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憧れと陰謀

 ひとまず女子生徒から話を聞くことにした。同じ女子のほうが彼女も話しやすいだろうという崎田さんの計らいによって、崎田さんと北島さんが女子生徒から事情をうかがう。


 俺と悠は、そこから少し離れて入り口で見張りをする。多分逃げたりすることはないだろうけど、一応ってことだそうだ。



「まずはクラスと名前を聞こうか」

「一年六組……南原夏鈴です……」

「南原さん。単刀直入に聞きますが、どうしてこんなことを?」

「……」


 言葉を選ぼうと悩んでいるのか、南原は黙り込んでしまう。

 彼女にも立場はある。言葉が出ないのか口封じされているのかはわからないが、無理やり聞き出そうとするのはあまりよくないだろう。そう考えていると、南原は口を開いた。


「一言、よろしいですか?」

「構いませんよ」


 崎田さんがにこやかに了承したのを彼女が確認すると、ごくりと唾を飲み込んでから意を決して口を開いた次の瞬間――――


「も……」



「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!」



 テーブルに両手と額をつけて室内いっぱいに響くような大声での謝罪。執行班の皆が驚いた。



「初めは憧れからだったんです! あの日廊下を二人で歩いている崎田さんを見て気になってついて行ったんです! そしたらあんな光景に巡り合うなんて思いもしなかったんです! これはと思ってつい持っていたカメラでその瞬間を撮ってしまったんです。それで……」


「「……」」「「……」」


 その突然のことに、話を聞いていた崎田さんも北島さんも思考が停止してしまう。何かシャットアウトされたというか、自分の身体に思いっきり大量の水をぶっかけられたような、立ってもいられないような強風が吹きつけてくるようなそんな感覚であった。


 とにかく目的を見失ってはいけない。崎田さんは気を取り直して両手で頬を叩くと、悠のほうを向いてこう叫んだ。

「草薙君! お茶の用意お願い!」

「あ。う、うん……」



 それが落ち着くための唯一の手段かもしれない。





「取り乱してすみませんでした……」

「大丈夫大丈夫。ささ、紅茶でも飲んで落ち着いて。」

「あ、ありがとうございます」


 南原さんは出された紅茶を一口。おかげか少し、冷静になったようだ。


「さてと、では改めて其方の話を聞こうではないか」


 北島さんの一声で、左手に持っていたティーカップを置くと、南原は話を始めた。


「はい。事の発端は入学式の日のことです。入学式が終わった後、私は崎田さんを間近で一目見たいと思って二年の教室に向かいました」

「ほうほう」

「そこで私はお目当ての崎田さんと、後ろをついていくように歩く一人の男子生徒、黒宮さんを発見しました。なんだろうと思ってこっそりついて行ったら、辿り着いたのは屋上でした」

「あー。あそこにいたんだ、やっぱり……」



 こくりと頷くと、一呼吸おいて話をつづけた。



「あの新聞には詳細こそ書いてませんが、私はあの場で何を話していたのかを知っています」

「写真を撮ったって言ってたくらいだから、話が聞こえていてもおかしくはないか」


「本題はここからです。適当に近くに隠れて、二人が立ち去ったのを確認してから帰ろうとした私は、一人の女子生徒に呼び止められました。その生徒はあの状況をすべて理解していたような口ぶりで私に話しかけてきました。いや彼女はすべてわかっていたんです、あの人は私が何をしていたのかを。それで私にある交渉を持ち掛けてきました。スクープを狙うのにひとつ、協力してくれないかと」


「それが、あの写真の真相というわけか」

「で、今日もその女子生徒にそそのかされてこうして探っていたというわけね。手に持っていたの、おそらく盗聴器でしょ?」


「まさしくその通りです」

「と、盗聴器……」



 今どきの高校生ってこんなの持ってるもんなのか?まぁ、このこと考えるのはまた別の機会でもいいだろう。


「それで南原さん。あなたにこの依頼をした生徒、何か思い出せることはないか?」

「あの生徒ですか? ネクタイの色は緑色だったと思うので、崎田さんと同じ二年ですかね。後は、青髪の……」

「「「あぁー……。やっぱり」」」


 俺以外の三人は、南原が話した人物に想定が付いているようであった。



「ここにきてすぐの俺にはよくわからんが…。悠たちには思いあたりがあるってことか」

「うん。というかもう彼女だろうなっていう確信は朝からあった」

「そういう事はもっと早く言ってくれよ……」


「ごめんごめん。朝とか昼休みは慌ただしくなって、そこまで考えが回らなくて」

「犯人に目星がついていても、考えたいことがあるの」

「考えたいこと?」

「話を聞き出そうにも、彼女警戒心が人一倍に鋭いから中々捕まえられないんだ」

「おまけにすばしっこいと来たもんだから、大変でね…」


 まるでネズミかキツネじゃねぇか。



「まぁだがしかし。今この場には四人いる。ごり押しでもなんでも構わない。捕まえて洗いざらい聞き出してやるさ。これ以上裏で何かやられるのは困る。早いうちに釘刺しておきたい」

「どうだろ。釘を刺すって言っても……。実は半年くらい前かな。今回みたく校内新聞の一件で袴田さんにしょっぴかれてね。その、なんというか……」


「ど、どうかしたのか?」

「いや。草薙君は知っているとはいえ、この場でこの話をしていいものなのか……」

「気にするくらいだったら、別に無理にいう必要はない」

「そ、そう……」


「とにかく一言でいうなら、彼女は質が悪いってこと」

「なんだっていい。ともかく、彼女を捕まえよう」

「まぁ。そのつもりだけどね」

「協力するよ、蓮」

「今こそ結託するとき!」


「あ、あの!」



 四人で意気投合していると南原さんが輪の中に入ってくる。


「わ、私もついて行ってもいいでしょうか!」

「それは……どうする、崎田さん?」

「もちろん。協力してくれるってなら大歓迎!」

「あ、ありがとうございます!! 私、頑張ります!」

「頼りにしてるよー」

「人がいるのはいいが、考えもなしに動いてもあれだろ」

「蓮の言うとおりだ。無計画で動いてもあれだよ。あまり時間はないけど、作戦を練る必要がある」

「そうだね。せめて役割分担くらいはしようか」




 ひとまず五人で緊急の作戦会議を始めた。

「なぁ悠。過去に何があったんだ?」

「袴田さんのことだ。根掘り葉掘り聞かないほうが身のためだと思うよ」

「そう」


 深入りは時に禁物。

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