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平穏に暮らしたい俺は、いつしか騒動に巻き込まれる。  作者: 夘月
CHAPTER4 怪しき瞳とココロの鏡
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彼女の笑顔

 土曜日になり、俺はバイクを磨いていた。現在の時刻は九時。約束の時間は1十四時なので、今のうちにこちらも用意をしていた。その一つがバイクの点検と清掃だ。


「燃料は問題なしか。じゃあ磨くとしますか」


 バケツに汲んだ水に布巾を突っ込んで、取り出して水気を絞ってからそれを使ってバイクのボディを磨く。一通り磨いてから、今度はマイクロファイバークロスでボディの水滴を拭く。これだけでもバイクが見違えるように、輝いて見える。


「朝からやけに気合入ってるんじゃないの?」


 こっちのほうを覗いていた真琴が近づいてきた。バイクを磨きながら彼女と話をする。


「約束の時間は午後だし、今のうちにと思って。最近執行班とかで忙しくて、手入れを全然してなかったからさ」

「ふぅーん」

「時間になったら乗せていこうか?」

「いいわ。その前に用があるから」


 午後からの件について真琴も一緒に行くので、乗っていかないかと聞いたが、珍しく断られてしまった。お言葉に甘えて。って言うと思ったんだが。


「そうかわかった。じゃあまた後でな」


真琴は向こうの方を向いたまま手を振って去った行った。


”私じゃなくて、乗せていくべき人がいるんじゃないの?”


 なんかつぶやいているようにも見えたんだが、遠くにいるんで流石に何言ってるのかはわからなかった。


「まぁいいか。さっさと磨いてしまうか。でもって……だったら彼女を迎えに行くか」


 ひとまずバイクを磨くことに専念することにした。




 約束の時間の四十分も前に家を出た。十分程バイクを走らせて、最初の目的地に到着した。一応集合場所はアミューズメント施設ってことになっているが直接そこには向かわず、ある場所に寄り道。というよりは経由するというべきか。立派な大きな正門が目を引く彼女の家。エンジンを切って少し待っていると、その家の門が開き、少女が一人出てくる。彼女は俺がいることに気が付くと、笑顔でこっちに走ってきた。


「蓮くーん!」


 勢いよくこっちに向かってきた彼女を、俺はそっと受け止めた。


「お待たせ紅葉。じゃあ行こうか」


 紅葉に青いヘルメットを手渡す。彼女がそれをかぶって俺の後ろに座ったのを確認すると、バイクのエンジンをかけて軽快に走らせた。


「それにしても真琴ちゃん乗せていかなくてよかったの?」


 運転している間、紅葉がそんなことを聞いてきた。


「最初はそうしようとは思ったんだが、それ言ったら大丈夫だって真琴が言っててな。まぁ無理強いするわけにもいかんから身を引いたんだが」

「それで私を迎えに来てくれたの?」

「そんなとこだ。もしかして、そんな理由じゃ不本意だったか?」

「そんなことない。むしろ迎えに来てくれてうれしい。二人でこうやってバイク乗れるんだから」

「そう言ってもらえるなら、よかったよ」


 安堵の息をついて、俺は威勢良く、バイクを本来の目的地に向けて走らせた。


 約束の時間の五分前に、集合場所に到着した。誘ってくれた泰牙と同じ高校の執行班である森嶋さん。そして俺が誘って都合のついた悠と真琴がいた。あいつはまだ来ていないのか。


「やぁ蓮。それに崎田さんも。一緒に来たの?」

「あぁ。俺のバイクでな。途中で迎えに行ったんだ。ところで泰牙はまだ来てないのか?」

「まだですね。桐生さんいつもぎりぎりに来ますから」


 俺の返答に答えたのは森嶋さんであった。やれやれといったような顔をしていた。


「わかっていますよ。そういえば小さい頃そんなんでしたから。いつも遅刻のぎりぎりに学校来るんですよ」

「それは今もそうです。困りものですよ」

「って。噂していたら来たみたいですよ」

「いやー。ぎりぎりになっちまった」


 泰牙がこっちのほうに走ってきた。腕時計に目をやると、もう約束の十四時の一分前であった。


「発起人が一番遅くにきてどうすんだ」

「わりぃわりぃ。ところでよぉ」


 泰牙が悠の左隣に立っている真琴のほうを見て、右手を顎に当てて考え込みながら、彼女のほうを見ていた。


「蓮。この人は……」

「あー」


真琴を紹介しようとしたところで、泰牙が口止めしてきた。


「いや待て言うな」


 ならなぜそういうこと聞いたし。まぁいいか。思い出そうとしてるみたいだから黙っておこう。


「あぁそうだ思い出した!柏葉だろ。小四の時に同じクラスになってクラス委員長やってた」

「正解。蓮からあんたのことは聞いてたけど、まさかあんたが執行班になってるなんてね」

「俺だって昔のままじゃあないんだぜ」

「だったら普段から早め早めの行動をお願いしますよ。桐生さん」

「……すいやせん」


 班長さんには頭が上がらないってか。


「なんだかんだ世話好きだったからなぁ柏葉は。いろんなもめごとに仲裁に入ってはあくせく動いてさぁ」

「あぁ。俺は今でも世話を焼かれてるよ。学院同じだからさ。何かといろいろあって・・・」

「おせっかいで悪かったわねぇ・・・」

「あでだだっだだだ!?」

「でがな゛んで、お゛れまでぇ!?」


 俺と泰牙。二人まとめて真琴に頭をぐりぐりされる。そうされる直前まで、彼女から放たれているまがまがしいオーラのような何かに気が付かなかった。


「やっぱり変わっちゃいない。餓鬼の頃のままよこいつら」

「柏葉さん。このくらいにしませんか」

「まぁ・・・。仕方ないかぁ」


 森嶋さんの説得もあって、俺たち二人はすぐに解放された。



 その日は六人で遊んでいた。こうして友人らと羽を伸ばせるのは楽しいことだし、事件も解決して紅葉の疑いのない、笑顔をまたみられるようになったのはまた良いことだ。

 六人でボーリングを楽しんでいた時のことだ。


「森嶋さーん。ナイスストラーイク!」

「楽しいものですねー!」

「ねぇ真琴ちゃん。このチャレンジ成功したら千円キャッシュバックだって!」

「ホントだ。でも結構難しいのよこれ」


 何やらモニターの画面を真琴に見せながら和気あいあいとしていた。


「だからこそ燃えるってものじゃないの。さぁいくよー!」

「崎田さーん。ファイトー」



 隣のレーンでプレイしている女性陣の会話を聞いて、俺はあることを思い出した。


「なぁ泰牙。そういやさぁー」

「んー。なんだー?」


 注文したフライドポテトをつまみながら、あいつは俺の話を聞いていた。


「俺あん時、お前から事件のこと聞かされた日に昼食代って言って、千円貸したんだけど。そういえばまだ返してもらってないんだよなぁ……」

「え? そんなこと……あったっけか?」


 食べるのをやめて、冷や汗かいて明後日の方向に視線を向けていた。そうしているところに、このフレーム二投目を終えた悠が戻ってくると、あいつが逃げるようにしてレーンのほうに向かっていく。


「とぼけるんじゃあない。小四の頃のこと覚えてるお前のことだから、まさか二週間前の約束忘れるなんてことはぁないよなぁ? 泰牙さん?」


 追い打ちの一言をあいつにかけてやる。そう言われたことで、あいつは身体をかたかたと震わせながらこっちを向いて、諦めのついた顔をしていた。


「おまえの分の夕飯奢るんで、それで勘弁してください」

「よかろう」

「ははは……」


「そんなことあったんだ……」

「話がないからてっきり忘れているものと思ってたが。そうか覚えていやがったか」

「おい貴様」


逃がしはせぬぞ。

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