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三回表、二死

 反撃に転じた裏の攻撃。先頭の宇野がショートフライに倒れたが、次の山本がフォアボールで塁に出ると、三番から六番までの連続ヒットで三点を取り返してすぐさま逆転した。


 二回の俺の投球。味方が点を取ってくれたことと、相手が七番からの下位打線ということもあって気楽に投げられた。変化球も試してみたが、まだいいところにはしっかりと決まらない。次の回、今後の試合で調整していきたい。

 ここまで三十一球、力配分も問題なさそうだ。

 尚、うちの打線も相手投手に抑えられ、二回は双方無得点に終わった。


 三回表。そのまま続投となり、俺のこの試合での登板は長くてこの回限りだ。相手打線はちょうど二巡目。出来ることなら三人で抑えたい。一人でも塁に出そうものなら野球部員を相手する可能性が大きくなる。それだけは避けたい。

 しかし焦って集中を乱せばそれだけでピンチになりかねない。とにかく冷静に、着実にアウトを取っていこう。


 一人目、打ち急いだのか初球のチェンジアップを引っかけてピッチャーゴロ。二人目はカウント1-2から五球目のカーブを空振り。まず順調に二人を打ち取った。変化球が効果的に使えているような気がしてくる。

 問題はここだ。同時に勝負の分かれ目になるであろう。再び悠と相まみえる。対戦の前に、俺はキャッチャーの将星を呼んだ。


「わざわざ呼び出してどうした」

「お前もわかってるだろうが、この後は野球部員だ。ここは絶対に抑えたい」

「そりゃもちろん。で、なんか策でもあるのか?」

「いいや。これと言ってない。作戦とか考えるのは俺の性に合わない」

「じゃあ何で呼んだし」

「これまでぼちぼちカーブとチェンジアップ織り交ぜて投げたけど、今はストレート一本でやる。それだけ言っておきたい」

「力押しってことか」

「あいつは目がいい。下手な小細工はむしろ逆効果だと思ってな」

「じゃあそれで」



 打ち合わせを終えて、将星は元居た場所に戻る。俺も一度深呼吸して肩の力を抜いてから悠と対面する。

 初球は外のストレート。バットに当ててファール。二球目、三球目は同じコース。インローに集めたが、二球ともボール。悠はバットを振らなかった。四球目はアウトローを引っかけてファール。追い込んだ。はいいが、そのあと三球ファールで粘られた。


 ここまでの球数は四十四。どのみち悠が、俺にとってこの試合最後の打者になるであろう。ならやることは一つ。次の一球に全力を注ぐ。それだけだ。この一球で決めよう。


 腕を軽く回してから再び深呼吸。息を整え、将星の構えるミットに視線を向ける。要求してきたコースはインハイ。モーションを起こして、第一球と同じくらいの力で白球を投じた。


 悠のバットに当たり、バットの金属音を響かせながら高めの放物線を描いて打ち上げられた白球は――――


 掲げた俺のグローブの中に吸い込まれるようにきれいに収まった。ピッチャーフライ。

 審判のアウトコールが宣言された時、俺は叫びとともにガッツポーズ。



「おっしゃあぁ!」


 マウンドに集まってきたクラスメイトとともにベンチへと戻った。


「お疲れ!」

「やったな!」

「よくやった黒宮!」


 打ち取った喜びを皆で分かち合った。非常に壮快だ。



「おっしゃあ! ガンガン攻めていこう!」

「「「おぉー!!」」」


 意気投合し、結束を深めていく。



 その裏はうちのチームは無得点。四回以降の俺は、ファーストに入っていた須田とポジションを入れ替わる形でそのまま出場した。


 四回の相手の攻撃。バッターが連続で野球部であったが、先頭は飛距離が足りずにレフトフライ。二人目はフォアボールで出塁。後続二人がヒットで続いて一点を返された。これで3対2。


 その裏、うちのクラスは三番橋場からの好打順。三連打であっという間に一点取った。その後将星の打順。

 一二塁間を抜けるかと思われるいい当たりだと思われたが、悠のファインプレーに阻まれた。やれやれだ。

 その次に入っていた三田から再び三連打で二点を加えた。これで6対2。


「おい。俺の扱いなんだ」

「仕方ないだろ。他に話すことないし」

「馬鹿にしてんだろ」

「そんなことはない」

「こいつ……」


 五回。実質の最終回。ウチの投手は控えにいた新田が登板し、打者五人に対し一失点で抑え、6対3で逃げ切った。 




「勝ててよかったなー」

「あぁ、この勢いで次も勝とう」


 試合を終え、ペットボトルのお茶を飲みながら将星と話をしていた。


「あれだけのピッチングができるなら優勝できるかもなー」

「どうだろうな。あと次の試合は俺投げねぇし」

「そうだったな。まぁ次が高木なら安心だな」

「そうだな」

「腕の具合はどうだ?」


 軽く右腕を回して感覚を確認する。特に問題は無さそうだ。


「まだ大丈夫だ。でも次投げるときはちょいと力を抑えておくよ」



 そのあと、他のクラスにはこういうやつがいる。といった話題で話をした。将星が何か思い出したようにこう切り出した。


「そういやさぁ、決勝戦まで終わった後に、野球部員相手にエキシビションマッチがあるみたいだぜ」

「そうなのか?」

「あぁ、代表者は試合の内容で決まるそうだ。もしかしたらお前選ばれるかもな」


「なんか面白そうだけど……勝負になるのか?」

「一応ハンデはあるみたいだけどな」

「そう言われてもねぇ……」

「まぁ面白そうだしいいじゃねぇか。俺も選ばれるように頑張ろう!」

「気合十分だな」

「当たり前だ。出るだけでも注目集まるからな」

「……」


「どうした。そんなジトーッとした目で見てよぉ」

「何となくだがお前の下心が分かったよ」

「うっせぇ。崎田さんにちやほやされるお前が羨ましいんだよこの野郎。男なら誰もが一度は思うのだよ。女の子の前でかっこいいとこ見せたいんだよ」

「本心丸出しじゃねぇか」

「そうだよ」


 そんな将星の心持に、俺は溜息しか出なかった。クラスメイトの考えてることって皆同じということか。これ以上敵を作りたくはない。そう考えてると、悠がこちらを見つけて近づいてきた。



「今回は僕の負けだね」

「俺と悠の対戦だったら五分五分だろ」

「そうかもしれないけど、試合は負けた。でもリベンジする機会はある」

「まぁ決勝で当たる可能性はあるか。そんときにまた投げるかはわかんねぇけど」

「そうだね。そうなるように祈っておくよ」

「おい。そろそろ次の試合始まるぞ。見に行こうぜ」

「そうだな。悠も一緒に行こうか」

「もちろん」



 その後俺のクラスは予選のリーグ戦を全勝で勝ち上がり、勢いそのままに決勝戦まで進んだ。

「崎田さんにチヤホヤされてぇ」

「いきなりどうしたよ将星」

「お前には言われたかねぇ」


リア充は敵だそうです。


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