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被害者の集い

 紅葉が話したいこと話し終わったところで、本来の目的を果たすことにしようか。


「それで、この後どうするの。このまま話してても何も解決しないんだが」

「「ですよねー」」

「少しは緊張感ってものはないの……。とにかく。まずはお互い知ってる情報、ないし各自の推測について共有することから」

「「へーい」」


「ってかもう気持ち切り替わってキャラ出来てるし」

「さすがにもうしょげてテンションダダ下がりってわけにもいかないと判断しただけ。さっき希愛に言われたようにこの憤りのすべては犯人にぶつけることに決めた。ハッキリ言って、性に合わないことだけどやむを得ぬことだというのならそれくらい我慢する」

「そっか。じゃあ私……俺もそうしよう」

「ところでお兄……姉さん。情報共有したところでそのあとどうするつもり?」

「……」


 情報共有しようとは言ったが、そうするだけの情報があるわけでもない。はっきりとそうだと断言して言える情報がほとんどないため、殆どが推測になる。


 それ故、人数増えただけで何をするにしても変わらないような気がする。紅葉が何か私たちの知らない情報を持っていたらとも思ったが、そういった情報はなかった。


 一言で言ってしまえば、手詰まりなのだ。




 一応思い返すために、現段階でわかっていることを確認してみることに。

 現時点での被害者はここにいる三人。これまで出会った人は、特に慌てている様子は見られないため被害にはあってはいないだろうが、私たち三人だけがピンポイントで被害にあっているとは考えにくい。おそらく他に被害者がいると考えてもいいだろう。


 でもって私の能力だけだと、この件は解決には至らない。一時的に元に戻っても、解除してしまえばそれっきりなのだ。

 ならずっと使ってしまえばいいだろうと紅葉には言われたが、それだと私の身体が今日一日どころか、一時間と持たない。


 効果範囲もそうだが、あまり長いこと持続させられないというのもネックなところなのだ。

 編入当初に天王寺さんと手合わせした時、最初のうちは相手が近づいてくるタイミングを計って能力をこまめこまめに使っていたが、最後は深く考えることを放棄してずっと能力を使っていたので、かなり疲弊してしまった。

 あの後紅葉に頼んで使ったごく一瞬だけはまだよかったが、あのとき小松先生があの場に現れずに手合わせ続けていたら、間違いなくあの場で自滅して倒れていただろう。

 どうすれば長いこと持続させられるのかと時々考えてはいるが、鍛えて体力つける以外の案が思い浮かばない。




 それに俺がいちいち被害者探し出してこうして解決するよりも、俺たちの姿を変えた能力者を探し出したほうがはるかにいい。火元を消すのが一番だ。


 まぁ今は、私の能力が云々という話についてはいいだろう。


 でもってこうなる原因として考えているのは、能力者が断続的に能力を使っているため、自分の能力がバリアの役割をしているから。そういう意味でも被害者を探すよりも、能力者のほうを探したほうがいいだろう。

 とは言うが、そんなこと今まで任務でもしたことがないので、見つかるものなのかと不安でもある。




「ところで、真琴ちゃんはどうしたの?今更だが、一緒にいるものかと思ったんだが」

「それなんだけど、最初はそっちのほうに意識が向かなくて二人で家を出たの。そのあと誰かに相談しようと思ってその時にやっと、真琴に電話かけたんだ」

「そうだったんだ。でも今はここにいないの?」

「今は京都にいるんだそうで。それもあって真琴は被害を受けていない」

「そっかー。じゃあお土産よろしくーって伝えてほしい。八つ橋食べたい」

「今はそれどころではないことを理解してほしい」


 とまぁそんな冗談はさておき。


「すいません……。それで、この事態は他の誰かには相談したの?」

「そうしようと思ったところであの騒ぎが起こって。それもあって相談も何もなかった」


 電話をかけようと思ったところに突然話しかけられ、説得して断わってとっとと行ってしまおうとしたところに、それを勘違いした男体化紅葉がやってきてややこしいことになり。

 ドタバタしていつの間にかその騒動が解決したかと思えば、正体ばれてメンタルボロボロになって今に至るわけで。


 まわりくどい説明になったが要するに、まだ真琴とこの場にいる者以外にはこの事態は説明していない。つまり、そういうことだ。


「そっか。誰に相談するつもりだった?」

「邦岡さん。執行班の中じゃ一番冷静に取り合ってもらえると思ったから」

「確かに」

「わかる。邦岡先輩カッコいいですし、すごく頼りになるって感じですから」


 そのあたりは、意見が一致したようだ。


「結局は他の人にもこの情報がいきわたるとは思うが、最初は信頼できる人にしたいと思っている」

「そりゃあ同感。じゃあ早速電話を」




 電話を掛けてみるが、邦岡さんからの応答はなかった。少しだけ時間をおいてからもう一度掛けてみたが、結果は同じだった。


「……出ない」

「お取込み中とかじゃないのー」

「なぁ……。まさかとは思うけどさ。邦岡さんも同じようなことになっていて、それで電話に出られない……とかは?」

「考えたくないけど……その可能性もゼロではないのよね」


 今わかってる被害者はここにいる三人。これまでにすれ違った人、私が途中で会った泰牙は何の変わりようもなかった。

 しかしだ。さっきも思い返したように他に被害者がいる可能性は大いに高いだろう。


 例えばだ。今ここにいる三人に共通点があるとすれば同じ高校、兼城学院に通っているということだ。もしそこの生徒を狙って能力が使われたと仮定するならば、邦岡さんもその影響を受けていることになる。

 もちろん彼女だけではない。他の執行班の面々、生徒、あわゆくば教職員にだって影響が及んでいる可能性があるのだ。


 あくまで可能性の話だが、兼城学院の生徒が対象となっている。その可能性は大いに高いような気がする。


「どうしようか?」

「何にしても結局は知られることとなる。隠す必要自体がかえってなくなるような気がするわ」

「そう言ってるわりにはさー姉さーん。顔赤ーくなってるけど」

「こ、これは……いわゆる、いた仕方ない犠牲……というものだ。問題解決の為のやむを得ない手段を選んだにすぎない……。それだけのことだ……」

「恥じらいを殆ど隠しきれてない時点で、もう犠牲も何もないと思う」


 万が一悪い意味でばれようものなら、そのあとが怖いのだ。極力考えないようにと務めているが、頭から抜けないのだ。


「まぁともかく、ここでうじうじと話をしていても仕方がない。正直こういうのは面白いけど、さっさといつもの姿に戻りたいのは同感だね」

「そーいうことー」

「なら決まりね。ひとまず移動しようか。今度は街のほうに向かって歩いてみようか」


 ひとまず自宅まわりをうろうろとしたところで今度は少し遠くのほう、人の集まる街のほうを調べることに決めた。




 と言いたいところだったが、紅葉の要望で先に昼食を摂ることにした。

 公園で話すよりも、落ち着いて話ができる分にはいいか。街に向かう道中で見つけた飲食店に立ち入ることにして、改めて作戦会議をするという意味も兼ねて休憩することに。


「それにしてもどうします?」

「どうーって、街に行くんじゃないのー?」

「……そうじゃない。具体的にどうするのかっていう話。闇雲に歩き回っていても意味はない」

「そーそー希愛ちゃん。執行班って、時々アドリブというか各々の独断で動くときもあるけど、任務の時はもちろん、調査の時もある程度方針は決めてから動いている。任務中であっても連絡とりながらやってる。もししばらく経って執行班に入る時に備えて覚えとくといい」

「……説明するのは結構だが、せめて今はちゃん付けはやめとこうか。ちょっと気が抜けてきてるんじゃないのか。変に見られるよ」


 もちろん自分たちの他にもお客さんもいるわけなので、大きな声出して迷惑をかけないというのはもちろんのことだが、事の詳細を下手に知られていいものではない。もちろん外にいるときもそうだが、こういう狭い空間に人の集まるような場所にいる場合、その注意はなおさらだ。


「そうですね……」

「話すにしてもあまり大声たてないように。周りに変に思われるし、何より迷惑になる」

「りょーかーい。てかお兄……姉さんはもうキャラが染みついてるのねー」

「なんか嫌でも慣れた……って感じかな。ともかく食べながらで構わないからどうするのかについて決めよう」


 照れ隠しに飲み物を一口。図星ってのもそうなんだがこの演技、姿に慣れてしまっている自分が恥ずかしい。




 いったん冷静になって、物事を整理しつつ今後の事について話し合う。食事をしてリラックスしながらというのもあるが、朝のわたわたしていた時に比べればだいぶ落ち着いていた。


 まず決めたことは能力者を探すこと。これについては朝から変わらないことだ。いくら効果範囲が広いにしても数十キロと及ぶようなものは聞いたことはない。なので、少なくとも歩いていけるような範囲にはいるだろうと踏んだ。


 後は人目につかないような隠れられそうな場所を、地図アプリを見ながらいくつか思い浮かぶ限りでピックアップした。

 こういう騒ぎを起こしている以上はうろちょろと人目着くようなところを移動しているとは思わない。だったらどこかに隠れている可能性のほうが高いであろうという、執行班として先輩である紅葉からの意見だ。

「その前になんだが……」

「んー?」

「何かあったの?」

「お腹すいた」

「「……」」


 足止め。

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