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平穏に暮らしたい俺は、いつしか騒動に巻き込まれる。  作者: 夘月
CHAPTER4 怪しき瞳とココロの鏡
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怪奇まみえる陰謀の腕

 事も大きく進み、方針は成田篤憲の調査に変わった。山水のほうでネットワークを通じて資料を洗い、俺たち兼城のほうは外回り。彼の知人などをあたって聞き込みをしている。

 休みを挟んで月曜から調査を再開。今日は俺たち二年の四人で調査に出向き、彼が働いていたというツアー会社に聞き込みに向かい、先程終えたところだ。


 以前からの調査で分かっていることも織り交ぜて、成田篤憲の現状等についてまとめておこう。

 37歳。地元で育ち、大阪の私立大学を卒業後に地元に戻り、本日聞き込みに赴いたツアー会社に就職。同僚らの話によれば、昨年自主的にこの会社を退社し、現在の勤め先について知る者はいなかった。

 就職後に知り合った女性と、一人息子である遥希との三人暮らしであったが二年前に離婚。現在は独身。

 仕事ぶりについてはそつなく真面目であるが、人間関係に関してはあまりいい印象ではなかったという。何かしら誘っても本人のほうから断わられることがほとんどだったということだ。

 

 聞き込みも終わって学院に戻ろうとしたところで、街を一人歩いている泰牙に遭遇。というよりあいつのほうから近づいてきたわけだが。


「おぉ黒宮。奇遇じゃあねぇか」

「桐生君」

「そっちも調査か? にしてはお前ひとりなのか」

「いいや、俺はただの友人との私用だ。それが終わったとこ。それよか黒宮。この間の件なんだが……」

「なんだ? もしかして一昨日のメールか」

「まぁそうだが。もしかして見てないのか?」

「来てるのは知ってたが、疲れててそんな気にならなかった。ちょっと確認するわ」


 メールボックスを開き、一昨日泰牙から送られてきたメールを開く。内容はこの前のやつと大体似ていた。今度はこの人物について調査を求む。の文面と添付ファイル。そのファイルを開くと写真が一枚。今度は女性の写真だ。


「今度はナンパか?」

「安心してくれ……なんていうつもりはないが真面目な話なんだ」

「そうか。えぇと・・・。今度はこの人なんだそうだが・・・さすがに知ってる人いないよな?」

 俺は振り返って、少し離れたところに立っている三人に写真を見せる。皆の反応は実に様々で。

「私の経典には存在せぬ者だ」

「「……」」


 北島さんは知らないようだったが、崎田さんと悠は何故か固まったまま動かない。というか、なんか目が泳いでいた。


「どうしたんだ二人とも」

「ちょ、ちょーっと待ってて黒宮君」

「あ、あぁ」


 崎田さんは隣にいた悠を引っ張って、俺から少し離れる。何があったんだ?



 戻って来るや、崎田さんは泰牙に歩み寄る。

「ところでー桐生君。この写真いったいどうやって」

「あぁー。俺の先輩の紫苑寺さんが念写したものだ。先に言うけどこの件に関与しているという保証はしない」

「一昨日似たような件で頼まれた時、確率半々って言われたんだ。あんときは当たったが、あんましあてにしないほうがいいぜ」

「そ、そぉー。そうだよねー、あはははは……」


 そう話していながら歩いていた時、崎田さんの右手首を何者かが掴んだ。


「ひゃあ?!」


 崎田さんはとっさの判断で右手の周りに炎を生成。それに驚いたのか掴んでいたその腕はびくっと動いて崎田さんから離れる。


「な、なんだあれ?!」

「貫通してるのか?」

「でも向こうには誰もいないよ?」


 その腕は俺たちの横にある建物のガラスから腕だけ伸びている状態であった。ガラスの向こうには人影はない。他のところからなら中の様子がわかる以上、この建物の外壁がマジックミラーということはないだろう。となれば――


「この野郎!」


 俺はひっこめようとしたその腕を握り、能力を発動しながら思い切り引っ張った。すると一人の男が飛び出してきた。

 突然現れた男は驚きながらも、体制を素早く立て直すと一目散に逃げて行った。一瞬しか顔が見えなかったが間違いはない。ポニーテールの女性を狙う連続失踪事件の主犯。


 成田篤憲に、間違いなかった。


「崎田さんを頼む! 泰牙、追うぞ!」

「え? お、おう!」


 悠と北島さんに崎田さんのことを頼み、カバンを放り投げた泰牙とともにあの男を追いかける。




 見失わいように追いかけていって曲がり角を曲がっていったとき、突然俺たちにパンチが飛んできた。二人の男が俺と泰牙に奇襲を仕掛け、足止めするように立ちふさがった。これじゃあ成田を追いかけるどころではない。躱しながら彼らは奴の協力者なのかと余裕もない頭で考えていたが、泰牙が俺に向かって何か叫んでいた。


「おい黒宮! こいつら変だ!」

「んなもん言われなくてもわかる!」

「誰かに操られてんだよ!」


 そう言われてふっとあいつが一瞬指さしたほうに目をやると、おそらく彼らの友人と思しき男女四人グループがこちらを見ていた。急にどうしたんだと言わんばかりの慌てようであった。

 能力によって誰かに操られている。それなら話は早い。俺は再び能力を発動させる。泰牙の予想通りであった。俺に向かっていた男は我に返ったようだ。俺に向かわなくなったのを見てから、泰牙を足止めするもう一人のほうに走っていく。もちろん能力は発動させたままだ。間合いに入ったところでもう一人の男も正気に戻ったようだ。


「大丈夫か?」

「あぁ。いったい何をしてたんだ俺は?」

「俺もだ……」


 二人の男の相手をしていたおかげで成田を見失う結果となってしまった。しかし今は追いかける場合でもない。

 そのまま二人の男を向こうの四人組に引き渡して、さっきの状況について話を聞いてから別れた。


「それにしてもお前何をしたんだ? 一瞬で無力化させるなんてよ」

「俺の能力だ。範囲は狭いがその中でなら一切の能力は意味をなさなくなる。要は無効化だ。それで催眠とやらを切ったんだ」

「成程。すごい能力だな」

「そんな万能なもんでもねぇよ。さっきも言ったが近づかなきゃダメなんだよ」


 ひとまず崎田さんたちのところに戻ろうかと思ったが、先程のあることが気になって落ち着かなかった。


「それにしても泰牙。なんかおかしいと思わねぇか?」

「何がだ?」

「成田篤憲のことだ。あいつはガラスの中に隠れて崎田さんを連れ去ろうとした。それが失敗して逃走するとき、近くにいた通行人を操って俺たちに差し向けた。」

「それがどうした……って確かにおかしい!?」

「そうだ。成田篤憲は二つの能力を持っているってことになるんだ。そんな奴がいるのか?」


 能力は一人に一つ。それが大衆の常識だ。当人の使い方が上手かったり、汎用性のある能力の場合複数あるようにも見えるが、結局は一つの能力にまとまる。


 俺の妹の希愛も能力でいろいろできる。遠くのものを自在に動かす、物を浮かせる、その反対に抑え込む。実に様々だが、これも念動力という一つの能力にまとまる。


 だが今回の例はどうだ。明らかに汎用性で説明できるものではない。


「でもよぉ。近くに成田の共犯者がいてそいつが催眠かけたって可能性はないのか?って言いたいがそれもないんだったな。現にあの六人グループから話は伺ってるわけだし」


 あの後、あの人たちから事情聴取をした。六人で歩いていたところ、前から男が走ってきて二人の男は肩を叩かれ何かぼそぼそといわれたそうだ。そして俺たちが遅れて現れた時、肩を叩かれた二人が突然目の色を変えて走っていった。他に怪しい人は周りにはいなかったそうだ。

 その話を聞けば、この場にはあいつの真っ当な協力者はいなかったということになり、それは先に話した二つの能力のいずれも、成田篤憲が使ったという証明に他ならない。


「なんてこった。さらにややこしいことになりやがったぞ」

「とにかくいったん戻るぞ。崎田さんが心配でならない」



 さっきの場所に戻って悠達と合流。こちらはその後、特に何事も無かったそうだ。俺は先程あった限りを三人に報告。その後はすぐさま学院に戻り、主任に報告した。

 事件の真相がかなり明らかになってきたが、さらに新しい疑問が生まれることにもなった。

「なぁ。ガラスの中入るってどんな感じだろうな」

「知るか。本人に直接聞け」

「いやー、でも気になるんだよなー」

「なら今すぐ物理的に体験させてやろうか?」

「遠慮しときます」


 それどころではない。

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