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模倣の策

 放課後、今度は特別会議室で崎田さんと先程の話の続きをしていた。今度は悠と北島さんも一緒だ。

 学院内でこれだけの騒動になっているのだから、事態については二人ともある程度は理解しているだろう。簡単に事情と自論を話してから二人に問いかける。



「二人の意見も聞きたい。主犯について」

「記事を書いた人の想像はつくけど、写真のほうはなんとも」

「闇からの使いの仕業としか言いようがないな。ふっふっふ……」

「それわかってないって言ってるもんだよね?」

「こ、これは仮定だ。今考えをまとめている」



 明らかに動揺してる。口が震えてるのを見ればすぐに分かる。


「とにかく。二人はどうするつもりで?」

「もちろん新聞部をあたるつもりだ。記事書いた人間と写真撮った人間が誰かなんてわからないが、関係があるとみるのが妥当だ」

「まぁそうだね」


「一つ聞きたいが、どうしてここまでの騒ぎになったんだ? 今はだいぶ落ち着いているみたいだが」

「君達は神に見せられし者。いうなれば特別な存在なのだよ!」

「と、特別……」



 北島さんの言い方があんな感じとはいえ、そういう風に思われるのも何らおかしくないような気もしてきた。

 俺と崎田さんの学院内での立場というか他者からの見られ方は、どちらも特異なものであるからだ。



「蓮は今、特に注目されているのは事実。そして崎田さんは学院内でも知らぬものはいないと謳われる程の超有名人だ」

「ゆ、有名人だなんて…」


「彼女は入学してすぐ、五月の終わりぐらいには執行班に入ったんだ。これは異例の速さでね。実力もあって、何よりその子は可憐で人当りもいいって学院内はその話題で持ち切りだったよ」

「今思い返すと…、なんか恥ずかしい…」


「執行班に入ってしばらくしてから、崎田さんの存在は学院外でも話題になったよ。今年の新入生にも、彼女にあこがれてここに進学した人も少なからず多いみたいだよ」

「へぇー」


「そんな学院の注目を集める二人が急接近。そりゃあ大騒ぎだ」

「まぁあの時の流れからして、あの出来事は執行班のことだろうっていうのは、ほとんどの生徒が理解したみたいだからね。でもどうしてこうなったんだっていう新しい疑問は生まれたんだけどね」


「ともかく騒動の理由はわかった。本題に話を戻す」

「そうだね。この事態は二人にとっても放っては置けないことだからね」

「そうだよー。まったくもう…」



 あれこれ話していると、悠が何か考えているのに気がついた。



「どうした、悠?」

「二人の知らない間にこんなに鮮明な写真をとる方法について考えていてね。二つほど候補がある」

「候補か、聞かせてくれ」


「まず一つ目は念写。近づく必要はないから特定される可能性は低い。そしてもう一つは、気配なり姿を消して近づく方法だ」

「後者の場合、黒宮君に対してだとリスクは大きくない?」


「そうやって近づいてくるとわかっていないってなるなら、それも可能やもしれない」

「やはり闇より現れし暗殺者というわけか」

「殺しには来てないと思うが?」


 今探してるのは盗撮犯であって、暗殺者じゃない。


「まさかとは思うんだが、今この話も聞かれたりなんてことはないのか?」

「ない。と思いたいんだけどなぁ……」

「他には誰も入ってきてないと思うけど。黒宮君と一緒に入ったときも、すぐにドアは閉めたはずだから」

「まぁでも、扉越しでも聞こえないこともなさそうだけどね」


「でもどうやってそんな大胆なことを?隠れる場所なんてないと思うけど? 廊下にしたってここ突き当りでしょ」

「犯人にはこれくらい造作もないことよ!そうでなければ悪魔の契約など結べやしない!」

「何のことだ…」


 もう北島さんの思考がまるで解らない。ちゃんと考えてくれていると……思いたい。



「気配消して盗聴してって……。複数犯なの?」

「さぁ。確証ないから何とも言えないかな……」

「いや、その可能性もゼロじゃないかもしれない」

「俺も同感だ」


「例えばこうはどうだろうか。一人は他者から気づかれないようにする。もう一人が何かしらの方法でこちらを探る。といった具合だ。写真を撮る、盗聴をするといった行為なら、能力を使う必要は絶対ではない」


「草薙君の考えだと、手分けして一人が存在を悟られないようにし、もう一人がこちらの情報を掴んだ。ということになるのね」

「だが、最初に悠が提唱した念写という可能性は捨てきれない。てかその考えだと複数犯でなければならない理由がなくなるような…」

「あっ。そっか……」



「というか犯人の候補、思いあたりはあるんだけどね……」

「まじかよ。だったら教えてくれても……」



「どうしたの、黒宮君?」

「汝の右手がとうとう、うずめきだしたか?」


「そんなんじゃない。俺の気のせいかもしれんが、違和感がしてな」

「違和感? どこか具合でも悪いの?」

「違う。他の誰かに見られているような、そんな感じがしてな」


「いやいやまさかぁー」

「トイレついででちょっと出てくる」


 一旦会議室から出ることに。



「どう思う?」

「さぁ? 僕には何とも言えないけど」

「まさかあの男、邪眼の持ち主だというのか」

「おそらく違うと思う」

「とにかく。蓮が戻ったら、四人で新聞部をあたろう」

「うん、賛成

「異議なし」


 三分程して黒宮が戻ってきた。


「お帰り。今からなんだけど新聞部を……」


 崎田が言い切る前に黒宮が返答する。


「もちろんそのつもりだ。だがその前に」



 黒宮は草薙のほうに近寄って耳打ちする。


「蓮、どうしたの急に?」

「いいからいいから」

「……よくわからないけど、わかった」


 その後、黒宮と草薙は廊下へと消えていった。


「どうしたんだろ、黒宮君?」

「さぁ?」


 二人には、彼の意図はわからなかった。



「これでいいの?」


 入り口から数メートル先、廊下の分岐手前で確認をとる悠に対して、問題ない。という合図を頷いて送る。悠も頷き返したのを確認してから能力を発動。すると――――――


「!?」


 俺と悠の間、壁に張り付いて何か機械を手にしている女子生徒が現れた。こちらにはまだ気づいていない様子であった。



「そこの女子生徒」

「……!?」


 俺が話しかけたところで、ようやく今の状況に気づいたようであった。探るのに夢中になっていたか、あるいは見つからないと思っていたのであろう。女子生徒は驚きを隠せずにいた。



「わかってると思うが執行班だ。無理な抵抗はせずにご同行願いたい」

「嘘、どうして!? だって私……」

「姿を消していたから察知されない。とでも考えていたんだろう。悪いが俺には分かる」

「あ、え、うぅぅ……」


 女子生徒は悶えてしまい、うずくまってしまった。逃げ出すような様子はなかった。


「もちろん手荒い真似はしないから。そこで話を聞かせて欲しいな」

「は、はいぃぃ……」

「これから君のことを真実の語りべ(トゥルーファクター)と呼ばせてもらおう!」

「丁重にお断りします」

「くっ。このリリーシェのご加護を拒むというか!」

「(もう理解しようとするのやめようかな……)」


 本人は、至って真面目です。

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