調子乗るのもほどほどに
早期解決のためというか、そうせざるを得ない空気にされたというか。やむなくという形でこの変人達……とい通り人と調査をすることとなった。
彼らは、既に犯人がいるようなところにはある程度目星がついているといっていた。音田さん曰く、自宅はここからそれなりに離れているそうだが、朝からこの状態だそうだ。この被害自体、かなり広い範囲に及んでいるということになる。
これでは捜索範囲は縮まらないと嘆くしかないかと思ったが、彼の推測上、発信源。今回の場合はその能力者ということになるが、そういうものは人の多い場所にいるだろうというのが彼の考えだ。
ここに来る前に繁華街のほうは調査をしてきたそうだが、そちらは既に調査を済ませているそうだ。駅のほうの調査を友人に任せ、音田さんは人の集まる場所の候補の一つとしてこの場所を選んだそうだ。
しばらく歩くうちに並び方が変わっていた。最初は音田さんとリゼルさんが前にいて私たち三人が後ろを歩いていたが、気づけば私とリゼルさんの位置が入れ替わっていた。少し早く歩きすぎただろうか。横にいる音田さんと調査のことで話をしていた。
「音田さん。そういえば向こうの方行って降りた先って観光地なんですけど、そっちは調べたんですか。あのあたりって結構人が集まるところですし、向こうとしてはうってつけな気がしますが」
ふと思ったことを音田さんに話すと、彼から推測論が返ってきた。
「その必要はないと考えている。あなたの言う通り確かに人が多いけど、観光地って以上いろんな人が集まる場所。出身地問わず、外国人だっている。おそらく今回のことは実験と考えてる。そういう場所は事後処理のことを考えれば不向きなんだよ。それにあぁいう場所だと隠れようがない」
「成程。そのバランスを考えて、今この場所にいるということですか」
多すぎず、少なすぎず。適度に人がいる。なおかつその場にいる人を地元民と、ある程度限定できる場所。そういった場所を候補として絞っていたのか。それだったらかなり場所を限定できるな。
「そんなところ。呑み込みが早くて助かるよ」
「普段からまとめ役をやらされるので……。そのおかげか頭の回転が少しばかりか早くなったような気がするんですよ」
特にクラスのリーダーシップを執るようなタイプではないんだが、何かにつけると決まってか、グループ活動の班長とかリーダーとかに推薦されていた。断る気にもならなかったというか、ノーと言えないタイプというか、本来の意見を表に出さなかったというか。なんかそんなことでいろいろ話をするのも面倒だったので、特に反論も謙遜もすることなく了承していた。向いてるって言われる分には悪くはないし。
執行班でもそんな感じだ。班員の統括は副班長である邦岡さんがしているが、二年のまとめ役なんかは自分が引き受けることが多い。何で班長である天王寺さんでないのか。ということは今は言わないでおこう。
「今更になるけど、そうだって思ったのなら午前の調査は必要なかったかー。まぁれ……彼が入念にというもんだからか」
「怪しいと思ったなら調べるに越したことはないと思いますよ。その言い様ですと何も収穫はなかったって感じですけど」
「まさしくね。おそらく向こうも苦労してると思うよ」
彼らが最初に見当を付けていたのは、近くにある病院の裏通り付近。通りからはあまり離れておらず、ひっそりとしている場所であるということだ。この近くにも似た場所、候補がいくつかあるそうなので、そちらも順を追って調べていくという事だ。そこに向かって歩いていく途中、私の右のほうに人影がぬっと割り込んできた。
「どうしたの透。また擦り寄ってきて」
今は透と名乗る、希愛がこちらに。
「彼処。なんか居づらい」
「そ、そうね」
その短い言葉からだけでも、何となく希愛の気持ちはお察し出来る。彼の指さした三メートルほど後ろ、二人の男性が会話をしているのが見えるが、それに堪えかねて逃げるようにこちらに来たのだろう。現に少しばかりが会話が聞こえてくる。
「黒幕にはそれ相応の裁きが必要であるな。其方よ、何か名案はないか」
「そうだな……。拷問はさすがに行き過ぎなものだからな。その者にも同じ宿命を背負ってもらうというのはいかがだろう」
「それは面白い考えだ。もしくは、我の錬成の手伝いでもしてもらおうか」
「錬金術か。そりゃあ面白いな。今度見せてくれよ」
「ふっふっふ。よかろう。この動乱が解決した暁には、その目撃人となる名誉を与えて進ぜようじゃあないか」
「何か意気投合して、よくわかんないことばっかり話してる。姉さん何とかして」
「何とかと言われても」
最初会った時から、どこぞの誰かさんのような話しぶりだし、内容もそうだし、なにより紅葉がそれに乗っかっちゃってる。そりゃ希愛も逃げてくるか。
「あぁいうのはほっとくのが一番なの。相手しようとするとそのまま飲まれちゃうから」
そう。こういう場合、放置が一番だ。
「そう。なら姉さんの横にいる」
後ろの二人をはんば放置する形で、最初の目的地のほうに向かっていった。
「そうだ。というわけでこっちきてもらえるかい? 病院から少し離れたところに大きな交差点がある。そこで落ち合おう。あぁ、よろしく」
最初の調査が終わった後、音田さんが誰かと電話をしていた。結局今回は収穫なし、というよりは外れというべきか。
「今の相手、さっき言ってたご友人さんですか」
「そんなところ。次行くところが本命だと考えているから、その人と合流してから行こうと思ってね」
「そういうことは先に言ってくださいませんか。それで、その友人はどういう人なんですか」
「名前……今の仮名は吉村誠也。しっかり者で抜かりないって感じだな」
「そうですか。そういう人だというなら安心しました」
冷たい視線をその人に向けながら淡々と応える。
「もしかして、お兄さん信用されてない感じかなー」
「そうですねー。今聞いた話だけから判断することになりますが、少なくともあんな話しかけ方をするどこかの誰かさんよりかは、その人のほうが遥かに信用できそうですねー」
音田さんが待ち合わせに指定した場所に向かい、そこで彼の友人を待つことにした。
「どのくらいで着そうですか?」
「すぐにバスは捕まえられそうだとは言っていたから、あと二十分くらいだろうか」
「そうですか。ではそれまで、ゆっくりと休むことにしましょう」
「あぁ、そうだ」
音田さんは胸ポケットから、四つ折りにされた紙切れを取り出した。
「何ですかこれ。もしかしてなにか重要なことが書かれているんですか」
「あぁ。とても重要なものだ」
そう言って音田さんは私の左手を掴んで自分のほうに寄せると、左手を開いてその紙切れを握らせた。
「僕の連絡先」
「は、はぁ」
いや。このタイミングで何でそうなるんすか。
「この出会いは運命だと考えているよ。同じ悩みを持つ者同士がこうして出会うことができたんだ。それに、君のことをもっと知りたいとも思うんだ。よければ今後も……」
その時だった。視界の左の方から、鉄拳がスクロールしていったのは。
「汝に問おう。未知との遭遇をする覚悟はあるか?」
「愚問だな、大魔術師さま。覚悟なければこうして其方の話を聞きやしない」
「いい答えだ」
「(聞いてるだけで頭痛い)」
俺は正直もう慣れた。




