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邦岡麗奈の休日

 その翌日、私は待ち合わせの為駅に来ていた。予定していた集合時間より三十分も前に到着した私は、そわそわしながら他の人たちが来るのを待っていた。

こうして友人と遊びに出かけるのはいつ以来だろうか。

それから十五分ほどしてから崎田がやってきて、そして今柏葉と黒宮の妹さんが到着して、昨日いた女子の面々は全員揃ったことになる。


「これで全員か」

「ですね。あの後袴田さんと李梨華ちゃんにも連絡してみたんだけど……」

「都合がつかなかったのか」


 彼女らには申し訳ないが、あの二人がかかわると面倒なことになりかねそうなので、もし来た時のことを考えてみると不安しかない。


「李梨華ちゃんは、『余の誘い。光栄であるが、我にはしもべとの重要な任務があるが故、実に惜しいが降臨することはできぬ』って言ってた。まぁ先約があるから来られないってね」

「わざわざそこまで説明する必要はあったのか」


「でもって袴田さんも先約ありだから都合がつかないって。『面白そうだから私も行きたかったわー』って言ってました」

「そうか」


 崎田が二人の声真似を交えながら、袴田と北島が来られないことを説明してくれた。言葉にはしなかったが、結構似ていた。


「ともかく。来れる人は全員来たんですよね」

「うん。さっき来た真琴ちゃんと希愛ちゃんで全員。昨日お茶会した面々」

「そうだね。じゃあ早くいこっか」



 電車で二駅行った後、柏葉に連れられて十五分程歩いた末に着いたのは――――

「着きましたー」

「ここは」

「ほえー」 

「猫、カフェ……」


 ネットでそういうカフェがあるというような情報は見たことはあったが、地元にもあるとは思わなかった。興味はあったがいざその店の前に立ってみると、執行班の任務の時とはまた違う、中々感じないような緊張感がこみあげてくるのだ。


「どうしたんですか。なんか震えてませんか?」

「そそそ、そうか? べべ別にそんなことはわわ……」

「そんなに緊張しなくていいですから―」

「早く入りましょうよー」

「お、押さなくてもいいだろ」


 後輩に背中を押されるがまま、私は憧れにも思っていた猫カフェの中へと入っていくのであった。



「いらっしゃいませー」


 店員さんに案内されて私たち四人は店内に入る。流石に猫カフェ、たくさんの猫が。まぁ当たり前なことなんだが。そう思っていると、さっそく私たちの周りに猫が二、三匹すり寄るように集まってきた。


「おぉー。さっそく集まってる」

「こういうとこの猫、みんな人懐っこいですから」

「柏葉はこういうところに行ったことがあるのか」

「実は一度だけ。紅葉ちゃんと行ったことがあるんです。こことは違うお店ですけど」

「はい! とても楽しかったです。猫とふれあって、撫でてモフモフして……」


 崎田の表情が、だんだんとほころんでにやけていた。


「あふぁ。思い返してみると、心地のいい時間でしたぁ……」

「そ、そうか」

「ひとまずドリンクでも頼みましょうか」

「そうだねー」



  飲み物を頼んでから、皆思い思いに猫と戯れていた。撫でたりおもちゃを使ったりと。

いざこうして連れてきて貰ったのはいいのだが、何故か触ろうとするのを躊躇ってしまう。


「どうしたんですか邦岡さん」

「いや、その。なんか緊張してしまってな」

「そんなにガチガチにならなくてもいいですよー。ほらほら邦岡さん。見てるだけじゃなくてーもっと楽しみましょうよー」

「あーほら。ちょうど一匹膝の上に飛び乗ってきましたよ!」

「そ、そうか。なら……」


 恐る恐る手を伸ばして、私の近くに来た黒猫に触ろうと試みる。最初は頭を軽く。そのあとは下顎を優しくなでてやるとすっかり気に入ったのか私に身をゆだねるように一層すり寄ってくる。内心嬉しくなってもっとなでてやると、みゃあーんっと柔らかい鳴き声を上げた。


「邦岡さん、すごい手馴れてる。こんなに早く手なずけちゃうなんて」

「ある意味催眠みたいだねこれ……」

「そ、そうか。いつもやるときの感じでやっていたんだが」

「ホントは飼ってて、毎日猫を撫でてるとかじゃないんですかー?」

「そんなことはない。昨日も言ったが父がそれを許してくれないんだ」

「それもまたどうしてです」

「猫に限らずだが、父は動物嫌いなもんでな。小さい頃野犬に追いかけ回されたらしく、以来好きになれないと言い張っててな」

「成程ー。そういえば、希愛のおじいちゃんも同じようなこと言ってました。そうなった理由は知らないですけど」

「私の両親は逆ですね。特に犬好きで、自宅でも二匹飼っていますから」

「私はつい最近猫を飼い始めまして、念願叶ったりって感じですね」

「そうか。良かったじゃないか。名前なんかも、もう決まっているのか?」

「いえ。その辺は家族とまだ相談中でして。その他必要なものなんかも揃えている最中で」


 そういう話をされたところで、一つ頼みごとをした。


「そうなのか。もし良かったら……、その、今度触らせて貰ってもいいか?」

「私もー」

「もちろんです! あっそうそう。私の家、昨日の喫茶店からそんなに遠くないですから。声を掛けてもらえれば、案内しますよ」

「そうか。ありがとう」

「ねぇねぇ。私もいいかな真琴姉」

「もちろん。のけ者になんてしないから」

「やったー!」



猫の話で盛り上がっている所で、私は気になっていることがあった。昨日聞かされた話のことだ。


「なぁ柏葉。聞きたいことがあるんだがいいか?」

「はい。なんでしょう?」

「昨日君達が来る前に、あの店のオーナーさんから黒宮についての話を聞かされたんだ。直接彼の名前は出さなかったが、いいタイミングで黒宮がきたから、それで彼のことだとわかったんだ」

「そうなんですか」

「あの人、結構口軽いですからね……」

「幼馴染の立場からして、彼のことをどう思っているんだ?」


私はそんな疑問を彼の幼馴染に投げかけた。


「なんというか、あいつは自分よりも他人のことばっかり優先してるんです。それでよく怪我して怒られてるの、よく見てましたから」

「そーそー」

「最近になってから、そんなことに関わりたくないとか言って、結局首突っ込んで。結論言えば回りくどいの面倒なのなんのですよ」

「そういうもんか。私はそういうふうには見えんのだがな」

「どっかで吹っ切れたんですよ」


「あの模擬戦の前日、崎田から彼と初めて出会った時の話を聞いてな。当時は赤の他人の私であるにもかかわらず、身を呈して守ってくれたと言っていてな」

「お兄ちゃんらしい」

「いい幼馴染を持ったな。柏葉」

「そ、そんなことは……」


彼が執行班になってから。気になっていることがあった。もしかしたら渋々執行班になったのではないかという不安があった。当初崎田が話を持ちかけた時は断られたと言っていたからだ。

だがしかし、そんな心配をする必要は無さそうだ。もし本当に彼がそういうことを毛嫌いしているというのなら、まずそんなことはしないだろうなって、昨日の話もあってそう思ったんだ。




 一時間はあっという間に経ってしまった。あんな楽しい時間を過ごせたのはいい思い出になりそうだ。でもいつかは猫を飼って愛でたいものだ。


その後は近くのショッピングセンターを色々と回りながら過ごしていた。友人との、こんなに充実した休日を過ごすことができたのはとても楽しかった。

「ふぇっくし!」

「どうした、風邪か?」

「いえ、お気になさらず」


天王寺さんからの強制招集。

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