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平穏に暮らしたい俺は、いつしか騒動に巻き込まれる。  作者: 夘月
CHAPTER4 怪しき瞳とココロの鏡
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信じるのは己か其方か

私たち三人は各自臨戦体制を整える。私は右手に炎の刀を握り、草薙君は拳銃を二丁構える。三人の呼吸が合わさってきたところで邦岡さんの指示が飛ぶ。


「F02! 左右に散開!」


 その言葉で三人同時に前へ走り出し、草薙は左、崎田は右に散開。邦岡が真正面から眼前の女性に向かっていく。向こうは大きく避けるそぶりを見せず、邦岡の攻撃を迎え撃つ構えを見せ、その場から動こうとはしない。そのまま邦岡は一気に相手の目の前まで接近。そのまま近接戦の間合いとなって邦岡から仕掛けていくも、相手にもてあそばれるかのようにひらりひらりと軽い身のこなしと跳躍力で避けられていく。そこから時間差で草薙と崎田が中距離から挟み撃ちをかけるように追撃。それでも攻撃は軽々と避けられていく。


「いったん下がれ!」


 邦岡が後退の指示を出し、三人は女性から距離をとる。


「どうした? これで終わりではないだろう」

「そのつもりだ」


 そう言い放った後、邦岡は草薙と崎田に聞こえる程度の声で打ち合わせする。


「なんて身の動きですかあれ。人間業とも思えない」

「どうします?」


 少し考えこんでから邦岡さんは口を開いてこう言った。


「フォーメーションとポジションはそのまま。但し当てる必要はない」

「わかりました。」

「といいますと?」


 今度は崎田に耳打ちする。草薙は彼女の意図を理解したのか相手に銃を向け牽制しつつ邦岡の指示を待っていた。

 邦岡の説明でようやく崎田は理解したようで、刻々と頷く。


「よし。十秒だ」

「「了解!」」


 その言葉で今度は崎田と草薙が先行。崎田は右手に炎をまとわせると、相手の右側に壁を形成するようにして炎を飛ばす。対して草薙は武器を拳銃からマシンガンに変えて怒涛の連射。相手の左側を狙う。


「おいおいどこを狙っている? やけになったか?」


 彼女らは先程と同様な攻め方をする。しかし今度は明らかに外れている。


「いいや。それでいい!」


邦岡が再び正面から向かう。攻撃の手順を覗けば、この流れは最初とほぼ同じ。ここまでは。


「そう何度も……くっ、しつこい!」


 先程と同じように避けようとするが、今度は両脇を遠距離攻撃によって塞がれている。わざわざそんなところに突っ込むやつなどいないだろう。

 あえて違うところを狙わせた。それこそが狙いだ。


「いや違う?! 彼女ら外しているんじゃない! わざとか!」

「ご名答!」


 動きを制限された彼女に、邦岡の攻撃は着実に少しずつ、届こうかとしていた。

 散開した二人の目的は直接攻撃を当てることではない。そのあとの邦岡の攻撃を当てるためだ。二人がサポートとなり、その攻撃で左右のスペースをつぶし、相手の動きを制限。それから邦岡がメインアタッカーとなって相手に向かう。


「(へぇ。硬く重いこの一撃もそうだが、いい連携をするじゃあないか)」

「だがその程度で縛られるような私じゃあないよ!」


 今度は縦に動きながらすいすいと避けていく。壁際に追い詰められても、邦岡の頭上をひょいっと飛び越えてしまう。距離をとってから振り返って邦岡のほうを向いた。


「さぁ。今度はどうするんだい?」

 


 三人は一度集まると一列になって女性のほうに向かっていく。邦岡を先頭として崎田、草薙と続く。


「なら選手交代だ」


 その掛け声で崎田と邦岡の場所が入れ替わる。前に出ていた邦岡が右足で踏ん張ると、バックステップで最後列まで下がり、崎田が前衛に入る。右手に炎を籠め、刀を生成すると牙突の構えを作って突進。


「今度は紅髪の嬢ちゃんが相手かい」

「手加減無し!」


 女性はその一撃を冷静にかわして見せると、崎田はそれを見越していたのか右手の刀を消し、今度は左手に炎をまとわせると、コンバットナイフほどの大きさの小刀を逆手持ちになるように生成して後ろ向きのまま視線だけ向けるようにして二撃目を当てようとするがそれも避けられる。その後は、崎田はステップで振り返り、左手の炎の小刀で攻め立てる。


「草薙、上を狙え!弾幕を切らすなよ!」

「りょうかーい」


 相手の右側を狙っていた草薙は、今度は上のほうを狙ってマシンガンを放つ。これで崎田との地上での一対一の状況。大きく距離が取れない状況を作り出していた。


「ふっふー。そこだけ筒抜けじゃあないのか!」


崎田の攻撃をかわしながらも、女性のほうは全体を把握しているようで、草薙の作る弾幕に穴があったことを見抜いていたようだ。その穴を縫うようにしてジャンプし、その穴を潜り抜ける。


「そこだ!」


 邦岡さんが地面に手を置き能力を発動させる。相手が崎田の連撃を躱ししながら跳び、邦岡から少し離れたところに着地しようとしたその瞬間――


「何!?」


 地面が突然ぐにゃりと、着地の勢いで深く沈み込む。バランスを崩し、大きくよろめいてしまう。


「いけ!」


 足をとられよろめいたところに崎田が突っ込む。右手の炎の刀を振りかぶり、思い切り振り下ろす。

 相手も何とか回避を間に合わせようとするが結局間に合わず、直撃とまではいかないが食らってしまう。


「ちぃ……」

「まだまだ!」


 相手に猶予を与えず、崎田は連撃でたたみかける。それを遠くから見ていた邦岡であったがなんとも気の済まないような顔をしていた。


「崎田! いったん下がれ」

「え? でも……」

「いいから下がれ!」


 邦岡に言われたとおり、崎田は後方に下がって彼女のところまで戻る。


「やめだ。手を出すな」

「邦岡さん?」

「今は引け」

「……はい」


「どうした? 策が尽きたか?」

「何が狙いだ? 試すとは言ってたが、さっきから避けるばかりで反撃に転じてこない。どう言うつもりだ」

「あらぁ。鋭いのね」

「たいしたものでもない」

「そうだねぇ。私はあくまであんたらを試してみただけだ。まともにやり合うつもりは無い。いいコンビネーションじゃあないかあんたたち。それに手合わせしていてあんたらの気合だけじゃあない。心持ちってものもくみ取れたよ」


 そういった後、コンテナの淵に腰かけていた女性は邦岡に向かって封筒というよりは便箋のようなものを投げる。


「そいつは期待を込めた私からの選別だ。信じるかどうかはあんたら次第だね」

「……」

「それと、この女もだ」


 隅のほうに退避させていたのであろう。渡辺美鈴が降らりふらりと歩いていく。女性が指をパチンと鳴らすと、渡辺美鈴は糸の切れたマリオネットのようにばたりと倒れた。


「それじゃあ。また会える時を楽しみにしてるよ。三人の嬢ちゃんたち。その時があるかはわからないがね」


 そう言い残し、女性はふっと姿を消してしまった。建物内には執行班の三人と渡辺美鈴が取り残された。


「行ってしまったか。できることならもう少し情報を引き出したかったが……」

「そうですね。ってどうしたの草薙君」

「嬢ちゃんって……ぼ……」

「?」

「僕男なんだけどぉぉぉ!」

「あ、あははは……」




「ところで邦岡さん。その中何入ってるんですか?」

「あ? あぁ。そういえばまだ中身を見ていなかったな」


 その封筒をピリピリと破って中身を取り出してみると、二枚の紙切れのようなものが。そのうち一枚は写真のようだ。


「一枚は写真だ。それにしてもこの人物。あの写真の男と同一人物なんじゃないのか?」

「あぁ。言われてみると確かに。ほら草薙君も見て」

「うぅ……」


 勘違いされたことをまだ引きづっているようだ。


「ホントだ。それでもう一枚は何なんですか」

「もう一枚は……どこかの地図かこれは?」

「地図ですか? これ?」


 赤い点が一か所打たれた、線だけで書かれた地図。果たしてこれを地図といってもいいものなのだろうか。そんな出来であった。


「「「……」」」


 信じるかはあんたら次第。なんて言われたが、これはそれ以前の問題なのではないかと三人同じことを思っていた。


「この……これは道じゃなくて川なんだろうか?」

「あぁ。そう見えなくもないな」

「じゃあこれは……」


 その後は時間になったので移動しつつ、この地図のような何かについて推理していた。

 


「今気づいたけど、黒宮君から不在着信が」

「ほんとだ。しかもこの時刻って応援呼ぼうとした前だし」

「慌てすぎるのもよくないということだな」


まずは落ち着きましょう。

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