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草薙悠の談義

 自宅近くのバス停からバスに揺られて三十分程。集合場所の映画館。というよりも事細かく言えば、その映画館の施設が有る、駅近くのショッピングモールの入り口で蓮が来るのを待っていた。

 執行班でいろいろ忙しい時期もあり、今はずっと調査していた組織を無事に取り押さえて一段落着いたところ。こうして自由な時間をゆったりと過ごせるっていうのはいいものだ。

 スマホをいじりながら待っていると、駅舎の方から蓮がやってきた。


「待たせてしまったか?」

「大丈夫、大丈夫。まだ十分余裕はあるから」


何だろう。なんか蓮がやけに吟味するような目で見ている気がするんだけど。


「どうかしたの?」

「あーいや。私服だとイメージ変わるなーって思ってさ」


とうとう頼みの綱である信頼出来そうな男の友人からでさえ、女子っぽく思われてるのではないかと考えてしまう。


「なんか変なこと考えてる?」

「そんなことはないって。まぁ早く行こうか」



 そのビルの七階に映画館はある。受付の機械で持っていた前売券を当日のものにしてから適当に話をしながら待っていた。


「そういえばさぁ。悠はアニメとかそういうのは好きなのか?」

「んー、そこまででもというか。思い切りのめりこむほど……というわけでもないかな。このアニメが気になるっていう感じで見始めたらはまって、小説のほうを読み始めたって感じかな。逆流ってやつなのかな?」

「どっかで聞いたことあるような。でも最近はそういうのって多いんじゃないか。アニメになったのを見てその作品知って、小説のほうに興味が向くって感じで原作読み始めるやつ」

「あぁー。そういうものか」


 僕が言う逆流。ポロロッカとも言うみたいなんだけど、本来あるべき手順とは逆の道筋をたどるってところ。って言葉そのまんまなんだけど。


「袴田さんとか北島さんは、こういうの詳しいと思うよ。特に袴田さんはそう。ネット小説上げてるっていうそうだし、なんか同人誌書いてるっていうような話をこの前崎田さんから聞いた」

「同人誌って薄い本か。そんなことまでしてたのか。あの時作品とか、資料とか言ってたのってそういうことか。物凄い勢いで寄られるもんだからびっくりしたわ……」


「あぁーあったねぇ。ただそれは、蓮がああいうこと言ったからじゃないのかな? いきなり崎田さんに頼み込んで何をするのかと思えば、俺を斬ってくれだなんて言い出すんだから」

「それが他の人が見る分には手っ取り早くわかるかなーっと思ったからで。俺の能力って自分一人だと何にもならないような能力だしさ。他に能力使う人がいて初めて成立するもんだし。あの時は崎田さんと天王寺さんの能力しかわからなかったわけだし……」

「それはそうだけどさ……」


 あの時のことを考えれば、そうしたのもわからなくもない。兼城に来てまだ二日の蓮にすれば、事前に出会い、手合わせしていた二人のことしか知らないのも無理ないか。

 でも斬ってくれなんて、そこまで言う必要はなかったんじゃないかなぁ。右手に炎を出してもらって、それを自分の能力で消す。とかで十分伝わったんじゃないかと僕は思うんだけどなぁ……。



 そう考えていると、話題は袴田さんのことに変わった。


「そういや袴田さんってどんな能力持ってんだ。あの人の能力だけ俺分かんねぇや」

「幻術って言ったらいいのかな。幻覚見せたり、相手の認識を惑わせたり。ある意味ウチじゃ一番恐ろしい能力者だと思うよ。蓮の能力とか、よっぽどのことじゃないとあの人にはまともに太刀打ちできないと思うよ。というか、うん……」


 袴田さんの持つ幻術能力。その実態は恐ろしく、策がなければ成す術なく飲み込まれてしまい、文字通り彼女の手のひらで踊らされるようなものだ。



 この前本人が言ってたんだけど、以前一人で外出中に、男五人くらいに執拗に絡まれたことがあったそうで。その後どうなったんですかって聞いたら、気が付いたら全員泡吹いて倒れていたのーって、あの人紅茶の入ったカップ片手に笑い話にしていたけど。


 敵に回したくない人だなって、その時改めて実感したよ。それを思い出すとさぁ……


「そうか。それにしたってどうしたんだ悠? なんか顔色悪かないか? 辛かったら……」

「あぁ、だいじょぶだいじょぶ。気にしなくていいよ」


 こうして青ざめるしかないのだ。その恐ろしさに。その無自覚さに。そのギャップに。そしてその姿、実態を知っているのが執行班含めたごく一部であることを。




「そうか。最初の逆流あたりからだいぶ話を戻すが、まぁ俺はそういうもんじゃないかな。そん時は妹がラノベ読んでるのなんて珍しいもんだと思って、そういう話題振ったら薦められて読んだら面白くて……って感じだった」

「妹さんに薦められたってことか。そういえば妹さんも兼城に通ってるんだっけ」

「あぁ。というよりは俺が編入先を決めるときに同じとこにしたって感じだがな。色々考えるのも面倒だったから」

「そ、そう。なんかなかったの? 決め手とか?」

「これといってない。さっき言ったとおりだ」


 いや。何かあるでしょ! って聞こうと思ったんだけど、そうしようとする前に蓮が話題を変えてしまった。仕方なくあきらめ、それに乗っかることにした。



「結局さぁ、ならなんか好きなもんとかあるのか? 映画とかか?」

「そうだなー、僕は特撮ヒーローかな。小さい頃からずっと見てたからね。ストーリーの中身がわかる年齢になってから見返してみると、これまた違った楽しみがあってね」

「ヒーローものかぁ。確かに幼稚園とかそのぐらいのころは見ていたと思うんだが。小学校あがったぐらいでぱったりと見なくなったな」

「いやいやもったいない! 今見てみれば改めてその面白さにわかると思うんだ! よかったら今度おすすめを教えるから見てみてよ!」

「お、おう……」


 気づけば草薙は段々と前のめりになって黒宮のほうにずずずいっと顔を寄せては迫真の表情であった。

 あの時と似たようなものを感じていた黒宮は、たじろぐほかなかった。


「と、とりあえず。そろそろ開場になると思うから、特撮ヒーロー談議はまた時間ある時に聞くことにするわ」

「そ、そう。まじですか……」


 そう言われた草薙はスマホを取り出して時刻を確認する。13時17分。会場の三分前だ。


「って。そろそろ開場の時間だね。なら仕方ないか。じゃあ映画が終わった後にでも」

「わ、わかった。とりあえず、飲み物でも買ってこようか」



 売店で買うもの買っていたら、ちょうど開場の時間になった。ドリンクと、ポップコーンの入ったカップをもってスクリーンのほうに向かった。

「あっという間に予定の半分読んじゃいました。やっぱり面白いですね!」

「でしょーう。面白いもの読んでると、あっという間に時間が過ぎちゃうのよぉー」

「そうですねー。ってどうしたんですか? なんかこそばゆそうにして」

「あぁー。なんでもないわー(悠君あたりが噂してるのかしら)」


 感は強い。

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