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平穏に暮らしたい俺は、いつしか騒動に巻き込まれる。  作者: 夘月
CHAPTER4 怪しき瞳とココロの鏡
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気持ちの整理も大事

 その翌日。小松主任と山水の長坂主任は電話による会談を行い、今後の方針について検討していた。崎田紅葉が被害にあったということを考慮し、俺たち兼城学院の執行班は一時調査から降りることになった。しばらく様子を見て戻すかもしれないとは言ったが、全員を一度に戻すのは難しいということと、無論ではあるが被害にあった崎田さんは、当面身を引いてもらうということだそうで。その辺は本人も渋々了承しているようだ。

 ただ、あとは犯人探しのみというのもあって、もしかすれば俺たちが調査に戻る前に事件自体が解決するかもしれない。まぁ勝手なあてつけだからすぐに解決するとは言い切れない。もしかすれば数十日とかかる可能性もある。


 でもって崎田さんの護衛ということで数名、俺と邦岡さんも調査から降りることになった。でもそのあたりを俺は気にしていない。山水の人たちや天王寺さんたちの実力はわかっているから、数人外れても問題はないと邦岡さんも言っていたし、焦る必要はない。

 降りるといっても、あくまでそれは外回りの調査の話だ。資料の整理といった仕事は俺たちの担当に切り替わった。今日は山水のほうから送られてきた資料を、前述の三人で整理していた。

 これまでの報告書、今回の事件の全ての関係者の資料。殆どのものはデータ化されているが、それでもまだ書類のものもあるのでそれを整理、データ化する必要がある。俺にとってはこっちのほうが疲れる気がする。



「にしてもかなりの量ですねこれ」

「向こうの本業はこういった調査になるからな。データに強い人材が多いんだ」

「そうなんすか」


 カタカタと拙い感じでキーボートを打ちながら崎田さんも話に入ってきた。


「まぁ袴田さんや草薙君も、こういうの得意なんだけどね」

「だったらなんでこういう割り振りになったんだか。そういうのをこっちに回すべきな気もするけど」

「どちらかといえば崎田の護衛を第一に考えたってところだろうな。それ故の選出だろう」

「そうすか」


 動かすほうを口から手のほうに変えて、選出の理由を何となく考えてみる。崎田さんは人付き合いもよく、男女分け隔てなく話しているということなので、性別云々を気にすることはないだろう。


 後は護衛ということを考えると男手が必要だからだろうか。それだったら実力の高い天王寺さんなんかが適任な気もするけどなんで俺になったのだろうかとまた考えてみる。


「そういえば黒宮」

「な、なんですか邦岡さん?」

「他の女子生徒が話しているのを聞いただけなんだが、最近帰り道で二人が一緒にいるのをよく見るという話を聞いてな」


 集中しているところにいきなり話しかけられたのと、内容が内容だったのでびっくとなってしまう。


「まぁ学院の生徒には、結構見られることになるからねぇ……」

「まぁそれを最初に言いだしたのは俺なんですけどね」

「意外だな。何というか崎田のほうから言ってきそうな気がするんだがな」

「言われると、なんだかんだ断われなくて……」


「そうか。といってもこのことは主任も知っているようだがな」

「お゛う゛ぅ?!」


 中々出ないような驚きの声が上がってしまう。


「主任もそれを知って黒宮を選出したんじゃなかろうか」

「で、でもこういうのは実力もある天王寺さんのほうが向いている気もしますが・・・」

「いや。あいつはこういうことには向いてないような気がする。何というか相当な真っすぐって感じだな。出された指令をテキパキこなす方が得意だからな」

「大体の指揮統率って、主任以外だと副班長の邦岡さんが執っていますからね」

「そ、そうなんすか」


 うん。あの人も理由があって班長になったんだろう。実力に関してはうちの執行班の中では一番だろうし。あの時の手合わせでも、あの人本気じゃないみたいなことはいろいろ言われてるらしい。ただただ身体能力の高い俺とは違って、武道とか格闘術の知識とか経験があるっていうような話を悠が言っていた。

 実際のところ、天王寺さんに時々ほぼ強制で鍛錬の相手をさせられるときも、そういったことを少しばかり教えてもらうこともある。そのあたりは役立たせてもらっている。


「今日もこの後二人で帰るのか?」

「特に何もなければそのつもりですね」

「そうか。なら早いところ今日の分を終わらせてしまおう。暗くなってしまっては厄介だろう」

「ですね」


 先の話の通り、今日の分のノルマを片付けてから崎田さんを家まで送っていった。何度かこうして送って行っていると、慣れてきた気もする。女子と登下校するっていうのは、妹の希愛や幼馴染の真琴とっていうのは今じゃほぼ毎日のことだが、崎田さんとの場合ってのはなんか違うんだ。言葉にして説明するのが難しくて……。色々話をしながら帰っているんで楽しいんだがな。


 その翌日は、執行班の仕事はなかったのでいち早く帰ることに。話を聞いた真琴と希愛もついていくことになり、四人で帰ることになった。

 あれから山水のほうの外回りの調査組からの報告はなかなかいいものが入ってこない。流石に失敗してからか、向こうも一層警戒しているからだろう。顔のみならず、なおかつ犯行手口を見られてしまったとなれば今までのようにはいかない。相手もそれはわかっている。

 至極当たり前なことなんだが、この件については警察も関わっている。それだけではなく、あれ以降何校かの執行班の協力も仰いでの捜索となっているが、それでもなかなか事が進展しないのだ。

 何かまた策を練ろうかという考えもあちこちで上がっているそうだが、実行に至った試しがないそうだ。



 あっという間に木曜日に。いつものように登校してきた俺は、教室の自分の席に着くと深いため息を一つ。思えば最近事あるごとに、ため息ついてばっかな気がしてくる。


「どうした蓮。忘れ物でもしたか? それとも課題忘れたか?」

「げっ! ってそうじゃない。まぁ課題で疲れたってのもあるが……何かといえば執行班がらみのことだな」


 もちろん俺の身分は学生なので、学業をおろそかにするわけにはいかない。といっても最近はそっちのほうに少しばかりか意識も向くようになった。気持ちの整理がつくようになったからだろうか。


「あぁー、成程。聞けば今山場なんだって?」

「そんなとこだ」

「それと」


 ずいっと将星が俺のほうに顔を近づけてくる。その顔には迫力があり、残っていた眠気もすべて吹き飛ぶほどであった。


「羨ましい野郎だなこいつ。崎田さんと帰り道まで一緒とはよぉー」

「いいじゃんかよ。帰る時でも色々と執行班のこととかで話してるんだよ」


 嘘はついてない。嘘は。


「なんだかんだと話していると時間が経って、じゃあ帰り道に話しながらにでも続きをしよー。みたいな感じになって……だな」

「でも昨日はそんな感じじゃあなかったけど」

「昨日は希愛もいて四人だったからそれどころじゃなかったんだよ」

「あら、そう」

「ともかくこれからってところなんだ。気合い入れねぇと」


  そうだ。あと少しなんだ。でも焦っちゃいけない。それを忘れぬように今日も一日過ごしている。自分のやるべきことをやる。それが今最善なことだ。

「崎田さんと一緒に帰れる希愛ちゃんや黒宮先輩が羨ましいです」

「そ、そうかなぁ。夏鈴ちゃん」

「そうですよぉ。私の家歩いていけるようなほど近くないもん」


 私も混ぜて。(届かぬ願望)

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