。ロケランの用意はできている」

「一丁借りようか、草薙」

「こちらにも一本頼む、悠」




「何言ってるのかわかんないけどあれ絶対やばいやつだよ。とんでもないやつだよ」

「どうするのよあれ。このままじゃ此処ら一帯が戦場となる」

「いや無理無理。いくらこの現世の大魔術師と謳われたリリーシェといえど、止められないものもあるっての」

「邦岡さんと蓮君があんなんじゃもうどうしようもないじゃんかよ……」

「なら力づくで止めてくる」


 天王寺が三人のほうに向かおうとするが、袴田がそれを引き止める。


「やめときな班長。今の彼女らに向かっていったところで二秒で始末される」

「冗談にもならないことを言ってくれるな」

「じゃあじぶんがー」


 そう言って前に出たのは黒宮希愛であった。右手を前方に掲げると、その先にいた三人をまとめて浮遊させる。




「「「!?」」」

「ってまたこのパターンかーい!!」


 希愛は一度目を閉じてから咳払いすると、きりっとした表情に変わってから浮遊している蓮たちのほうを見る。


「下ろしてほしかったらまずは冷静になりな。愚痴なら後で聞いたげるから。」

「にゃ、野郎……」


 反論する隙も与えず、さらに浮き上がらせる。


「三人とも、下ろしてほしかったら素直にこちらに従え」

「邦岡さん、悠。今は大人しく従いましょう。それこそこのまま地面に叩きつけられますよ」

「あぁ」

「御意」


 二人の返答を聞いた蓮は希愛のほうを向き、一瞬こぼした笑みを隠して懇願した。


「わかったわかった。大人しくするから下してくれ……いや、下してください希愛さん」

「……」


 無言で頷いてから、ゆっくりとおろしていく。地面に足が付いたことを確認すると蓮は身を翻した。




「はっはっはー‼ お姉ちゃんがいつまでも大人しくいると思うなよ!! こちとらうっぷんがたまっとんのじゃーー! 止められるもんなら止めてみやがれー!!」


 逃げて行った。


「……」


 何も言わず、逃げる姉のほうに腕を伸ばす。そして伸ばした腕の、手首から先を天に掲げた瞬間。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁーーー……」


 ロケットのごとく垂直発射。蓮は空の遠くへ。あっという間に小さくなっていく。


 それを見る者、希愛以外ただそれを唖然と見るだけだった。


「草薙。あれを敵に回してはいけないと思うんだ」

「……同意見です」


 二人は青ざめていた。


 しばらくして自由落下で落ちてきた蓮を、希愛は念動力を使ってすんでのところで減速させて、着地させる。


「土下座」

「……大変申し訳ございませんでした希愛様」




「妹補正付きとはいえ、あの子逸材だと思うのだけど」

「あぁ。俺も同感だ」




 ようやく取り直した三人を含め、やっとのことで打ち合わせができた。次に向かう場所は邦岡さんもここに向かう前からそうだと決めていたようだ。


「よし。じゃあ犯人始末してくるか」

「言い方をどうにかしなさい」


 早速その場所に一同向かおうとしたところで、袴田は蓮を呼び止める。


「あぁそうだ。向かう前に一つだけ頼みたいことがあるの」

「なんです?」



「揉ませ」


 拳と銃弾が命中したのは、ほぼ同時であった。




「先に始末すべきはこっちでよかったな、悠」

「そうだね」


 ひとまず彼が起きるまでの数分は、休憩にあてがわれた。

「あの三人黙らせるって中々のもんだな」

「力技とは言えねぇー」

「やっぱり妹には頭上がらないものなのかな。真琴ちゃんも時々そういう話するし」


勝てません。色々と。

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