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平穏に暮らしたい俺は、いつしか騒動に巻き込まれる。  作者: 夘月
CHAPTER4 怪しき瞳とココロの鏡
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最善の方法は

 周りを確認するようにして一人の男が学院の裏の通りに止められた車の前に到着した。男は一人の女性を抱えており、それを後部座席に横たわらせる。車のエンジンをかけ、周りに人の目がないことをもう一度確認してからゆっくりと発進させた。

 奇襲とは思ったがまさかここまでうまくいくとはな。学院内で人目をかいくぐりながら移動するのは大変だったがそれ以外は何ともなかった。今のあいつらの顔が見てみたいものだ。悔しがってるに違いない。

 あの時は想定外のことで、大事なこいつをちょいと無駄使いしちまったが、今こうして成功したというならどうってことはない。後は戻るだけだ。そしてこの後のことを考えなければな。ああして嗅ぎまわられてしまった以上はここいらに居続けるのは危険であろう。

 そう考えつつ、男は車を走らせた。

 

 

 男の運転する車は、十五分くらいしてとあるアパートに到着する。車を駐車場に止め、エンジンを切って降りたその瞬間――――


「!?」


 銃声が一発。銃弾は男の足元あたりに当たったようだ。男は驚き、銃声のしたほうを振り向いた。


「お前はあの時あいつと一緒にいた・・・」

「執行班だ!もう諦めろ!!」

「何故ここが!」


 相手はおそらく男。とは言え小柄な奴だ。火器を持っているとはいえ、あれくらいたいしたことはない。これでも俺は高校、大学と格闘技の経験があるんだ。接近できればこちらのものだ。仲間を呼ばれても面倒だしさっさとしなければ。

 銃を向けられていても、打開できるという自信が男にはあった。


「だがお前ひとりでなにができる?」

「いいえ」


 その言葉の後、男の足元が氷漬けになる。固まったことで身動きが取れなくなる。


「何?!」

「二人です」

「森嶋さん! もしかして、森嶋さんも蓮から通信を?」

「突然知らされた時は驚きましたがね。ですが情報通りで助かりました」


 駆けつけてきた女は俺のほうを振り向いて言った。


「さて、追い詰めましたよ成田篤憲さん。すぐにでも増援がこちらに来ます」

「ぐっ……」


 流石に二対一。しかも動きを止められてしまった以上このままではどうしようもない。とはいえこれは氷か。……策を選ぶ余裕もないか。仕方ない。


 成田は一息はいた後、左腕につけられた腕輪を軽くさすった後に乗ってきた車のほうを向いた。


「最後の仕事だ」


 車のほうに左手を向けて力を籠める。その後、車の後部座席が開いて一人の少女が出てくる。


「崎田……さん?」


 内履きのままの、目からハイライトの消えた崎田さんが車から降りてくる。


「先ずはこいつを融かせ。冷たくて仕方ない」

「……」


 無言のまま崎田は男の足元に向かって炎を飛ばして氷を融かす。


「よし。あいつらが邪魔だ。始末しろ」

「はい」


 崎田さんは両手に炎をまとわせると、僕とと森嶋さんのほうを見て一呼吸すると、その方向に向かって一気に走り出す。


「草薙さん! 睡眠弾を!」

「はい!」


 草薙はハンドガンを生成して崎田さんに向かって構える。いつも……なんて言いたくはないが、手のつけようのなくなった袴田さんの暴走(?)を鎮めるために使っているものだ。自分の間合いを保つようにして距離をとり、数発撃ち込む。


「正面からじゃだめだ!」


 崎田の放つ炎によって弾が燃やされ意味をなさなくなってしまう。



 というよりも相手が悪い。崎田さんの実力は、入学してすぐに主任に認められたほど。僕なんかは足元にも及ばない。森嶋さんと組んで二対一だけれども、彼女の能力は氷。炎を使う崎田さんじゃ相性最悪だ。蓮からの報告を聞いた天王寺さん達が来るまでの時間稼ぎになるかすら怪しいかもしれない。


「どうしますか森嶋さん? このままじゃ消耗戦にもなりませんよ。」

「大丈夫です。二人じゃないですから」

「それってどういう……」


 森嶋さんのその言葉の後、向こうに立っていた成田篤憲は突如力を失ったようにして膝から倒れこんだ。それに少し遅れて崎田さんも僕から一メートル離れたところ、向こうの間合いというところで力を失って倒れる。


「え……?」


 突然のことなもんで唖然とするばかりだ。成田が崎田さんを操ろうとして二分と経っていない気がする。右手に睡眠弾入りのハンドガンを握ったまま、その場に立ち尽くしていた。

「残念ながら、三人目の登場だ」

「あれは……」


 成田の近くに立っていたのは、山水高校執行班の桐生であった。存在感が薄いっていうわけではないんだが、いったいいつの間に駆けつけていたのだろうか。


「出るタイミングどうしていいものかずっと悩んでましたよ」

「ご苦労様です。うまく言ってよかったですよ」

「というかその様子ですと……」


 僕は気になって二人に質問した。


「皆さんこうなるってこと知ってるような感じですけど」

「あぁ。それなんだが……」

「とにかく移動してから説明することにしましょう。いまは崎田さんの保護を最優先にしましょう」

「これですべて終わる……」


 と、思っていたのだが――――


「あ、あれ?」


 崎田が我に返るような様子ではない。


「確かに成田は気絶していますが」


「おかしいですね。催眠が切れてもいいはずなんですが……」


 しばらくしてすぅーっと立ち上がったんだが、ふらりふらりとうつむいて一歩二歩と歩き、こちらのほうを向いたかと思えば、まだ表情が生き生きとしていない。そして何をするのかと思えば――

 こちらに向かって、先程同様に突進してきたではないか。


「おいおいおい?! 暴走してんぞおい、どうすんだおい!!」

「まずは距離をとって!」

「慌てずに! 先程同様、傷つけない程度で無力化してください!」


 突然のことでも取り乱すことなく、森嶋が二人に指示を飛ばす。


「「りょ、了解!」」


 返事したのはいいが、桐生はしかめた顔で少し無言になってから本音が漏れる。


「いや傷つけない程度って?!」

「言われたことそのまんまですよ!?」

「俺丸腰なんですけど!?」

「これ貸すから何とかして!」


 どうしようもない事に気づき叫ぶ桐生に対し、草薙は左手に、右手に持っているものと同じものを生成して投げ渡した。


「いやいやいや! 俺こんなもん扱った経験ないんだけど!?」

「ないよりましです。つべこべ言わずに」

「あ、はい」


 その場の勢いというものに任せ言われるがまま、桐生は渡されたハンドガンを構え照準を合わせようとするが、なかなかうまくいかないようだ。


 草薙と桐生が撃っても弾は燃やされ、森嶋が能力で足止めしようにも、ことごとくその氷は融かされていく。三人がかりでも暴走している崎田を止めることが出来ずにいた。


「これじゃあこっちが持たない!」

「誰か応援を呼んでくれますか」

「桐生さんお願いします!」

「りょ、了解!」


 森嶋から指示を受けた桐生が、ハンドガンを崎田のほうに向けながら後方に下がり、通信機の回線を開く。応援を呼ぼうとした時向こうの方、彼のさらに後ろのほうからブレーキ音が響いたのが聞こえた。タイヤのゴムがアスファルトにこすれて響く、耳に突き刺さるような音。

 バイクに乗った男女二人組がいた。二人組がかぶっているヘルメットをとったところでようやく誰なのかがわかった。


「蓮! 邦岡さんも!」

「なんか慌ただしいようだが」

「やばいことになった! 崎田さんが催眠のせいで暴走しちまいやがった!!」

「なんだと?!」


 桐生は向こうのほうを指さす。その先には崎田に対し応戦する、草薙と森嶋がいる。


「三人で何とかやってるが、このままじゃこっちが持たねぇよ! 応援はまだか?」

「それに関して私は分からん。とにかく粘るしかない」

「そんな……」


 黒宮はそのほうを見て、持っていたヘルメットを泰牙に預けると、ゆっくりと崎田のほうに歩いていく。


「泰牙、俺がやる。俺がけりをつけなきゃならない」

「お前……」


「Zzz……」

「お前。この忙しいってときにぃ……」

「中本さん。こうなっちゃうと、この子中々起きないんすよ」

「お前は親か! てか起こせ!」


 コントしてる場合でもない。

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